北海道日高地方でヒグマの足跡や血痕があり、飼い犬が消えた...なぜ再び、犬を襲うのか?
北海道の日高地方で飼い犬がクマに襲われとみられるニュースが入ってきました。愛犬と都会で暮らしている筆者にとっては、愛犬がクマに殺されることを考えると、なんとも痛ましい事件です。そこで今日は、クマと人里の関係を考えてみましょう。
事件をまとめると、北海道日高地方で、クマに襲われたとみられる1匹の犬が行方不明で、もう1匹は死骸で見つかった、ということです。
その後、地元猟友会のハンターが、飼い犬を襲ったとみられるヒグマ1頭が駆除しました。そのヒグマは、体長170センチ、体重200キロほどのオスで、5歳くらいの成獣です。
去年も同じように、北海道の根室管内羅臼町では、ヒグマが飼い犬を襲う被害がありました。2018年に2匹、2019年は7月から8月上旬に3匹で計5匹の飼い犬が死んでいます。
一度、飼い犬を襲うとまた狙う
上記の飼い犬を襲ったクマのふんに残されたDNAから5匹を襲った全て同じクマと判明しました。この結果は、野生生物の調査・研究などを行う知床財団(オホーツク管内斜里町)が北海道大学に委託して調べたものです。つまり、クマは一度味をしめると執着する習性があり、また犬を食べるのです。
クマが犬を襲うのは、最近の暑さで食べるものが少ないなどの理由があるのでしょう。でも、犬を襲ったクマは、また犬を襲うので、今年は、日高地方で猟友会のハンターが駆除したのです。
ヒグマ
北海道、国後島、択捉島、サハリン、中国東北部に生息しています。
(形態)
毛色 :黒褐色から 茶褐色 です。
体重 :オスで150~250kg、メスで60~120kg程度です。
(生態)
時速50km程度の早さで走ることができます。
オスは広い範囲で動き回り、行動圏は数百平方kmに及ぶと考えられています。一方、メスは、数平方kmから 数平方十kmです。
(食物)
・植物食の強い雑食性です。
・春にはザゼンソウ、イラクサ、エゾニュウ、フキなどの多汁質の草本を食べます。
・夏には、草本のほかにシウリザクラやヤマグワなどの果実、アリを巣ごと襲って食べます。
・秋には、マタタビやヤマブドウなどの果実類やドングリも食べます。
・越冬の前には、エゾシカなども食べます。
クマの出没地域の飼い主のできること
・飼い犬を室内に入れましょう。
・外で飼う場合は、犬小屋の周りに電気柵をしてクマが近づかないようにしましょう(もちろん、犬を電気柵に近づけないようにしてくださいね。犬の紐を電気柵に届かないようにしてください)。
電気柵とは、クマが触れると電気ショックを与えるものです。クマは、「この場所は恐い」ということを学習します。一度電気ショックを経験したクマは、「近寄ると危険」ということを心理的に覚えています。クマの学習能力を利用する電気柵は、非常に有効な手段です。
クマたちは、人里へ現れて人間と軋轢(あつれき)を起こす問題
なぜ、クマが人里に下りてくると問題なのか、考えてみましょう。
・人里に下りてきたクマが人と遭遇し、人身事故に発展することもあります。
・人里に下りてきたクマは、スイカなどの果物、農作物や家畜の飼料などを食べます。
果物は価格が高いものが多いため、一度被害が起こるとその被害金額は多くなります。また、家畜の飼料用に栽培されるトウモロコシ(デントコーン)も食べます。
・人工林のスギやヒノキの木の皮をはぎます。
・ヒグマ捕獲の技術と経験を持っているハンターは減り、そして、高齢化しています。そのため、「わな」を設置して、クマを駆除しています。
・農家・林家の減少にともなって、管理が行き届かなくなり、針葉樹の林には広葉樹が茂り、見通しの悪い里山が増えています。
下草が刈られ、見通しが良い里山は、クマに対する緩衝帯として働いてきましたが、管理が行き届かなくなり、針葉樹の林には広葉樹が茂り、耕作放棄地が増えています。
クマをおびきよせないために
・隠れ家となりそうな川沿いのやぶを除去しましょう。
・収穫後の農産物、家庭の生ごみは野外に放置しないようにしましょう。
・庭にあるカキ、クリなどは放置しないで早めに収穫しましょう。
・家の周囲でハチの巣を見つけたらなるべく早く取り除きましょう。
まとめ
人の側から見たら、クマが一方的に、悪いように思われますが、山でクマの食べ物が減っているので、人里まで下りてくるのですね。
この夏は、クマによる被害は、犬だけでなく、子牛やスイカなどに広がっていることがニュースになっています。人とクマが共存するためには、まず野生動物であるクマの生態を知り、そして私たち自身の社会の変化を知ることです。その上で人とクマのバランスがどこにあるのかを探すことではないでしょうか。人とクマが共存できる社会をめざして。
参考サイト