新型コロナ禍の輸出市場で、和牛が鶏卵から学ぶべきこと
今回の新型コロナ禍が起きる前、日本政府は「農林水産物・食品の輸出額を2030年に5兆円とする」方針を固めていました。2014年にこの目標が定められて以降、前年を上回り続けていた農林水産物・食品の輸出額はが、2019年に目標額に届かなかったことは、以前「2030年、和牛の輸出額1112%増は達成できる目標だったのか」でも紹介したとおりです。
さて、新型コロナウイルスが蔓延した今年の1~4月期の農林水産物・食品の輸出額を見ると、前年同期の2971億円からマイナス9.4%の2692億円となっています。
畜産物は、牛乳や乳製品ほか、鶏肉や豚肉もすべてプラスですが、看板商品になるはずの牛肉がマイナス28.9%と足を引っ張る形になってしまい、畜産物全体が-3.1%というマイナス成長になってしまいました。
日本からの牛肉(ほぼ和牛です)の輸出先はカンボジア、香港、台湾とアメリカの4か国で全体の約7割を占めていますが、そもそも大陸における和牛人気は、和牛ブランドが持っている「最高品質」という信頼感に由来しています。ブランドでウケていると言っても過言ではありません。
あまり始めた「和牛」と「A5」
ただ、新型コロナの影響を抜きにしても、すでにいままでの「A5」推しには無理が顕在化し始めたという話は各所から聞こえてきます。今年2月、日本経済新聞の「和牛輸出、金額・数量とも最高更新 消費者の裾野広がる」という景気のいい見出しの記事内にも、以下のような記述がありました。
いままで現場で悩みとして語られてきた「A5は万人にとって本当においしい牛肉なのか問題」がようやく可視化されてきました。市場調査もそこそこに、現在生産されている和牛の特徴を要素分解もせず、「A5は最上級だから、海外でも人気になるはず」という思い込みで売り込もうとしてもそうそううまくことが運ぶとは思えません。そもそも「A5」は味の指標ではありませんし。
世界中で「新しい生活様式」が求められている以上、輸出戦略の見直しも必要になってきます。たとえ厳しい現実でも、目の前にあるものを直視することで初めて、課題に対する正しいアプローチの可能性は広がっていくはずです。
和牛の生産に「マーケット・イン」思想を持ち込む
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