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ヤマダ積立預金騒動、何を読み間違えたのか。そもそもどうして18%もの金利を付けたのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:YUTAKA/アフロ)

 ヤマダホールディングス(HD)は2日、積立預金サービスで満期に10%のポイントを還元するキャンペーンを撤回したと発表した(2日付日本経済新聞)。

 ヤマダデンキは11月28日から積立預金のサービスを始め、記念キャンペーンとして早期の申込者に対して10%をポイント還元すると発表していた。

 満期時点の積立金額にポイントが付与されるため、毎月定額積み立てをすると「実質的な年利は約18%になる」としてSNSで話題になっていた(2日付日本経済新聞)。

 あくまでポイントではあるが、定額積み立てでの年利18%は高利回りとなり、普通に考えるとかなり危ない投資商品のように見えてしまう。

 単純に積み立て総額が預金保険制度適用の限度額となる1000万円を積み立てたならば、180万円のポイント相当が手に入る。これがヤマダデンキで使えることになる。

 参考までにメガバンクの1年定期の金利は0.125%なので、1000万円の定期預金の1年間の金利は12500円にしかならない(税込み)。

 どうしてこれほどまで有利な積立預金サービスを行おうとしたのか。

 これはたぶん一定額を積み立てると満期にボーナス分が上乗せされる百貨店の「友の会」を参考にしたのではないかと思われる。

 満期に現金で戻るわけではなく、使い道は百貨店での買い物に限定されるが、利率は実質換算で最大年15%程度にもなる。高島屋などで実施されている。顧客の囲い込みのための制度ということになる。

 ヤマダデンキは、百貨店の「友の会」のようなものを想定したのではなかろうか。ただし、百貨店は店舗が限られ、若者などにすると敷居も高い。

 これに対してヤマダデンキは957もの店舗(2024年9月現在)があり、使い勝手が良い。扱っている商品も家電や家具などとともに一般家庭用品などもあるなど、ポイントがほぼ現金による買い物として利用できる。

 ポイントを利用する際の税金面をみると、特定の店が発行してその店でのみ使えるポイントは値引きとみなされ、経済的利益にはあたらず、確定申告が必要ないようである(要確認)。

 ちなみに利子所得は原則として、その支払を受ける際、利子所得の金額に一律15.315%(他に地方税5%)の税率を乗じて算出した所得税・復興特別所得税が源泉徴収される。

 このように今回のヤマダデンキによる積立預金サービスは、百貨店の「友の会」とは異なり、ポイントの使い勝手の良さや税金面などから、資金運用としての活用が意識されてしまったのではなかろうか。

 それがネットを通じて急速に拡がったことで、「想定を遥かに上回るお客様からお申込みを頂き、また、一部の方からの大量のお申込みがあった」。

 客の囲い込みという目的にかなうというよりも、元本保証の高利回り商品としての投資対象になってしまった。このため、想定を超す資金が流入してくる可能性が出てきたことで、中止せざるを得なくなったものと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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