「梅宮アンナ」さん「梅宮辰夫」さん「借金ゼロ」に安堵~「相続放棄」ここに注意!
俳優・梅宮辰夫さんは、2019年12月12日にお亡くなりになりました。享年81。愛娘・梅宮アンナさんが週刊誌のインタヴューに、怒涛の相続手続について語りました。その内容は、「親の相続」で多くの方が経験することです。
アンナさんのインタヴューを基に「梅宮辰夫」さんの相続に学ぶ「親の相続」の「5つ」の壁~「梅宮アンナ」さんが語る親の相続、「梅宮アンナ」さん「梅宮辰夫」さんの相続で怒涛の毎日~今すぐできる「親の相続」を楽にする2つの対策、「梅宮アンナ」さん「梅宮辰夫」さんの「口座凍結」で焦る~「親の相続」で慌てない「銀行預金」の知識、そして「梅宮アンナ」さん「梅宮辰夫」さんの「貸金庫」を発見!~「親の相続」で慌てない「貸金庫」の知識の以上4つの記事をお届けしたところ、大勢の方に関心を持っていただきました。
そこで、今回も、アンナさんのインタヴューを基に、「親の相続」で知っておくと役立つ知識をお届けしたいと思います。今回のテーマは「相続放棄」です。
なお、引用箇所はすべて「まさか隠し子が…」 「梅宮辰夫」相続で「梅宮アンナ」が懸念したこととはから引用しています。
梅宮辰夫さん「借金ゼロ」で旅立つ
アンナさんは梅宮辰夫さんが亡くなられてから怒涛の相続手続の日々を過ごすことになります。そんな中、安堵することがありました。それは、梅宮辰夫さんには借金、つまりマイナスの遺産はなかったということです。このことにアンナさんはインタヴューで次のように語っています。
このように、親が借金を残さずに死亡した場合は、遺産を相続人の間で話し合って「だれが、何を、どれだけ」引き継ぐのかを決めればよいことになります(この話し合いのことを「遺産分割協議」といいます)。しかし、親が借金を残して死亡した場合は、そう簡単にはいかないのです。
親が「借金」を残して死亡すると
亡き親が残した積極的財産、つまり、プラスの財産は、相続人全員で遺産分割協議を行い「だれが、何を、どれだけ」引き継ぐか決めれば済みます。
しかし、亡き親が残した消極的財産、つまり、マイナスの財産は、相続人の間で「だれが、何を、どれだけ」引き継ぐかを決められるかというとそうはいきません。なぜなら消極財産には債権者がいます。したがって、債権者の同意がなければ、消極的財産の引継ぎを決めることはできないのです。このように、親が借金を残して死亡した場合は、債権者が登場するので遺産分けが複雑になってしまいます。
債務超過の場合
親が借金を残して死亡しても、トータルで相続財産がプラスになればいいのですが、マイナスの場合、つまり債務超過の場合は相続人がその債務を引き継いで返済しなければならなくなります。このような事態を回避するために、民法は相続放棄という制度を用意しています。
相続放棄をすれば、被相続人(死亡した方)の債務を引き継がないで済みます。相続放棄をする相続人は、自己のために相続が開始したことを知ったときから3か月以内(この期間を「熟慮期間」といいます)に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所にその旨を申述しなければなりません(民法915・938条)。
家庭裁判所の審理を経て申述書が受理されれば、相続放棄が成立します。そして、その相続に関しては初めから相続人にならなかったものとして扱われます(民法939条)。
相続放棄が認められないこともある
このように、たとえば親が多額の借金で債務超過のまま死亡したとしても、家庭裁判所に熟慮期間内に相続放棄の申述をすれば親の債務を引き継がずに済みます。しかし、家庭裁判所から相続放棄が認められない場合があるのです。それは「単純承認」をした場合です。
「単純承認」とは
単純承認とは、相続人が、一身専属的な権利を除いて、被相続人の一切の権利義務を包括的に承認することです(民法920条)。だから、被相続人に借金などの債務があれば、相続人は自己固有の財産で弁済しなければならなくなります。つまり、単純承認をしてしまうと、自腹で被相続人の債務を返済しなくてはならなくなります。
単純承認をしたとみなされるケース
では、どのような場合に単純承認をしたとみなされるのでしょうか。
実は、単純承認について、相続放棄のような家庭裁判所への申述や届出などの方式は規定されていません。具体的には次のような場合に当然に単純承認をしたものとみなされます(民法921条)。
1.相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき(民法921条1号)。
2.「熟慮期間」の経過
~自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に限定承認や相続放棄をしない(民法921条2号)。
3.背信的行為(民法921条3号)
~相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。
このように、親の相続財産が債務超過の可能性がある場合は、その内容がはっきりするまで遺産に手を付けないことが大切です。
なお、実際に相続放棄が認められるか認められないかの裁判例は、「相続放棄」認められないことがある~親の借金を背負わないための知識をご覧ください。
相続放棄の手続は「早め」が肝心
相続放棄の申述には、家庭裁判所の「相続放棄の申述書」に必要事項を記入し、被相続人の住民票除票又は戸籍附票、 申述人(放棄する者)の戸籍謄本等を提出しなければなりません。これが意外と時間がかかります。「放棄をする」と決めたら直ちに行動しましょう。
なお、相続放棄の申述の期限は、「被相続人が死亡したときから」ではなく、「自己のために相続が開始したことを知ったときから」3か月以内です。「親が死亡して3か月過ぎたから放棄できない」と思っている方がいますが、そうとは限りません。もし、被相続人が死亡して3か月を経過した後に、被相続人の相続財産が債務超過であることが判明したら、専門家または被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に相談してみましょう。相続放棄の道が開けるかもしれません。相続放棄の申述につて詳しくは、裁判所ホームページをご覧ください。
このように、親が借金を残して死亡すると、債権者が登場します。また、債務超過の場合は相続放棄という手段があります。しかし、相続放棄は単純承認をしてしまうと認められないこともあります。しかも、期限も決められています。
もし、親が借金をしているようなら、万一のときにあわてないためにも、生前にその内容を把握しておくことがなにより大切です。ご心配の方は、一度親が元気な内に話し合ってみてはいかがでしょうか。