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最大の被害国は日本なのに現実逃避で批判浴びる―一方、若者達は「気候危機」に声を上げた

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
東京で行われた「グローバル気候マーチ」 撮影は筆者

  現在、スペインで開催中のCOP25(第25回気候変動枠組み条約締約国会議)。来年2020年から、温暖化防止の全世界的な取り組みであるパリ協定が、いよいよ始動するにあたり、CO2等温室効果ガスの大幅削減に向けた議論が行われている。こうした中、日本政府は会議が始まって早々に後ろ向きな発言で、批判を浴びた。一方、国内ではスウェーデンの少女グレタ・トゥーンベリさん(16)に触発された若者達が、温暖化防止のため、声を上げ始めている。

◯最大の被害国なのに現実から目を背ける

 地球温暖化はもはや未来の話ではなく、今そこにある「気候危機」だ。COP25ではドイツの環境NGO「ジャーマンウォッチ」が記者会見を行い、2018年、気象災害の影響が大きかった国のランキングを発表。そこで最大の被害国とされたのが、日本だ。西日本豪雨災害、猛暑、そして台風21号による被害、これらの災害による被害総額が少なくとも約358億ドル(約3兆8920億円)にのぼったことを、その選考理由としてあげている。

 COP25開催初日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、大量のCO2を排出する石炭火力発電を減少させていくことが急務と呼びかけた。だが、この翌日に、梶山弘志経済産業大臣は「石炭火力発電所は選択肢として残していきたい」と記者会見で発言。環境NGOでつくる「気候行動ネットワーク」(CAN)は、COP25 最初の「化石賞」を日本に与えるとした。化石賞は、温暖化交渉で後ろ向きとされる国々への批判として送られる不名誉な賞。COP会期中に何度か選定されるが、日本は今回、ブラジルやオーストラリアと共にCOP25最初の化石賞となった。

◯声を上げる若者達

 一方、今年9月の国連気候行動サミットでの演説が日本でも話題となったスウェーデンの少女で環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんに触発され、日本でも若者達が声を上げ始めている。COP25直前の先月29日、東京都・新宿で「グローバル気候マーチ」が行われ、若者を中心に約600人がデモ行進を行った。

 デモ主催団体の一つ「 Fridays for Future Tokyo」のメンバーで高校生の酒井功雄さん(18)は「(温暖化対策に後ろ向きな)政治家や経済界トップの皆さんは、温暖化の影響がより深刻になる未来には、お亡くなりになられているでしょうから、危機感がないのかも知れませんが、僕達若者はこれからの何十年もの人生が奪われようとしています。これは不公平だと思います」と語った。

 温暖化を促進させてきた年配の世代のツケを、子どもや若者達が、自身の生活や命で支払うことになることは、おかしいのではないか―トゥーンベリさんが主張する「気候正義」は、日本の若者達にとっても、他人事ではない。

◯温暖化防止の流れは止められない!

 温暖化を止めるため立ち上がったのは、トゥーンベリさんだけではない。現在公開中の映画『気候戦士』(カール・A・フェヒナー監督)は、温暖化対策に後ろ向きな米国政府を提訴したヒップホップ・アーティストの米国先住民族の若者、科学者であり母親である人気ユーチューバー、孫の世代のためCO2排出が実質ゼロである代替燃料に取り組む発明家などの活動を紹介している(映画公式サイト)。温暖化防止を求める世界の流れは、例え、トランプ米国大統領であっても止められるものではないのだ。

 日本がより真剣に温暖化対策に取り組むべきなのは、他でもない、日本の人々自身のためだ。国連や他の国々、環境NGOなどから批判されるからではなく、私達、日本の人々の命運を左右する問題に対し、日本政府がどう向き合うのか、このCOP25開催中に、しっかりと見ておく必要がある。

(了)

 以下、先月29日に東京で行われた「グローバル気候マーチ」の写真。撮影は全て筆者によるもの。

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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