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「岡山の奇跡」がデビュー10周年でイジりネタに。桜井日奈子が清純派越えへ初の水着写真集とコメディ演技

斉藤貴志芸能ライター/編集者
「桜井日奈子10周年記念写真集 鴇色」より

ドラマ『マル秘の密子さん』に出演中の桜井日奈子が、芸能活動10周年記念の写真集を発売した。「岡山の奇跡」と言われてデビューし清純派のイメージが強いが、初の水着撮影にも挑んでいる。『マル秘の密子さん』でもコミカルな演技を見せて、俳優としての幅を広げていて。この10年を経て、どんな変化があったのか?

まだ10年しか経ってなかったかと

――デビュー10周年というのは、自分でも意識していたんですか?

桜井 今年で10周年と言われて、「えっ、そうなんだ」という感じでした。ひとつひとつの作品の充実感が大きくて、時間の感覚がおかしくなっていて、もっと長くやっているつもりになっていました。まだ10年なんだと。

――「もう10年」でなく「まだ」でしたか。個人的には、5月に『二軒目どうする?』に出演されたとき、「日奈子さんもこういう酒飲みトークの番組に出るようになったんだな」と感じました。

桜井 あの番組はすごく反響がありました。表に出るときに、お酒のことや自分のことをざっくばらんに話したのは初めてだったので。イメージと違って「あれれ?」となった人も結構いたようです。20代前半の初々しい印象で止まっている方が多いみたいで。今回の写真集は、そんなイメージをいい意味で崩していく狙いもあって、出させていただきました。

インセント提供
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いかに面白い役に挑戦していけるか

――その『二軒目どうする?』では清純派路線の話も出ていましたが、去年公開で初のベッドシーンもあった『魔女の香水』あたりから、そういうことは考えていたんですよね?

桜井 事務所の社長から「表に立つ人間として、見ている方を楽しませないといけない」と言われていて。そのためには私自身が変わる必要があるんです。ビジュアルも内面もいろいろな方向から変わって、こんな桜井日奈子もいるんだと見せていく。初々しい役はきっともうできませんけど(笑)、そのときにしかできない役もあるので。27歳になって、どんどん経験を重ねていく中で、変わっていきたいと思っています。

――前クールの『95』のコギャルなお姉さん役にも驚かされました。

桜井 デビューしてからヒロインが多かったんですけど、今はいかに面白い役をいただいて、どんなお芝居をできるかに挑戦していきたくて。『95』では弟に劣等感を抱えながら後押しをするお姉ちゃんで、今までに演じたことがない役でした。出番はそんなに多くはなくても、とても面白かったです。これからもそんな機会をどんどん増やしていけたら。

「桜井日奈子10周年記念写真集 鴇色」より
「桜井日奈子10周年記念写真集 鴇色」より

望んでもらえるならやりたいと思っていて

――写真集での初の水着撮影も、自分でやりたい気持ちがあったんですか?

桜井 今までファンの方から「出さないんですか?」という声はありましたし、毎年のカレンダーの記者会見で「水着はないんですか?」と聞かれてもいて。肌の露出をすることはほとんどなかったので、望んでもらえるならやりたいと思っていました。お芝居で脱ぐ場面があっても、全然前向きに考えます。ただ、写真集だと役でなくて自分自身なので、ちょっと恥ずかしい気持ちもありました。

――これまではオファーがあっても、NGにしていたんですか?

桜井 どうだったんでしょう? 事務所から、そういう話があったとも聞いていません。初めの頃はグラビア系の撮影で、ちょっと服がはだけたりすると、マネージャーさんがすぐ入って守っていただいて。私はこのまま、水着をやらずに時が経っていくんだなと、ちょっと思っていました。

ちゃんと年齢を重ねているとアピールを

――そしたら、10周年で水着撮影をやることに。

桜井 昔から応援してくれている方から「寂しい気持ちがする」という声もあります。だけど、こういう機会はなかなかないので、ポジティブに挑戦しようと。私をバラエティやCMで見掛けて、元気な女の子のイメージを持っている方は、やっぱり多くて。ちゃんと年齢を重ねているんですと、アピールもしたかったんです。

――日奈子さんももう大人ですが、ご両親の反対はなかったですか?

桜井 両親には事後報告になってしまいました。撮影が終わってから「こんな写真を撮ってきたよ」と。父はたぶん恥ずかしいと思って、あまり深く聞いていません。でも、今までやってきたことも、両親は応援してくれたので。今回の挑戦も、ファンの方や身近な人たちに応援してもらいたいと思っています。

――日奈子さん的には振り切って挑んだというより、自然な流れだったと。

桜井 自分がやりたくてやりました。

ハードなトレーニングで引き締まった体に

――撮影に備えて「ジムにみっちり通い、頑張ってボディメイクをした」とコメントされています。どれくらい前からジム通いをしたんですか?

桜井 トレーニングに関しては、ヨガにはもう7年くらい通っていたり、ジムも挫折しつつ行ったり行かなかったりで続けてはいたんです。その中で水着撮影のお話をいただいて、ジムには最低3日に一度、1時間半通うようになりました。そのジムがEMSスーツを着てインナーを鍛えながら、ウェイトトレーニングをするところで、すごくハードなんです。トレーナーの方に、初めて肌の露出をするためにどうしたらいいか考えてもらって、すごく頑張りました。

――特に重点を置いたことというと?

桜井 ヒップアップです。私はもともと骨格がしっかりめで肩幅もあって、骨盤もガッチリしていて。華奢ではないので、柔らかそうだけど程よく引き締まった、女性らしい体つきを目指しました。中でも、鍛えている人のお尻はカッコいいんです。ヒップスラストという、腰にウェイトを乗せてお尻を上下する運動があって、110キロをお腹で持ち上げられるようになってほしいと言われました。

――110キロ!? ヘビー級のプロレスラーの体重並みです。

桜井 女性がなかなか上げられる重さではないですけど、私はバスケもやっていて、やっぱり体力があるんだと感じました。おかげでパーンとしたカッコいいお尻に仕上がって、自分でドキッとしました(笑)。

ボディメイクができたことが自信に

――ハードなメニューをやり抜いたんですね。

桜井 しんどい想いはかなりしました。たまに「何でこんなに頑張らないといけないんだろう?」とわからなくなりながら、自分をしっかり追い込めて。写真集の撮影は4月でしたけど、いまだにトレーニングは続けています。やらないと不安になるくらい、習慣化されました。

――引き締まったボディをキープしていると。

桜井 メンタル的にも、トレーニングをしていると前向きになれます。疲れていても、あえてトレーニングをすると、充足感に変わっていいなと。昔は自分の体型がイヤだったんです。デビュー当時から2~3年前まで、「体型管理を頑張ろう」とずっと言われていて、糖質制限も脂質制限もして、大手のジムにも行きました。でも、自分でうまくコントロールできなかった期間がすごく長くて、衣装もなるべく体が隠れるものを選んでいました。だから、こんなふうに自分でボディメイクができたのは、すごく自信になりました。今はトレーニングが楽しくて仕方ありません。

撮られながら今までの自分と向き合って

――水着カットでの大人な表情は意識したものですか? 自然に出たんですか?

桜井 両方です。意識しつつ、引き出してもらった感じ。今回の撮影は「初めてのベトナムを楽しみましょう」というものではなくて。10周年の節目に今までの自分と向き合う。これからどんな芸能人生を歩みたいのか見つめる。そんな時間にしてほしいと言われたんです。撮られながら、自分が今どうしてここにいられるのか、思い返していました。

――どんなことが頭に浮かんだんですか?

桜井 ずっと支えてくれたファンの方たちに感謝しました。あと、一時期は仕事をやらされていると思っていたこともあったんですが、いろいろな方とご一緒していく中で、長く続けられている俳優さんに憧れました。自分も20年、30年と生涯俳優をやっていきたいと、覚悟が固まっていって。それならば10年はまだまだ。これから先が長いなと、考えたりしていました。

夕日のカットは奇跡的に撮れました

――ベトナムでの撮影は、日奈子さんの希望だったんですか?

桜井 そうです。アジア圏でいろいろ提案された中で、ベトナムは行ったことがないという単純な理由でした。あと、ベトナムは撮影スポットがいろいろあって。5日間で時間に余裕もあったので、最初にリゾート地のダナンに行って、そこから車で2時間かけて古都のフエで撮ったり、世界遺産のホイアンにも行ったり。

――日本ではできない経験もしました?

桜井 ベトナムの街の人の活気がすごいんです。市場ではものを手売りされている方が多くて、「これ買って!」と目の前まで、食べ物や川に流す灯籠や何かよくわからないおもちゃを差し出してきて。親日国なので「日本が大好き」とやさしくしてもらいました。食べ物もおいしかったです。気温が30度を超えて湿度も高くて、「暑い暑い」と言いながら撮影していた中で、キンキンに冷えたココナッツの実に、ストローを刺して飲むのにハマりました。

――他に、撮影で印象に残ったことはありますか?

桜井 夕日のカットがお気に入りです。その日の撮影が終わって撤収するタイミングで夕日が出て、「今撮ったらきれいじゃない?」とみんなの意思疎通がパッと取れて、奇跡的に撮れた1枚だったんです。全体的にも、みんなの良い写真集にしたい想いが実になって、満足の行く出来栄えになりました。

前の役から繋がったのが嬉しかったです

――出演中のドラマ『マル秘の密子さん』は、意外にも8年ぶりのGP帯レギュラーなんですよね。

桜井 そうなんです。久しぶりでちょっと緊張しました。今回いただいた松本千秋役が、プロデューサーさんと脚本家さんで私にピッタリという話になったと聞いて、すごく嬉しくて。Huluの『君と世界が終わる日に』のSeason3と4に私は伊織という役で出ていて、「あれが良くて千秋役に桜井さんの顔が浮かんだ」と言ってもらえました。

――そこで繋がったんですか。

桜井 お芝居で評価された経験は、今まで実感としてあまりなくて。私はオーディションに受かったこともありませんから。『君と世界が終わる日に』で頑張ったことが、今回に繋がって嬉しかったんです。

――伊織と千秋は似てるキャラクターではないですが。

桜井 そう思うので私にはわかりませんけど、脚本家さんには「ほぼ当て書き」と言われました。千秋は面白い役なので、自分に今あるものを全部出して、楽しんでもらえるように頑張る心意気です。

『マル秘の密子さん』より (C)日本テレビ
『マル秘の密子さん』より (C)日本テレビ

全力でみっともないところをさらけ出して

――松本千秋は、福原遥さんが演じる主人公の本宮密子の敵に当たる九条家の長男・遥人の秘書。こちらも違う意味でチャンレンジのようですね。

桜井 密子がなぜ九条家に乗り込んできたのか。なぜ(前社長の介護士だった)今井夏さんを社長にしたいのか。どんどん明かされてサスペンス要素が増えていく中、千秋の場面でクスッと笑えるようにしたいと言われました。私はコメディは大好きですし、『バカ殿』やバラエティもやってきて得意なところを活かしたいと、お受けしました。

――当初、公式サイトで千秋は「誰にも知られてはいけない秘密があり」と紹介されていて、どんな秘密かと思ったら……。

桜井 かなりヤバめの、遥人様のストーカーでした(笑)。

――2話で密子に捕らわれて、自作の遥人のアクリルスタンドが見つかって、「見るなー! ほどけー!」と絶叫していたシーンは、振り切ったんですか?

桜井 振り切りました。GP帯だし、かわいく映りたい想いはありつつ(笑)、全力でみっともないところをさらけ出しながら演じました。すごい顔をしていましたね(笑)。

――最初のテイクから、そういう勢いでやれました?

桜井 最初から「やってやる!」と、さらけ出す気マンマンでした(笑)。

――盗み撮りした遥人の写真を見ているときは、トロンとした顔になっていて。

桜井 回が進むごとにヤバくなっていくので(笑)、期待してください。ちゃんと仕事はしつつ、遥人様が大好きで裏でストーカーをしてますけど、素振りを見せない。密子に見せている顔、遥人様に見せている顔、九条開発で働いているときの顔と、コロコロ変えていたら面白いなと思って。そこは意識しながら演じています。

初めて台本にないことをやっています

――4話で遥人にデートに誘われたと思って、待ち合わせで陰から「カッコいい! カッコいい!」と興奮しながら、連写で写真を撮るところも面白かったです。

桜井 千秋を演じるに当たって、「アイデアがあればやってください」と言っていただいていて。あの連写も台本にはなかったんですけど、やってみたら採用されました。私は今まで、台本に書かれたこと以外はやらないようにしていたんです。言葉尻を変えたりする俳優さんもいますけど、私はもらった台詞をそのまま覚えて、アドリブもほぼやったことはありません。今回はやっていいと言われた手前、何がやれるか考えていて、これもまた挑戦。すごくドキドキします。やってみて「それはちょっと」と言われると、恥ずかしいですし(笑)。でも、任せてもらえるのはありがたくて、貪欲に行ってます。

――あの待ち合わせのシーンのあとは、仕事とわかって車を運転させられて、魂が抜けたような顔になっていました。

桜井 あれは演出です。緩急が大事だということで、最初はすごくルンルンでニコニコで、最後はああなるのがおかしくて。演出家さんも千秋が面白くなるように考えてくださって、愛を感じながら演じています。

バカをやるのが大好きなんです

――写真集とこのドラマで、清純派のイメージはより超えていけそうですね。

桜井 それも何か寂しいですけど(笑)、いろいろな面があることは知っていただけたら。今までも自分が清純派だったのか、よくわかりませんから(笑)。

――才色兼備とか文武両道のイメージは、日奈子さんが実際に持っていたものかと。

桜井 そういうふうに見ていただけていたなら、嬉しいです。これからもっと幅広く出していくと、清純派ではないと思う人も増えるかもしれません。それは別に悪いことではないし、面白いと思ってもらえたら良いことなので。

――バカをやるのは好きなんですよね?

桜井 バカをやるのが大好きなんです(笑)。おしとやかにモジモジしてしまうほうが、難しいかもしれません。

――10年前のキャッチフレーズだった「岡山の奇跡」は、まだ言われますか?

桜井 言われます。でも、今はほぼイジられているかも(笑)。デビュー当時は「岡山の奇跡」と紹介されて、「そうです」とも「違います」とも言えなくて。同時にその肩書きに助けられてもいて、気負うところもあったのが、10年経って笑いに変えられています。「そんなこともありましたね」みたいな(笑)。

この先の10年も楽しみで仕方ありません

――今年がデビュー10周年で、今後の10年についてのヴィジョンもありますか?

桜井 ずっとお芝居をしていきたいと思っていますし、バラエティも大好きだし、ラジオもよく聴いているのでやってみたいです。他にもやりたいことはたくさんあって。この世界で生きる意志が固まったのも、デビューした頃には考えられませんでした。

――学業も優秀で、その気なら他の世界でもやっていけただけに。

桜井 容姿に自信を持てるようになってきたのは、本当に最近。自分がやりたい仕事だと感じながら、どう進むか悩む楽しさに、やっと気づけました。

――やりたいことで悩むのは楽しいと。

桜井 昔は受け身で「やらなきゃいけない」みたいな義務感もあって。それが最近は楽しさに変わってきたんです。だから、この先の10年も楽しみで仕方ありません。まだ自分の可能性を感じている段階なので、想像はできませんけど、その分、楽しみも大きいです。

――アン・ハサウェイさんが憧れなんですよね。

桜井 大好きです。アン・ハサウェイさんが出ている作品はきっと面白いと思って、必ずチェックしていて。だから、私も「桜井日奈子が出ているなら絶対観よう」と思ってもらえる、面白い俳優になるのが目標です。

Profile

桜井日奈子(さくらい・ひなこ) 

1997年4月2日、岡山県生まれ。2014年に「岡山美少女・美人コンテスト」で美少女グランプリ。2016年に舞台『それいゆ』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『僕の初恋をキミに捧ぐ』、『ヤヌスの鏡』、『君と世界が終わる日に Season3・4』、映画『ママレード・ボーイ』、『ういらぶ。』、『殺さない彼と死なない彼女』、『魔女の香水』、舞台『17 AGAIN』、『富美男と夕莉子』など。ドラマ『マル秘の密子さん』(日本テレビ系)に出演中。舞台『138億年未満』(11月23日~12月8日/本多劇場、12月12日~16日/サンケイホールブリーゼ)に出演。「桜井日奈子10周年記念写真集 鴇色」が発売中。

「桜井日奈子10周年記念写真集 鴇色」

撮影/神藤剛 発行/東京ニュース通信社

発売中 3300円(税込)
発売中 3300円(税込)

土ドラ10『マル秘の密子さん』

土曜22:00~日本テレビ系

公式HP

(C)日本テレビ
(C)日本テレビ

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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