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「2020年の大統領選ではトランプ氏が再選する」米専門家が続々予測 

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
多くの米専門家がトランプ氏が再選すると予測している。(写真:ロイター/アフロ)

 「トランプは2020年再選する」

 2016年の大統領選でのトランプ勝利はもちろん、1984年以降9回行われた大統領選の勝者をすべて当ててきたことで知られるアメリカン大学の歴史学者アラン・リットマン教授が、CNNでそう予測した。

 リットマン教授はこう指摘する。

「トランプ再選を唯一食い止めることができるのは、民主党による弾劾。民主党がしっかりして憲法上の義務を遂行し、弾劾の審議を始めなければ、2020年はトランプが勝つでしょう。弾劾の審議を始めるのは政治的に正しいことです。弾劾は民主党にとって裏目に出るという考え方がありますが、それは間違っています。ジョージ・W・ブッシュ氏が大勝利した例があるからです。ブッシュ氏の勝利は、ビル・クリントン氏の弾劾を追及した共和党が切り開いたのです」

 リットマン教授は13のファクターから次期大統領を予測しているが、多くのファクターでトランプ氏が有利な状況だという。

「トランプ氏は13のファクター中6のファクターで不利にならない限り、2020年は勝つでしょう。現在、大統領が不利となっているファクターは、2018年の中間選挙での敗北、外交政策の不成功、有権者へのわずかなアピールの3つだけです」

トランプ氏が大差で勝つ

 大統領選勝敗の決定要因は主に経済状況だと言われているが、現在の経済状況はトランプ氏に追い風になっている。

 2016年のトランプ勝利を予測した、トレンド・マクロリティクス社のドナルド・ラスキン氏は、政治ニュースサイト・ポリティコのインタビューで、

「経済が今は非常に強い。また、これまでの大統領選を振り返っても、現職大統領が2期目も再選されている。民主党がどう対抗するのかわからない」

と話している。

 格付け会社ムーディーズの分析チーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は国全体の経済状況を見る12の経済モデルをベースに選挙予測を行っているが、どのモデルにおいても、トランプ氏が勝つと指摘。

「今選挙が行われたら、どのモデルでもトランプが勝ちます。しかも、非常にたやすく」

 政治予測の専門家として知られるイェール大学の レイ・フェア教授も、トランプ氏が大差で勝つと言う。

「素晴らしい経済状況ではなく、選挙まで続くと考えられているまあまあの経済状況であったとしても、トランプが大差をつけて勝つでしょう」

 フェア教授は、大統領再選の決定要因をGDPやインフレ率という経済指標や現職の大統領であることに見出し、これらを考慮に入れた選挙予測モデルをベースに得票率を予測している。

 実際、フェア教授は自身の選挙予測モデルに従い、的確な予測をしてきた。2008年、同氏は、オバマ氏が一般投票では53.1%得票すると予測。実際、オバマ氏が得票したのは53.7%と彼の予測に近かった。また、2012年の選挙では、オバマ氏は51.8%得票すると予測したが、実際は52%とわずか0.2%の差があっただけだった。

 しかし、2016年の選挙では、ギャップが生じた。フェア教授はトランプ氏が54.1%得票すると予測したが、実際は48.8%得票したに留まった。

人格が考慮されると…

 5%以上のギャップはなぜ生じたのか?

 オバマ政権時代、自動車再建タスクフォース首席顧問を務めたスティーヴン・ラトナー氏は、ニューヨーク・タイムズ紙で、トランプ氏の人間的資質が好ましくないと考えられたからだと指摘。フェア教授の選挙予測モデルは様々な経済指標がベースになっており、人格というファクターを考慮に入れていない。しかし、有権者にとっては人格は大統領を選ぶに当たって非常に重要なファクターだ。有権者がトランプ氏の人格を考慮に入れたため、フェア教授の予測よりもトランプ氏の実際の得票率が低かったというのである。

 フェア教授の選挙予測モデルでは、2020年の選挙ではトランプ氏が56.1%得票すると予想されているものの、前回同様、有権者がトランプ氏の人格を考慮に入れた場合、得票率が下がることは必至だろう。

 では、どれくらいの得票率になるのか?

 フェア教授はトランプ氏の気質が得票率を引き下げたとしても、トランプ氏が勝つと結論づけており、トランプ氏は約54%得票し、対する民主党候補は45.4%しか得票しないと予想している。

 この54%という数字は、CNNの最新世論調査結果と呼応する。

 この調査によると、米国民の54%がトランプ氏が再選すると予測し、41%が負けると予測している。比較上、2011年5月時点の調査では、米国民の50%がオバマ氏が再選すると予測していた。つまり、トランプ氏の方がオバマ氏の時以上に再選する確率が高いと考えられているのだ。

 もっとも、選挙までは1年以上ある。来年秋までに、経済成長率が激減したり、失業率が激増したりしたら、状況は変わってくるかもしれない。

フェア教授の選挙予測モデルではトランプ氏が約56%得票、人格を考慮に入れても約54%得票すると予測されている。一方、世論調査結果ではバイデン氏の方が約8%リードしている。出典:The New York Times
フェア教授の選挙予測モデルではトランプ氏が約56%得票、人格を考慮に入れても約54%得票すると予測されている。一方、世論調査結果ではバイデン氏の方が約8%リードしている。出典:The New York Times

 また、現時点で選挙が行われたら、トランプ氏は民主党候補に負けるという世論調査結果もある。様々な世論調査結果を平均すると、トランプ氏は民主党大統領候補の中では最も有力なジョーン・バイデン候補に約8%リードを許している。

 人格という問題が指摘されているトランプ氏であるが、好況な経済状況と現職大統領の強みで、逃げ切り勝ちすることができるのか?

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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