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LA「大谷翔平の日」制定でいよいよ生きる伝説へ。米国で「〜の日」になった日系人はほかに?

安部かすみニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者
LAのリトルトーキョーにあるホテルの壁に描かれた大谷翔平の壁画(3月)。(写真:ロイター/アフロ)

大リーグのLAドジャースに所属する大谷翔平選手の功績を讃え、毎年5月17日を「Shohei Ohtani Day(大谷翔平の日)」としてロサンゼルス市が制定したことが話題になった。

「17日」は多くの報道にもあるように大谷選手の背番号にあやかったもの。そして「5月」が選ばれたのは、アジア系の記念月間と関係がありそうだ。アメリカでは毎年5月をアジア・太平洋諸島系米国人の文化遺産継承月間(AAPI Heritage Month)として制定し、この地域にルーツを持つアメリカ人と文化を讃え、記念イベントが全米各地で行われる。ニューヨークでも毎年5月に日本の文化を現地の人に紹介する「ジャパンパレード」が盛大に行われる。

今季ドジャース入りした大谷選手は活躍や話題性に伴い、本拠地ロサンゼルスでのプレゼンスが日に日に増している。市内にある日系人街のリトルトーキョーにあるミヤコホテルには、巨大な壁画(冒頭写真)が描かれ、3月以降、街のシンボルにもなっている。

ロサンゼルス市議会で大谷翔平の日に、市議会議長らに迎えられた大谷選手。

ただしMLBのウェブサイトによると、「大谷翔平の日」は大谷選手が「ドジャースに所属する間」という限定的な記念日だという。「彼がドジャースでプレーする限り、少なくとも向こう10年間はロサンゼルスでこの記念日が知られることになる」と紹介されている。

アメリカでもっとも有名な「〜の日」は?

このニュースを聞いて、「『著名人の日』の制定というのはアメリカでたまにあることなのか?」という疑問を持った人もいるだろう。

アメリカでは「〜の日」や「〜記念日」はコメモレーション(Commemoration)などと呼ばれる。通常は歴史上の人物や出来事を後世に伝えていくために制定され、記念式典やイベントが毎年行われる。

「~の日」と聞いて筆者がまず思い浮かぶのは、アメリカ人なら知らない人はいない歴史上の人物、キング牧師(マーティン・ルーサー・キング・ジュニア)だ。

キング牧師とは“I have a dream.”(私には夢がある)のスピーチでお馴染みのアフリカ系アメリカ人公民権運動の指導者だ。1964年にはノーベル平和賞を受賞した。

その功績を讃えた「キング牧師の日」(Martin Luther King Jr. Day、Birthday of Martin Luther King, Jr.)は毎年1月の第三月曜日。この日は、年間通しても11日しかない「アメリカ全土の祝日」(Federal Holidays)の一つであり、全米で祝う。

BLMの先駆け的存在であるキング牧師の写真を背景に、演説するNYのアダムス市長。
BLMの先駆け的存在であるキング牧師の写真を背景に、演説するNYのアダムス市長。写真:REX/アフロ

「〜の日」になった日系人は?

次に、日系人の功績を讃えた「〜の日」として筆者の頭に浮かぶのは「フレッド・コレマツの日」だ。

日系の人権活動家で公民権運動の先駆者、フレッド・コレマツ(Fred Korematsu、是松豊三郎)は、第二次世界大戦下で全財産を没収され強制収容所に送られるなど国に不当に扱われた日系人の一人だが、強制収容について彼は最後まで「間違い」と言い続け、謝罪を求め国と闘ってきた。1998年には民間人に与えられる最高位の大統領自由勲章を受章。その死後、1月30日の生誕日が「フレッド・コレマツ・デー(Fred Korematsu Day of Civil Liberties & Constitution、市民の自由と憲法のフレッド・コレマツの日)」と定められた。アメリカでアジア系米国人にちなんで名付けられた初の記念日である。

休日にはなっていないが、カリフォルニア州を始め、ハワイ州、ニューヨーク市、ニュージャージー州など少しずつ制定する地域が増えていて、コレマツ氏の生涯が紹介される動きが広がっている。

「間違いは間違い」と生涯言い続けた日系人の人権活動家「フレッド・コレマツの日」 ─ 全米各地で

ロサンゼルスの大スター、大谷選手。大谷翔平の日は彼の背番号17番にちなんだ。
ロサンゼルスの大スター、大谷選手。大谷翔平の日は彼の背番号17番にちなんだ。写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

ほかにも探せば、「バラク・オバマの日」(イリノイ州で8月4日、アラバマ州ペリー郡で11月の第2月曜日)がある。また非公式で「マイケル・ジョーダンの日」(ファンの間で背番号にちなんで2月3日や国外では3月2日)や「エルヴィス・プレスリーの日」(2月25日)なんていうのもある。

このように「〜の日」として選ばれているのはいずれも歴史に残る重要人物であることは間違いない。ロサンゼルス市という全米屈指の大都市にアンジェリーノ(ロスっ子)代表として選ばれた大谷選手は、紛れもなく同市公認の「生きる伝説」になったということだろう。

(Text by Kasumi Abe)無断転載禁止

ニューヨーク在住ジャーナリスト、編集者

米国務省外国記者組織所属のジャーナリスト。雑誌、ラジオ、テレビ、オンラインメディアを通し、米最新事情やトレンドを「現地発」で届けている。日本の出版社で雑誌編集者、有名アーティストのインタビュアー、ガイドブック編集長を経て、2002年活動拠点をN.Y.に移す。N.Y.の出版社でシニアエディターとして街ネタ、トレンド、環境・社会問題を取材。日米で計13年半の正社員編集者・記者経験を経て、2014年アメリカで独立。著書「NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ」イカロス出版。福岡県生まれ

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