プロ野球オープン戦開幕。「キャンプ銀座」で行われた伝統の一戦は巨人が制す
プロ野球・オープン戦が開幕した。キャンプが行われている各地では、すでに「練習試合」が行われており、現場サイドでは練習試合であろうが、オープン戦であろうが、公式戦開幕に向けた準備のための実戦にすぎないのだろうが、有料の観客を入れて実施するオープン戦は、エンタテイメント性を持たせるためのイベントもあり、はやり練習試合よりも華やいだ雰囲気があふれている。それが「伝統の一戦」、巨人阪神戦ならなおさらだ。
「日本一」効果もあり、とかく阪神のキャンプ地、宜野座の賑わいがメディアで取り上げられているが、沖縄最大の「ハコ」である県都・那覇の沖縄セルラースタジアムでキャンプを張るのは、やはり巨人。オープン戦開幕が、永遠のライバル・阪神ということもあって、球場のある奥武山公園周辺は、試合開始前から野球ファンでごった返していた。
「前哨戦」は巨人に軍配
巨人・阪神の両チームは、東京ドームの開幕戦で相まみえる。その意味では開幕戦の前哨戦と言えるこの試合だったが、阪神がスタメンをほぼレギュラーメンバーで固めてきたのに対し、巨人は坂本、丸といったベテランのレギュラー勢が顔を出さず、オープン戦とは言え、阪神・岡田監督としては、「日本一」チームとして、負けられない試合となった。
しかし、阪神は先発に送った昨シーズン10勝の伊藤将が大乱調。味方が無得点に終わった1回の裏、いきなり巨人打線の猛攻を受けた。打者一順どころか13人、この日3番サードに入った門脇まで続く猛攻で巨人は7安打で7得点をあげた。伊藤にしてみれば、4番岡本に先制タイムリーを打たれた後の1アウト一、二塁の場面で、続く吉川をセカンドに打ち取りゲッツーでピンチを切り抜けたと思ったところで中野のエラーが出たり、さらに打者一巡後の一、二塁の場面での2番オコエのおあつらえむけのサードゴロでベースを踏んだ佐藤輝がその後のファーストへの送球をそらしたりなど、相変わらず課題を見せた内野守備に足を引っ張られた部分もあった。
一方の巨人は、先発にエース、戸郷を立てたが、1イニング無失点で降板。2回からは赤星をマウンドに送ったが、これがピリッとせず、2回に1失点、3回には佐藤輝に右中間外野芝生席の奥にある防球ネットに突き刺さる2ランを浴び、2回3失点と阪神に追撃ムードを与えてしまった。
さらに巨人は3失策と、阪神以上に守備面でのほころびが目立った。その中で、レギュラーがほぼ確約されたベテラン坂本の「代役」としてサードでスタメン出場した湯浅が、4回に三遊間に抜けようかというゴロを候補するなど、開幕一軍に向けて早速アピールしていた、
試合は中盤以降落ち着いたが、阪神が7回に湯浅をマウンドに送ると、巨人打線が再び火を噴いた。この日2番指名打者でスタメン出場したオコエのヒットなどでたちまちのうちにノーアウト満塁とすると、1アウトの後、途中から出場の中田のセンター前ヒットで2点を追加し、試合を決定づけた。このピッチングには岡田監督もおかんむりで、試合後、湯浅のファームでの調整が明言された。
それでも、阪神は、8回にミエセスの左中間フェンスをぎりぎり越えるオープン戦1号ソロホームランで一矢報いたが、及ばず。11安打で9点を奪った巨人が、7安打4点の阪神を下し、開幕戦の前哨戦を制した。
チームを問わず「うちなんちゅ」に送られるエール
沖縄でのキャンプ中の練習試合、オープン戦の風物詩といえば、地元・沖縄出身の選手に送られる盛大な拍手だ。「内地」とは違う歴史を歩んできた沖縄の人々のアイデンティティは強い。そのアイデンティティの強さは、どの学校出場しようとも県代表校を応援するため甲子園に馳せ参じる野球ファンや、甲子園には行けずとも、高校野球中継をテレビで観るため有給休暇を取るサラリーマンの姿にも現れる。
そういうお国柄のため、県出身のプロ野球選手に対する思いには特別なものがある。その知識がなくとも、スタンドにいれば、その拍手の多さから県出身の選手がわかるほどだ。
この日も、当然のようにスタメンに名を連ねた巨人の正捕手、大城がセンター前タイムリーを放つと、巨人ファン、阪神ファン問わず、スタンドからは大きな歓声が沸いていた。
この3連休、島内各地でオープン戦、練習試合が催される。そして来週には各球団、次々とキャンプを打ち上げる。「島野球」が終わると、いよいよオープン戦が本格化する。
(写真は筆者撮影)