大会開催か中止か未発表のまま、高校女子硬式野球部の現在
高校総体に続き、今年の夏の甲子園大会の中止が5月20日に決定されました。女子硬式野球選手権大会はといえば、まだ結論を発表していません。4月に続き、5月22日にも大会実行委員会と開催地である兵庫県丹波市との会合が開かれました。丹波市の担当課によると、この日の会合で結論は出ており、大会委員長である丹波市長に承認をもらう段階になっているとのことで、来週5月末日までには正式発表をする、ということです。
長きに渡る休校が続いていますが、野球部の様子はどうなっているのでしょうか。21日に2人の監督に話を聞きました。
新一年生とはまだ一週間だけの部活動 作新学院
昨夏の覇者、作新学院高校女子硬式野球部、田代恭規監督です。新3年生が6人、新2年生が8人に加え、今年の新入部員は21人と大所帯となりました。しかし、学校は現在、休校中。「5月いっぱい休校です。最後に全体練習したのは4月10日。11日からは、自主練習に切り替えました」。県外から進学している生徒については、全員実家へ戻しているといいます。
自主練習は走り込みや体幹トレーニングが中心です。選手とは、何かあれば連絡を取り合うのはもちろんですが、2週間に一度ペースで監督側からメールを送っているといいます。「休校の期間中に誕生日を迎えた選手もいますしね。おめでとうのメッセージや学校が始まったら、誕生日ケーキを食べような!とかっていう内容ですかね」と、部員たちのことを片時も忘れてはいません。
選手権大会が開催されるとなったら、これだけ練習ができていないことの影響はどうなのか。「自主練でしっかり体を動かせているはずです……と、信じていますから(笑)、時間が足りないとかケガの心配はしていません」と、夏までに間に合うと話しましたが、「やはり試合感でしょうね」。今季は2月後半にひと試合できただけだそうです。ただ、「どの学校も条件は同じですから、それはそれで」と、割り切っています。
仮に、大会中止と決まってしまったとなれば……。「たとえそうだと決まっても、せめて休校中に発表しないで欲しい」と祈るような口調で答えました。選手たちは、監督から伝える前に知ってしまう可能性が高いでしょう。「そうだとわかっていながら、指導者としてどう伝えたら良いかわからないわけですよ」と、選手たちを思う監督の切実な思いです。「とにかく、6月に全員と再会して、そこからです。6月から頑張って良いチームをつくっていきます」
週6のオンライン部活を通じ、“どんな夏にしたいか”を考える提言も 履正社高校
昨夏、決勝戦で作新学院高校にサヨナラ負けを喫し、今年にリベンジを果たしたい履正社高校。現在は、分散登校が始まっていますが、部活動は3月末に休止して以来、できていないといいます。練習再開は、6月中旬頃の予定だそうです。
「週6でオンライン部活してます!」と橘田恵監督が教えてくれました。51人いる全部員と、ウエブ会議アプリZoomで繋がり、部活メニューを一緒にこなしているのだそうです。
「日によって内容が変わります。ヨガ、柔軟、体幹トレで体を動かしたり、メンタルトレーニングに栄養講座でしょ、走塁やバッティング理論も」と、実に内容豊富に行っているようです。
「規則正しい生活を送れるように朝9時にZoomで集合と決めていますが、全員、すでに体を動かした状態で私に顔を見せてくれます。かわいい子たちです」と話してくれました。
そんな中、電話をした21日の部活ミーティングでは、“どういう夏にするのか”を、橘田監督が問いかけたといいます。「高校部活競技の95パーセントは、大会中止が決まっている状況。男子の夏の甲子園の中止も決まり、『我々にも(選手権大会)中止宣告が近づいているのかも。残された時間は少ないよ』と話した」うえで、『できなくなった時の準備をしよう』ということで、どういう夏にするのかを考えてもらうことにしたそうです。もちろん、選手たちはすぐに答えられるはずはありません。しかし、橘田監督は、いきなり夢を断たれて落ち込むだけで終わる最後の夏にはさせたくはないと考えるからです。
橘田監督は「大会開催となっても両手をあげて喜べはしない」とも言います。結論がどちらに転ぶにしろ、選手たちにとっては特殊な状況の中で野球をすることに変わりはなさそうです。ここからは「大人が頑張らなあかんと思ってます」と、力を込めて言います。「どういう形ででも選手たちに夏を迎えさせてあげないと。保護者に対しても同じです。全力で応援する夏がないと、保護者も終われないでしょう」。
現場では、選手たちに寄り添い苦難を一緒に乗り越えていこうとする監督の姿がありました。