温泉ライターの泉よしかです。

温泉ライターを名乗り始めた当初から、一番好きな温泉はどこですか？と聞かれることが増えました。そんな時、いつも答えていたのが山形県米沢市の「滑川（なめかわ）温泉 福島屋」です。

もう20年以上前になりますが、何度か湯治棟に連泊したことがあり、思い出補正もあって、とにかくお気に入りの一湯。

今回その滑川温泉を久しぶりに訪ねて、改めて今も変わらず良い湯、良い環境だと実感したので紹介したいと思います。

米沢八湯の一つ。峠駅から一本道を南へ

米沢市には小野川温泉、白布温泉、新高湯温泉、大平温泉、姥湯温泉、滑川温泉、五色温泉、湯の沢温泉からなる米沢八湯という8つの温泉地があります。このうち小野川温泉と白布温泉を除いた6湯はそれぞれ一軒宿で、中でも滑川温泉はマイカーでアクセスできるけれども、鄙びた秘湯らしい佇まいを色濃く残しているとして、多くの温泉ファンに愛されているところです。

滑川温泉に到着して、まず驚くのは宿のすぐ横を流れる川。滝になっている岩肌は、温泉成分で染まっているのかインパクトのある色をしています。

駐車場から坂を上がれば玄関。この辺りの雰囲気は、以前来た時と何も変わらないように思えます。

滑川温泉 福島屋の混浴を含む4つのお風呂

「滑川温泉 福島屋」には露天風呂2つ、内湯2つ、計4つのお風呂があります。このうち女性専用内風呂を除く3つが基本的に混浴（岩風呂露天風呂は女性専用タイムあり、檜風呂は宿泊者専用貸切タイムあり）。

温泉は自家源泉で3本あり、それぞれ上の湯源泉、中の湯源泉、下の湯源泉。お風呂ごとの組み合わせは、岩風呂露天風呂が上の湯+中の湯、檜風呂と女性専用浴場が上の湯単独、大浴場（混浴内湯）が上の湯+下の湯となっています。

泉質はいずれも含硫黄―ナトリウム・カルシウム―炭酸水素塩・硫酸塩泉ですが、源泉によって温度、pH、含有成分などが少しずつ異なります。

川を間近に見るダイナミックな岩風呂露天風呂（混浴）

まずもっとも自然を体感できる岩風呂の露天風呂から行ってみましょう。いったん建物の外に出て、川に沿って歩きます。

思わずため息の出るロケーション。これぞまさに秘湯の露天風呂です。

露天風呂は混浴ですが、男女別の脱衣所があり、バスタオル・湯あみ着着用可（洋服のような形状の湯あみ着や薄すぎる素材のものは不可）、別途女性専用タイムもあるので、男性でも女性でも比較的利用しやすい混浴となっています。

取材日の岩風呂のお湯はほぼ無色透明でしたが、日によっては白濁したり青みがかったりします。

底には白い湯の花がたくさんあり、温泉らしい情緒が満点でした。

貸切風呂にもなる檜風呂

檜風呂は福島屋の建物を出てすぐ。滑川大滝方面に向かう吊橋の隣にあります。余談ですが、20年前は檜風呂はありませんでした。だから筆者は今回が初入浴です。

少し階段を上って、檜の湯舟に入ります。右手に前川を見下ろすロケーション。昼間は混浴ですが、夕方以降（17:30～）は宿泊者専用の貸切風呂として使われています。

男性は入れない女性専用浴場（女湯内湯）

ここからは内風呂を紹介します。いったん建物の中に入り、階段を下ります。この磨き抜かれた木造の建物もノスタルジックで美しい。

女湯は半円形。他のお風呂が基本混浴であるのに対し、ここは混浴タイムや男性用タイムがないため、残念ながら女性しか利用できません。

お湯は檜風呂と同じ上の湯源泉を単独使用。この日は翡翠の原石のような薄い緑色でしたが、もっと色鮮やかな日もあります。

お湯の色も美しい大浴場（混浴内風呂）

何度か入った中でも、青みが美しいとため息をつくことが多いのが、混浴内風呂の大浴場。浴室の作りも湯治場風情に溢れていて、便利さよりもこのままの佇まいをいつまでも残してほしいと思ってしまいます。

浴室は混浴ですが、脱衣所は男女別になっています。女性専用タイムはありません。

この風情を味わいたければぜひ現地を訪れて

周辺に何もない秘湯の一軒宿ですが、だからこそ日常の疲れを落としてゆっくりお湯に入ることのできる環境。この風情を味わいたければ、ぜひ現地を訪れてみてください。
きっとお湯に入った瞬間、ふーっとため息とともに日ごろのしがらみも体から抜けていくと思います。

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