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北欧ノルウェーでマインドフルネス会議、職場での瞑想導入へ向けて

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
職場で集中力を高め、幸福度を上げる手段として注目される呼吸(写真:アフロ)

世界保健機構によると、燃え尽き症候群の原因のひとつとして、職場環境があげられています。

自己批判的になり、仕事場で自分を見失いがちな現代。呼吸訓練で「今」起きていることに集中する「マインドフルネス」は、自分を大切にする手段として、どのように役立ってくれるのでしょか?

ノルウェーの首都オスロではマインドフルネス会議が開催され、北欧の専門家が集まりました。

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デンマーク・コペンハーゲン大学にあるメンタルヘルスセンターのガーデン代表は、自己批判やネガティブな思考の流れを、ヨガや瞑想には和らげる効果における研究結果を紹介。

職場でマインドフルネスを実践すれば、社員のストレスが減少するという効果はあります。しかし、「うちには、そんな時間はないから」、「わが社には向いていない」と、一部の社員に関心があっても、上司の説得が難しいという課題が、ノルウェー、スウェーデン、デンマークの関係者から指摘されました。  

会社に導入する勇気あるリーダーが必要

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スウェーデンのマインドフルネスセンターのカトリーネ・ビーバルグさん。スウェーデンでは、ストレスを原因とする職場での病欠率の高さが問題となっており、マインドフルネスはその解決案のひとつになると指摘。

「社員のモチベーション維持につながり、企業にとって大きな資産となります。けれど、導入には費用もかかるので、挑戦しようと一歩を踏み出す、勇気あるリーダーが必要になります」と話します。

職業支援機関で試験導入

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ノルウェーでは国の職業支援機関NAVで、職員のためのマインドフルネスを試験的に導入中。

NAVには、病気などの様々な理由で失業中の市民が集まり、悩みを聞く職員にはストレスが溜まりがちです。   

職場環境を改善する可能性があるとして、自治体からの支援で現在テスト中。研究者と共同し、「カセル(CASEL)モデル」という、自分に注目し、自分をより知ろうというプログラムを実践しています。

「私は荷物を背中に追いすぎていないか?」、「私は相手の話を聞いているか?」。自分の感情に以前よりも上手に向き合い、人間関係を向上させ、決断力があがる効果が期待されています。

マインドフルネスを職場に導入しようとしたマルデさんは、まずは同僚の説得から入りました。「それって、木と呼吸をするの?」と、困惑する同僚たちに、「まずは気軽にやってみて」と説得。

呼吸をすることに戸惑う人もいましたが、試してみると、「なんだかよくわからないけれど、すごく良かったわ!」というポジティブな感想が多かったそうです。

いつもは急いで時間に追われている母親の職員は、プリンターまで「ゆっくり歩く」ことで、肩の力が抜けることになったとか(「歩行瞑想」といわれます)。

「義務と感じないように、家で瞑想をしたかどうかは、聞かないようにしています。これは、強制ではなく、招待です」とマルデさん。

NAVの一部のオフィスでの試験導入なので、まだ結果は出ていませんが、会議の参加者は今後の報告に大きな興味を持っていました。

起動中の脳をオフする手段

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ノルウェー・オスロ大学で、アスリート選手や軍隊で働くパイロットなどのメンタルヘルスの研究とサポートをしているアンネシュ・メーランドさん。

飛行機の操縦士や世界で活躍する選手という特殊なグループを対象にした結果、マインドフルネス導入により彼らが仕事で出す成果が「下がる」ことはなかったと語ります。研究者の彼にとって、マインドフルネスが作業効率を下げるわけではないというデータは大事なものでした。

瞑想では浮かぶ考えを消そうとするのではなく、観察することに集中します。「『そういう風に考えるな』といっても、人は考えてしまうもの」と、マインドフルネスが若い選手にとってリラックスする手段のひとつになると話します。

「コンセントに何本もプラグが入っていたら、人間の心は疲れます。コンセントからプラグを全部抜いたほうが、ゆったりと休憩できるでしょう。マインドフルネス瞑想は、コンセントを抜くための手段ともいえます」。

マインドフルネスは、10分でもいいから毎日続けることによって、1年後には脳の構造に変化が出るとされています。1年を長いと思いますか?「体のトレーニングをずっと続けている選手たちからは、『え、たった1年だけで効果が出るの?スポーツだと何年もかかるのに』と驚かれる」とメーランドさんは笑いました。

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マインドフルネスのコンサルタントであり、過去IKEAに長年勤務していたスタッファン・イェプソンさんは、現在IKEAの一部のオフィスでの導入に携わっています。

自身は、仕事に追われながら、家族や人間関係が壊れ、酒に逃げて、燃え尽き症候群になり、マインドフルネスに救われたそうです。IKEAでのリーダーシップ・プログラムに、歩行迷走などを組み込んでいます。

「以前の私は、不安に常に襲われていました。マインドフルネスをすることで、不安は減らないけれど、意識的に不安を観察できるようになった」

「今、ネット上では、若い人はSNSにいたがり、このグループに属していなければ、自分はだめなのだと思っています。今後、高齢化とITの発達で、失業率はもっと上がるでしょう。人々の不安が高まる時、マインドフルネスがあれば、それでも良い人生を送ることは可能だと知ることができます」とイェプソンさんは話しました。

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一方で、北欧各国の職場でマインドフルネスを導入するためには、まだまだ課題がまだ残ります。

参加者の多くは、自分たちは関心があるが、どうすれば社員個人だけの問題だけではなく、会社の業務として上司や同僚に理解してもらえるか、もっとアドバイスや実例が欲しいという声がありました。

               

Photo&Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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