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台風15号が発生し、非常に強い台風となって小笠原諸島近海を北上 統計的に10月の台風は

饒村曜気象予報士
台風14号の雲(左)と台風15号の雲(右)(10月7日15時)

令和5年(2023)の台風

 令和5年(2023)10月7日15時、トラック諸島近海で台風15号が発生しました(タイトル画像)。

 平年値から見ると、9月末までの台風発生数は、18個から19個ですので、現時点の台風発生数14個は、かなり少ない発生数といえます(表)。

表 令和5年(2023)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)
表 令和5年(2023)の台風発生数と、台風に関する各種の平年値(接近は2か月にまたがる場合があり、各月の接近数の合計と年間の接近数とは必ずしも一致しない)

 特に9月が少ない発生数でした。

 台風の統計が作られている昭和26年(1951)から昨年、令和4年(2022)までの72年間で、9月に発生した台風の平均は4.9個です。

 しかし、今年の9月の台風発生数は2個と、昭和26年(1951)、昭和48年(1973)、昭和58年(1983)と並ぶ、最小タイ記録でした。

 エルニーニョ現象の年は、台風の発生数が少なく、台風発生海域が南東側に移動するといわれていますが、春からエルニーニョ現象となった今年も、その傾向はありそうです(図1)。

図1 令和5年(2023)の台風発生海域(丸数字は台風番号、台風8号は日付変更線を超えてた北太平洋西部に入ったことによる発生)
図1 令和5年(2023)の台風発生海域(丸数字は台風番号、台風8号は日付変更線を超えてた北太平洋西部に入ったことによる発生)

 南シナ海の非常に強い台風14号は、引き続き西進してトンキン湾で熱帯低気圧に変わる見込みですが、発生したばかりの台風15号は、発達しながらトラック諸島を西よりに進み、進路を北よりに変えてマリアナ諸島に達する見込みです(図2)。

図2 台風14号と台風15号の進路予報(10月7日21時)
図2 台風14号と台風15号の進路予報(10月7日21時)

 台風15号は、台風が発達する目安の海面水温27度を上回る29度以上の海域を進みますので強い勢力でマリアナ諸島に達したあとも発達し、非常に強い勢力で小笠原近海に進む見込みです。

10月の台風

 筆者は、以前、10月の台風進路について調査したことがあります。

 それによると、10月の南シナ海北部の台風は西進を続けるものが多いことから、台風14号も西進を続けてトンキン湾に進み、トンキン湾で熱帯低気圧にならなくても、インドシナ半島に上陸などして日本への影響はなさそうです(図3)。

図3 10月の台風の平均経路
図3 10月の台風の平均経路

 また、マリアナ諸島から小笠原諸島近海に北上してくる台風は、北上とともに東よりに向きを変えるものが多くなっています。

 つまり、統計的にいえば、台風15号は、気象庁が発表している10月12日より先は、次第に向きを東に変え、東日本には接近しないことになります。

 昭和26年(1951)から昨年までの72年間では、台風が212個上陸しており、月別にみると、8月が一番多く75個(平均1.04個)で、次いで9月、7月となっています(図4)。

図4 台風の月別上陸数(昭和26年(1951)~令和4年(2022))
図4 台風の月別上陸数(昭和26年(1951)~令和4年(2022))

 10月の上陸台風は18個(0.25個)と、4年に1回は上陸ということになりますが、近年は台風の上陸が遅くなっています。

 図4の赤線で示したように、平成13年(2001)以降は、台風の上陸が遅くなり、9月や10月に上陸する台風が増えています。

 ただ、今年は、記録的な暑さの夏となるなど異常な年ですので、台風15号の進路が10月の統計通りにはならないことも考えられますので、油断はできません。

 台風の進路予報は最新のものをお使いください

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供資料に著者加筆。

図1、図4の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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