「梅宮辰夫」さんの相続に学ぶ「親の相続」の「5つ」の壁~「梅宮アンナ」さんが語る親の相続
俳優・梅宮辰夫さんは、一昨年(2019年)12月12日にお亡くなりになりました。享年81。愛娘・梅宮アンナさんが週刊誌のインタヴューに、怒涛の相続手続について語りました。その内容は、「親の相続」で多くの方が経験することです。そこで、今回はアンナさんのインタヴューを基に「親の相続の壁」についてご紹介したいと思います。
なお、引用箇所はすべて「まさか隠し子が…」 「梅宮辰夫」相続で「梅宮アンナ」が懸念したこととはから引用しています。
1.「時間」の壁
梅宮さんがお亡くなりになってから、アンナさんは、怒涛の日々を送られたようです。
アンナさんはインタヴューで「相続の手続きは10カ月しか猶予がない」とおっしゃっていますが、相続税の申告期限のことをおっしゃっていると思われます。相続税の申告及び相続税の納税は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。例えば、1月4日に死亡した場合にはその年の11月4日が申告期限になります。
実は、共同相続人は、被相続人が遺言で遺産分割の時期を一定期間禁止した場合を除き(民法908条)、いつでも、その協議で、遺産の全部または一部の分割を請求することができます(民法907条1項)。このことは、民法は遺産分割に期限を設けていないことを意味します。しかし、時間の経過に比例して、協議が難航する傾向にあるので、早めに遺産分けをすることをお勧めします。
2.「相続財産調査」の壁
梅宮さんは、財産について資料を残されていなかったようです。
当然ですが、遺産分けを行うためには、被相続人がどんな財産を残したのか(相続財産の範囲)と、その財産の価値(相続財産の評価)を確定しなければなりません。被相続人が遺言書に財産を列挙していたり、「終活」で財産に関する資料をまとめておいてくれるとよいのですが、実際のところ、そういう方はまだまだ少数のようです。そのため、預貯金の口座を複数設けているなど相続財産が広範に及んでいる場合は、調査が難航する場合があります。
3.「相続人調査」の壁
アンナさんは、梅宮さんの戸籍を取集するのにご苦労されたようです。
遺産分割をするには、「相続人の範囲を確定する」必要があります。つまり、被相続人の遺産を承継する権利のある人、つまり相続人を戸籍で確定する必要があります。そのため、被相続人(死亡者)の「出生から死亡まで」と「相続人」の戸籍謄本を役所に請求して取得しなければなりません。
この場合、被相続人が離婚・再婚、認知や養子縁組等していると相続関係が複雑になり収集に時間を要します。相続関係によってまちまちですが、スムーズにいっても1か月前後は見ていた方がよいでしょう。
4.「見知らぬ相続人」の壁
戸籍を調べてみると、梅宮さんには“隠し子”はいなかったようです。
相続人調査の結果、“隠し子”などの「見知らぬ相続人」が判明することがまれにあります。遺産分割は相続人全員が参加して、なおかつ全員が合意しなければ成立しません。そのため、「見知らぬ相続人」が判明すると、協議は難航するおそれがあります。
5.「口座凍結」の壁
梅宮さんの銀行口座は、死亡が報道されるとあっという間に凍結されてしまったようです。
金融機関は預金者の死亡が判明すると、遺産の流出と、銀行の二重払いを防ぐために直ちに口座を凍結します。その結果、口座の入出金は一切できなくなります。梅宮さんのような有名人の方は、死亡が報道された時点で銀行は口座を凍結したと思われます。
口座が凍結されるケースとして、相続人から銀行に死亡の連絡を入れたり、銀行の営業マンが顧客回りの際に預金者死亡の情報を取得した場合などが挙げられます。
アンナさんは、梅宮さんの相続を終えて、次のように感想を述べています。
梅宮辰夫さんは、「借金を残さずきれいに旅立った」とのことですが、これは相続人にとって助かります。なぜなら、借金は相続人の間で協議で自由に分割できず、債権者と協議の上、承継内容を決めなければならないからです。
その他、梅宮さんは生前に財産を処分するなど、「終活」をされていたようです。アンナさんは相続手続で大変ご苦労されたようですが、結果として梅宮さんは「きれいな相続」を残されたと思います。
さて、この記事を読んで、「親の相続で苦労する」と思われた方は、事前に相続人調査や財産調査をできる範囲で行うなど「事前対策」を行っておいた方がよいかもしれません。加えて、親が元気な内に相続について話し合えればよいのですが、デリケートな話しなので、この場合は慎重に行いましょう。
私は実務を通じて「人は亡くなって終わりではなく、相続手続が完了して終わる」ということを実感します。今回は、子の立場から「親の相続」について見てみましたが、ご自身の相続で、配偶者や子に相続で苦労をかけそうな方は、ぜひ元気な内に対策を講じてみて、ご自身の「相続の壁」を取り除いてみてはいかがでしょうか。