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新型コロナの感染予防、どの素材のマスクが最適? 布マスクやバンダナの効果は

堀向健太医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。
(写真:アフロ)

最近、さまざまなマスクを見かけるようになり、様々な布マスクも見かけるようになりました。

また、街中では口周りにバンダナを巻いたり、タートルネックのセーターを引き伸ばしたような衣服で口を覆っている方も見かけます。

はたしてこれらは、効果があるのでしょうか?

新型コロナの感染拡大を、マスクで抑える効果はある?

写真AC
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マスクの効果を疑問視する向きも一部には根強くあるようですが、それは、マスクが感染症の広がりを抑えるかに関する研究が、これまで多くはなかったためだったと、私は考えています。

しかし新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、このテーマに対する関心が高まってきました。

そして主に新型コロナウイルスに対するマスクの感染防御効果を検討した最近の研究によると、マスクを使用すると感染リスクが0.15倍になるということがわかったのです(※1)。

そして、マスクは『お互いの感染リスクを減らす』という視点からも重要であることもわかってきています(※2)。

Prather KA, et al. Reducing transmission of SARS-CoV-2. Science 2020.より引用
Prather KA, et al. Reducing transmission of SARS-CoV-2. Science 2020.より引用

(※1)Lancet. 2020;395(10242):1973-1987.日本語訳

(※2)Prather KA, et al. Reducing transmission of SARS-CoV-2. Science 2020.

新型コロナの多くは『飛沫感染』によって広がります

イラストAC
イラストAC

飛沫とは、『唾のしぶき』のことです。

新型コロナは飛沫といっしょにひとからひとへ感染していきますが、その飛沫を防ぐ必要があるのですね。

そのなかでもかなり細かくなって浮遊しやすくなった飛沫、『エアロゾル』からも感染する可能性が指摘されるようになりました(※3)。

マスクの素材が細かく織られている方が飛沫を捕まえやすくなることは想像しやすいでしょう。

しかし飛沫を捕まえる方法はそれだけではありません。

マスクは素材によっては静電気が蓄えられています(静電容量)。マスクを洗うと、蓄えられていた静電気の量が減り、機能が下がってくるという研究結果があります(※4)。つまり静電気が飛沫を捕まえるのです。

まとめると、素材の織り方によっても、素材の性質によっても、ウイルスがくっついた飛沫を捉える機能に差があるということです。

(※3)Irish Journal of Medical Science (1971-) 2020:1-2.

(※4)ACS Nano. 2020;14(5):6348-6356.日本語訳

布マスクやバンダナは飛沫を防ぐのに有効なのでしょうか?

最近、デューク大学の研究グループは、素材によって飛沫を捉える機能に差があるかを検討し結果を発表しました(※5)。

(※5)Science Advances 2020:eabd3083.

研究は、こんな方法で行われました。

暗い箱の中にレーザービームを当てながら、研究者は“Stay healthy, people(みなさん健やかに)”と話しかけました。

すると、飛沫が箱の中に飛び散ります。

そしていろんな素材のマスクをしたうえで、その飛沫をスマホのカメラで記録しコンピュータでカウントしたのです。

[YouTubeでその研究の様子を見ることができます]

検討の結果はこうなりました。

論文(※5)から引用(筆者翻訳・注釈)
論文(※5)から引用(筆者翻訳・注釈)

それぞれのマスクで、下に行くほど飛沫を捉える機能が高いと言うことになります。

でもこれだけだと難しいですね。

そこで、ざっくりいくつかのグループに分けてみましょう。

論文(※5)から引用(筆者翻訳・注釈)
論文(※5)から引用(筆者翻訳・注釈)

つまり、最も優秀だったのはN95マスクで99.9%、サージカルマスクは99%、飛沫を減らします。

論文(※5)から引用。N95マスク。
論文(※5)から引用。N95マスク。
論文(※5)から引用。サージカルマスク。
論文(※5)から引用。サージカルマスク。

一般的な使用方法であれば、サージカルマスクが使い勝手がよさそうですね。

一方で、それ以外の布マスクなどは少し効果が落ち、8割前後の効果になり、どれもだいたい同じくらいと言えそうです。

大きく効果が落ちるのは、『ニットマスク(毛糸で織ったマスク)』からです。たしかにスキマの多いニットマスクは、かなり飛沫を抑える効果が少なそうですよね。

論文(※5)から引用。ニットマスク。
論文(※5)から引用。ニットマスク。

そして、『バンダナ』は飛沫を抑える効果がさらに落ち、5割程度しか飛沫を捉えてくれません

論文(※5)から引用。バンダナマスク。
論文(※5)から引用。バンダナマスク。

そして『フリースのネックゲートル』は、むしろ『10%程度、飛沫を増やす』という結果になっています。

論文(※5)から引用。フリースのネックゲートル。
論文(※5)から引用。フリースのネックゲートル。
ネックゲートルのイメージ(いらすとや)
ネックゲートルのイメージ(いらすとや)

飛沫が増える…というと、なぜ?という方もいらっしゃるかもしれません。

この理由として、研究者は大きな飛沫をより小さな飛沫にばらばらにしてしまうためと考察しています。

マスクは感染のリスクを減らすために有効。でも熱中症のリスクも…

写真AC
写真AC

さて、この結果から私は、一般にはサージカルマスクが使い勝手が良いと感じていますが、入手が難しい場合は、少し効果は落ちますが布マスクも一つの方法だろうと思います。ただし、バンダナやネックゲートルは、ちょっと使えなさそうですね。

そして酷暑が続く現在、別の問題もあります。

マスクによる熱中症のリスクです。効果が高いマスクは熱をこもらせやすいともいえます(※6)。

環境省のリーフレットでは、2m以上の距離があればマスクを外して、こまめに水分を取ることなどが勸められています(※7)。

そして、マスクが特に日本小児科学会からは、『2歳未満のマスクは熱中症や窒息のリスクをある』ことが注意喚起されています(※8)。マスクを装着しないケースも考える、ということです。

熱中症予防情報サイト(※7)のリーフレットより。
熱中症予防情報サイト(※7)のリーフレットより。

(※6)Temperature 2020:1-11.

(※7)熱中症予防情報サイト(環境省)

(※8)乳幼児のマスク着用の考え方(日本小児科学会)

小さい子どもであれば、『咳エチケット』もひとつの方法です。

私は、マンガ家の青鹿ユウさんのイラストがとても好きで、おすすめできるなあと思っています。

青鹿ユウさんから許可をいただいて転載
青鹿ユウさんから許可をいただいて転載

マスクは素材も考えれば感染予防に役立ちます。しかし熱中症にも配慮してお互い配慮しながら科学的に使いましょう

写真AC
写真AC

マスクは、感染拡大予防に必要です。しかし科学的に『はずす機会も考えることができる』ともいえます。

感染予防対策は、『相手に心を配りながら』『自分自身も守る』という、お互いの思いやりから始まるのだろうと、私は思っています。

※2020/8/14 『ゲートルネック』を『ネックゲートル』に変更し、図にネックゲートルの例を挿入しました。

※2020/8/14 日本小児科学会のマスクを避ける推奨の記載に関し『2歳以下』を『2歳未満』に修正しました。

医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。大学講師。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療研究センターアレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5600人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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