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梅雨明けと台風3号の持ち込む暖気で全国的な猛暑・各地で記録的な暑さの昨年を上回る熱中症警戒アラート

饒村曜気象予報士
熱中症のイラスト(提供:イメージマート)

続々と梅雨明けも大気不安定

 令和6年(2024年)7月22日、九州北部で梅雨が明けました。

 前日、7月21日には四国と近畿地方で梅雨が明けていますので、梅雨がないとされる北海道を除くと、現在、梅雨に入っているのは、北陸、東北地方だけです(表)。

表 令和6年(2024年)の梅雨入りと梅雨明けと平年の梅雨入り・梅雨明け
表 令和6年(2024年)の梅雨入りと梅雨明けと平年の梅雨入り・梅雨明け

 今年の梅雨明けは、太平洋高気圧が強まって梅雨前線を押し上げ、晴天が続くというタイプの梅雨明けではありません。

 梅雨前線が弱まるというタイプの梅雨明けです。中国大陸から朝鮮半島北部に伸びている前線が日本付近で不明瞭となっていますが、潜在的な前線が東北地方南部を通って、日本の東海上の前線につながっています(図1)。

図1 梅雨前線が弱まって梅雨明けしたときの地上天気図と衛星画像(7月22日15時)
図1 梅雨前線が弱まって梅雨明けしたときの地上天気図と衛星画像(7月22日15時)

 梅雨前線が弱まるというタイプの梅雨明けは、上空に寒気が入りやすいことや、下層に湿った空気が流入しやすいことなどから大気が不安定になるという特徴があります。

 今年も、梅雨明けをしたばかりの西日本から東日本でも、積乱雲が発達して局地的な雷雨が続いています。

 また、太平洋高圧の縁辺をまわるように、暖かくて湿った空気が流入し、強い日射が加わり、各地で気温が急上昇しています。

 7月22日に全国で一番気温が高かったのは、山梨県・勝沼の39.6度、次いで、甲府の39.4度、栃木県・佐野の39.1度と、3地点で39度を超えました。

 そして、最高気温が35度以上の猛暑日を観測したのが288地点(気温を観測している全国914地点の約32パーセント)と、今年最多でした(図2)。

図2 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(7月23日以降は予想)
図2 全国の猛暑日、真夏日、夏日の観測地点数の推移(7月23日以降は予想)

 また、最高気温が30度以上の真夏日は778地点(約85パーセント)で、前日、7月21日の822地点(約90パーセント)に次ぐ今年2番目の多さでした。また、最高気温が25度以上の夏日は900地点(約98パーセント)で今年最多でした。

 7月24日以降は、猛暑日や真夏日は減ると予想されていますが、夏日はほとんど減りません。横ばいです。

 6月上旬の夏日は、大陸からの高気圧に覆われての暑さで、乾いた暑さでした。

 しかし、6月末からは夏日といっても、太平洋高気圧に覆われての湿った暑さの夏日です。

 同じ気温でも、湿度が高いほど熱中症になりやすくなります。

熱中症警戒アラートと午後の雷雨

 気象庁と環境省は共同で熱中症警戒アラートを全国58地域(都府県毎、北海道・鹿児島県・沖縄県は細分)に対して発表しています。太平洋高気圧の縁辺を回るように暖湿空気が大気下層に流入し、強い日射とあいまって、7月22日は全国41地域で熱中症警戒アラートが発表となっています。41地域というのは今年最多です。

 そして、今年の累計の地域数が400を超えました(図3)。

図3 熱中症警戒アラートの発表回数(2022年・2023年と2024年の比較)
図3 熱中症警戒アラートの発表回数(2022年・2023年と2024年の比較)

 記録的に暑かった昨年、令和5年(2023年)でも、累計の地域数が400を超えたのは7月31日です。

それを一週間も早いペースで、熱中症警戒アラートが発表となっています。

 そして、7月23日も西日本から東日本太平洋側を中心としたの31の地域で熱中症警戒アラートが発表となっています(図4)。

図4 熱中症警戒アラートの発表地域と、暑さ指数31以上の地域
図4 熱中症警戒アラートの発表地域と、暑さ指数31以上の地域

 また、熱中症警戒アラートは発表されていなくても、暑さ指数31以上の危険な状態は、北海道まで及んでいます。

 熱中症警戒アラートや、暑さ指数が31以上の地域では、高齢者においては安静状態でも熱中症が発生する危険性が大きい暑さですので、外出はなるべく避け、涼しい室内に移動してください。

 大気下層に暖湿空気が流入すると大気が不安定となり、強い日射があると、昼過ぎからは積乱雲が発達しやすくなります。

 このため、熱中症に警戒するとともに、落雷や突風、急な強い雨にも注意が必要です。

 一方、フィリピンの東の台風3号は、発達しながら先島諸島に向かって北上中です。

図5 台風3号の進路予報(7月23日3時)と海面水温
図5 台風3号の進路予報(7月23日3時)と海面水温

 今週の沖縄県は、台風に対して厳重な警戒が必要ですが、その他の地方も、台風の進路によっては、台風周辺の暖かくて湿った空気が北上してきますので、猛暑や落雷、突風、急な強い雨に注意が必要です。

 最新の台風情報や気象情報に注意してください。

図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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