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移動性高気圧が次々に通過 東京の真夏日の期間と10月の台風

饒村曜気象予報士
【都市風景】神宮外苑イチョウ並木(写真:イメージマート)

移動性高気圧が通過

 大陸育ちの移動性高気圧が次々に通過しています。

 高気圧と高気圧の間では、雲が多くなって雨の所もありますが、ほとんどの所は湿度が低い、さわやかな晴天の所が多い状態が続いています(図1)。

図1 移動性高気圧の天気図と気象衛星画像(10月12日15時)
図1 移動性高気圧の天気図と気象衛星画像(10月12日15時)

 10月12日に気温が一番高かったのは、沖縄県・波照間の30.9度で、沖縄県の8地点(気温を観測している全国914地点の約1パーセント)で最高気温が30度以上の真夏日となりました。

 夏日は162地点(約18パーセント)であり、10月13日は100地点程度、10月14日は40地点程度となる見込みです(図2)。

図2 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~10月14日、ただし10月13日と14日は予想)
図2 夏日、真夏日、猛暑日の観測地点数の推移(5月1日~10月14日、ただし10月13日と14日は予想)

 今年、令和5年(2023年)は、9月まで記録的な暑さが続き、各地で暑さに関する記録更新が相次ぎました

 東京の最高気温は、6月下旬以降平年値より高い状態が続いており、猛暑日が22日、真夏日が90日、熱帯夜が57日と、暑さに関する主要な3つの指標(猛暑日、真夏日、熱帯夜)のすべてで新記録となりました(表)。

表1 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は10月12日まで)
表1 東京の猛暑日、真夏日、熱帯夜の年間観測日数(令和5年(2023年)は10月12日まで)

 記録的な暑さとなった今年ですが、10月23日の彼岸の中日(秋分の日)頃を境に、最高気温が30度以上の真夏日、最高気温が25度以上の夏日が大きく減っていますが、減って、平年並みです。

東京の真夏日の期間

 今年の東京の最高気温の推移をみると、5月15日に最高気温31.6度を観測して今年初の真夏日となり、7月10日には36.5度を観測し今年初の猛暑日となりました(図3)。

図3 東京の最高気温と最低気温の推移(10月13〜19日は気象庁、10月20〜28日はウェザーマップの予報)
図3 東京の最高気温と最低気温の推移(10月13〜19日は気象庁、10月20〜28日はウェザーマップの予報)

 東京は6月下旬以降平年値より高い状態が続いており、7月26日には37.7度と今年の最高気温を記録しました。

 最高気温が平年値より高い状態は、台風13号が接近して雨となった9月8日に25.2度を観測するまで続きました。

 今後の最高気温の予報から、9月28日の最高気温33.2度をもって、今年最後の真夏日になりそうです。

 記録的な暑さとなった今年ですが、早い真夏日、遅い真夏日などの記録は更新していません(表2)。

 東京は、明治8年(1875年)6月5日以降の気象観測がありますが、一番早い真夏日は昭和34年(1959年)の5月5日で、今年は、5月17日と7位になります。

 また、一番遅い真夏日は平成25年(2013年)の10月12日で、今年は10位以下です。

 つまり、長い観測の歴史の中には、いろいろな条件が重なって、ポツンと暑い日が出現し、ランキング上位に入ることがあるのですが、今年の暑さは、暑い日が継続して続いたというということで多くの記録を更新した暑さでした。

10月の台風

 大型で猛烈な台風15号(中心気圧が900ヘクトパスカル)が小笠原近海を北東進しています(図4)。

図4 台風15号の進路予報と海面水温(10月13日0時)
図4 台風15号の進路予報と海面水温(10月13日0時)

 台風15号は早い速度で日本から離れますが、海面水温が台風が発達する目安の27度以上という海域を進むため、極端に衰えることなく、アリーシャンの南で中心気圧が935ヘクトパスカルの非常に強い台風から、中心気圧が952ヘクトパスカルの発達した温帯低気圧に変わる見込みです。

 平年値から見ると9月末までの台風発生数は、18個から19個ですので、現時点の台風発生数15個というのは、かなり少ない発生数です(表)。

表3 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)
表3 令和5年(2023年)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)

 特に9月の発生数が少なく、9月の2個発生は、昭和26年(1951)、昭和48年(1973)、昭和58年(1983)と並ぶ、最少タイ記録でした。

 エルニーニョ現象の年は、台風の発生数が少なく、台風発生海域が南東側に移動するといわれていますが、春からエルニーニョ現象となった今年も、その傾向はありそうです

 なお、ラニーニャ現象が発生していた昨年、令和4年(2022年)は、台風の発生数が比較的多く、台風発生海域が北西側に移動していました。

 台風15号は上陸しないと考えられますが、10月はまだまだ日本の台風シーズンです。

 昭和26年(1951)から昨年までの72年間では、台風が212個上陸しており、月別にみると、8月が一番多く75個(平均1.04個)で、次いで9月、7月となっています(図5)。

図5 台風の月別上陸数(昭和26年(1951)~令和4年(2022))
図5 台風の月別上陸数(昭和26年(1951)~令和4年(2022))

 10月の上陸台風は18個(0.25個)と、4年に1回は上陸ということになりますが、図5の赤線で示したように、平成13年(2001)以降は、台風の上陸が遅くなり、9月や10月に上陸する台風が増えています。

 今年は、記録的な暑さの夏となるなど異常な年ですので、まだまだ台風に対して油断はできません。

図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:気象庁ホームページとウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図5、表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

表3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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