電気の力で塩味と旨味を引き出す? 前代未聞の「減塩ラーメン」は美味しいのか?
ラーメン一杯に含まれる塩分は多い
一般的にラーメンは、料理の中でも塩分含有量が多い料理として知られている。もちろんラーメンの種類によってその塩分含有量は異なるが、平均するとラーメンの塩分はおよそ7g程度と言われている。
厚生労働省における「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によれば、食塩摂取量の「一日あたり」の目標量は成人男性が7.5g未満、女性が6.5g未満。高血圧で治療している人や人工透析患者の目安は一日6g未満、腎臓病患者の目安は一日3~6g未満となっている。
つまり、ラーメン一杯には一日で摂って良い塩分の大半をクリアしてしまうだけの塩分が含まれている。ラーメンを食べる場合、スープなどを飲み干すケースも多いので、これはかなり高い数字だと考えて良いだろう。
塩分の摂り過ぎは高血圧症や腎臓病、動脈硬化に脳血管障害など、様々な病気を引き起こす可能性がある。また高血圧や慢性腎臓病の症状がある人や人工透析などを受けている人は、摂取する塩分量をコントロールする必要があるが、なかなか外食で塩分をコントロールすることは難しい。ましてや塩分の高いラーメンとなればなおのことだ。
『キリン』と『一風堂』が「減塩ラーメン」を共同開発
塩分はラーメンにとって不可欠な要素だが、果たして塩分が少なくて美味しいラーメンを作ることは可能なのか。塩分を気にする人たちでも美味しく食べられるラーメンは実現するのか。この課題に共同で取り組んだ二つの会社がある。『キリンホールディングス(キリン)』と『力の源カンパニー(力の源)』だ。
キリンはビールや清涼飲料水をはじめ、医薬やバイオケミカル事業も手掛ける企業。力の源はラーメン店『博多一風堂』を世界に展開する企業。異なるジャンルの2社がお互いのノウハウを結集して作り上げたのが、減塩ラーメン「減塩白丸元味」だ。
キリンは塩分の取り過ぎという社会課題と、消費者の減塩食の味に対するニーズに向き合うために食器型デバイス「エレキソルト スプーン」を開発。一風堂もこれまでにプラントベースやグルテンフリーなど、様々なニーズに応えるラーメンを提供してきた。
減塩ラーメン「減塩白丸元味」は、一風堂のラーメン「白丸元味」より塩分を30%減らしたラーメンを力の源が開発し、そのラーメンをキリンの「エレキソルト スプーン」を使って喫食することで、減らした塩分や旨味を電気の力で増強する仕組みになっている。
減塩とは思えない味わいのラーメンに
まず通常のレンゲでスープを啜ってみると、確かに普段のラーメンと比べると塩分に弱さは覚えるものの、バランスが取れた美味しい豚骨スープという印象。次に「エレキソルト スプーン」を使ってスープを飲むと、明らかにレンゲで飲んだ時よりも塩味や旨味が強く感じられた。知らなければ減塩しているとは思えない味わいになったのだ。
ここで使われている技術は「電気味覚」の仕組みを応用したもの。主に医療分野で味覚障害の検査などで使われている電気味覚とは、電気によって食品中の電解質をコントロールして舌に近づける技術。「エレキソルト スプーン」で微弱な電流を舌周辺に流すことで、口の中で分散してしまい味覚として認知されていない食品内のナトリウムイオンを、舌に集中させて塩味や旨味を増強させている。
電気を流さなければならない仕組み上、スプーンの持ち方や食べ方に若干のコツがいるが、減塩食がマストの人にとっては画期的なアイテムであり、食生活へのストレスが軽減されそうだ。また塩分摂取過多を気にしている人にとっても、このようなアイテムや料理が一般的になることのメリットは大きいだろう。
現代の食生活において塩分摂取過多は意識すべき問題だ。キリンと力の源によるこのような取り組みによって、減塩食の可能性が広がっていくことを期待したい。同時に私たち一人一人が今まで以上に食や健康に対して、高い意識を持っていくことで、より豊かで健康的な生活を送ることが出来るようになるだろう。
なお、キリンと力の源による減塩ラーメンを実際に体験出来るイベントが開催される予定だ。事前予約制になっているので、興味のある人はキリンのプレスリリースから詳細を確認して欲しい。【プレスリリースはこちら】
※写真は筆者によるものです。
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