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ワールドカップ日本代表はどうやって選ばれたのか?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
(筆者撮影)

 今年9月からのラグビーワールドカップフランス大会に向け、日本代表の登録メンバーが8月18日までに決まった。当初発表予定の15日は、全33名中30名のみのアナウンスとなり、18日、残る3名のリストアップと1名の入れ替えが決まった。

 本稿ではジェイミー・ジョセフヘッドコーチの談話をもとに選考の背景をおさらいする。まず顔ぶれは以下の通り。

【フォワード】

<左プロップ>

稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・116・1990/6/2・48 (15)(19)

クレイグ・ミラー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・116・1990/10/29・12 ☆

シオネ・ハラシリ(横浜キヤノンイーグルス)…180・120・1999/10/15・0 ☆★

<右プロップ>

具智元(コベルコ神戸スティーラーズ)…183・117・1994/7/20・24 (19)

垣永 真之介(東京サントリーサンゴリアス)…180・115・1991/12/19・12 ☆

ヴァル アサエリ愛(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…187・115・1989/5/7・25 (19)

<フッカー>

堀江翔太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…180・104・1986/1/21・71 (11)(15)(19)

坂手淳史(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…180・104・1993/6/21・36 (19)

堀越康介(東京サントリーサンゴリアス)…175・100・1995/6/2・7 ☆

<ロック>

サウマキ アマナキ(コベルコ神戸スティーラーズ)…189・108・1997/3/8・0 ☆

ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京)…201・117・2002/4/11・7 ☆

ヘル ウヴェ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…193・120・1990/7/12・18 (19)

<ロック/フランカー>

ジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…195・110・1994/10/13・15 ☆

<フランカー>

ベン・ガンター(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…195・120・1997/10/24・7 ☆

福井翔大(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…186・101・1999/9/28・1 ☆

ピーター・ラブスカフニ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)…189・106・1989/1/11・16 (19)

<フランカー/ナンバーエイト>

姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)…187・108・1994/7/27・28 (19)◎

リーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)…189・113・1988/10/7・79  (11)(15)(19)

【バックス】

<スクラムハーフ>

齋藤直人(東京サントリーサンゴリアス)…165・73・1997/8/26・14 ☆

流大(東京サントリーサンゴリアス)…166・75・1992/9/4・33 (19)○

福田健太(トヨタヴェルブリッツ)…173・80・1996/12/19・0 ☆★

<スタンドオフ>

李承信(コベルコ神戸スティーラーズ)…176・85・2001/1/13・9 ☆

松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…181・92・1994/5/3・32 (19)

<スタンドオフ/フルバック>

小倉順平(横浜キヤノンイーグルス)…172・82・1992/7/11・4 ☆

<センター>

長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…179・90・1999/11/25・3 ☆★

中野将伍(東京サントリーサンゴリアス)…186・98・1997/6/11・7 ☆

中村亮土(東京サントリーサンゴリアス)…182・92・1991/6/3・34 (19)

ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)…187・102・1997/5/2・13 ☆

<ウイング>

ジョネ・ナイカブラ(東芝ブレイブルーパス東京)…177・95・1994/4/12・3 ☆

シオサイア・フィフィタ(トヨタヴェルブリッツ)…187・105・1998/12/20・12 ☆

<スタンドオフ/センター/ウイング/フルバック>

レメキ ロマノ ラヴァ(NECグリーンロケッツ東葛)…178・96・1989/1/20・16 (19)

<フルバック/ウイング>

セミシ・マシレワ(花園近鉄ライナーズ)…181・93・1992/6/9・4 ☆

松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)……178・88・1993/2/26・50 (15)(19)

◎:主将

○:副将

(11):2011年ワールドカップニュージーランド大会選出

(15):2015年ワールドカップイングランド大会選出

(19):2019年ワールドカップ日本大会選出

☆:ワールドカップ初選出 

★:今年代表初選出

※:15日の発表時はジェームス・ムーアが選出も、18日にコンディション不良のため離脱と発表された。

 2016年秋の就任以来、ジョセフは一貫して目指すスタイルへの適応力、本質的な「タフ」さ、首脳陣の意図をくみ取る「スマート」さを重視してきた。グラウンド外での言動にも目を光らせ、その領域で検討課題のある人物は選手としての能力を鑑みて当落を定める。

 さらに今回は、ポジションごとの選出人数にこだわりを覗かせた。本番中の有事に対応すべく、専門性の高い位置には3名ずつチョイス。それ以外の位置では複数ポジションをカバーできる選手を重んじた。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「メンバー発表の前に伝えたいことがあります。まずはワイダートレーニンググループとしてハードワークしてくれた選手に感謝しています。選ばれたメンバーのために一生懸命、練習してくれました。彼らがいなかったら今回のメンバーを選べなかった。態度、コミットメント、チームへの思いは強く感じました。

 2023年。大きなチャレンジです。

 2020年以降はパンデミックで1年間ラグビーがなくなり、そこからチームを加速させなければなりませんでした。ティア1(強豪校)と試合をたくさんした。

 この5試合、難しい結果となった(7月からの国内戦は1勝4敗)。レッドカードをもらったり、深刻な怪我を負ったりした選手もいます。ただ現代のラグビーではそういうことは起こりうる。先週の試合では、イングランド代表のオーウェン・ファレル選手がレッドカードをもらった(後に取り消し)。自分たちもこういうことに慣れていなかければならず、その意味ではいい準備ができた」

——夏の試合での成果。

「高いレベル、強度の試合で試せた。オフ明けに対戦できたオールブラックス ・フィフティーンには多くのオールブラックス(ニュージーランド代表)経験者がいた。準備ができていない部分もちろんありましたが、試合中のすべてが悪かったわけではなく、試合の部分、部分で自分たちができたところはあった。一貫性を持ってできた部分もあった。

 この5試合では怪我もありました。ワールドカップでもそういう環境になりうる。病気もあるかもしれない。またレッドカードやイエローカードも起こりうる。夏の試合は、今後に向けてはいい経験でした」

——何を見せたいか。

「ジャパンラグビーにはアイデンティティーがある。素早く、ボールを動かす。アタッキングマインドセットを持っていく。相手によって戦い方を調整する部分はありますが、世界でもユニークなジャパンラグビーをやる」

——現在(8月15日取材)は3名が未発表。選出を検討しているのは、怪我をしているロックの選手なのか。

「怪我人は実際、もっといますが、基本的にはロックの部分です。ワーナー・ディアンズは肩を練習中に、それこそ足首も怪我している。よくはなってきていますが、ヘル ウヴェも肩、アマト・ファカタヴァも足首を痛めている。ラピース(ピーター・ラブスカフニ)は最後の試合(フィジー代表戦)でレッドカードを。それからどれくらいの出場停止になるかが確定していないので、それによって状況次第によっては変わってくる(会見前に3試合の出場停止が決まったが、コーチングの介入による減免がなされれば大会2戦目から出場可)」

——残る3名の検討箇所について。もし指揮官が望んだとおりの選考ができなかった場合はどうするか。

「最終的には誰かが落選することになります。いままでの欧州ツアーでは多めに連れていましたが、ワールドカップのルールではそれが難しい。しっかりそこを誰が連れて行くかは私の仕事として判断する。ベストなチームを作ることを考えてプレーしたい。

 ロックの選手ではファカタヴァは素晴らしい質の高い選手。驚いた部分もある。ルースフォワードからロックに転向し、各試合ドミネートしていいパフォーマンスを見せてくれた。ただ彼には時間がない、できる限り彼の怪我を治してほしい。

 ワーナーは未来と可能性がある選手だが、今年は怪我の部分でパフォーマンスが上がらなかった。試合に出られない部分もあった。ただ、日本の未来の選手で、日本語も堪能。日本を理解している。そしてまだ21歳。経験のある選手。ここから経験者とミックスしながら、ラピース、他選手を観ながら決めいきたい」

 結局、前述通り、残る3名およびジェームス・ムーアの離脱の穴はロックのヘル、ディアンズ、サウマキ、フランカーのブスカフニが入った。

 複数クラブの関係者によると、ムーアやファカタヴァもコンディションの回復具合によっては大会期間中の追加招集にスタンバイする見込みだ。

 選手には、8月5日のフィジー代表戦直後に今回のメンバーを通達済み。18日にリストアップされた選手の1人によると、5日の段階では今季大ブレイクしたファカタヴァが選ばれていたという。セレクションの難航ぶりがうかがえる。

 ジョセフはバックスについても言及する。

——バックスは現在の15人で確定ですか。

「はい」

——山中亮平選手の落選について。

「山中は素晴らしいラグビーをしてくれる。スペシャリストの15番でしたが、神戸で10番としてプレーする機会がなかったのが現状。フルバックとしての専門家としては松島を考える。もし松島に怪我があったらレメキ、マシレワがカバーしている。(小倉は)10番と15番のカバーで入っています」

——山中選手にも10、15番を兼務するよう伝えていたが、不十分だったという認識か。

「合宿、練習で競争していかなくてはいけないポジションだった。46人のなかで競争をしてもらった。そのなかでベストなチームを作っていかなきゃいけない。彼のことは残念で、アンラッキーな部分があったと思っています。彼はフルバックとして評価しないといけない。浦安での20~30分(スタンドオフとしての練習)でよくなるとは思っていないし、ワールドカップで自分たちは強いイングランド、アルゼンチン、チリなどと戦わなきゃいけない。そんな状況の中で、彼の十分な準備ができなかった。それが、最終的に彼がここに選ばれていない理由だと思っています」

 バックスでは、司令塔団の位置もフロントロー同様に専門職と見られたわけだ。

 各国代表のポジションごとの人数分布図は、千差万別である。渦中、ジョセフは専門職は3名ずつがマストとした。コロナ禍突入後初のワールドカップへ向けて立てた、それが仮設だった。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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