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ダルビッシュ投手も、伊代表フレッチャー選手も……なぜ海外から来ると日本のラーメンを食べたくなる?

中島恵ジャーナリスト
ダルビッシュ有投手(写真:CTK Photo/アフロ)

3月13日、WBC日本代表(侍ジャパン)のダルビッシュ有投手が東京・中野にある家系ラーメン店『ラーメン箕輪家』を宇田川優希選手、大勢選手ら数名とともに訪れたことが話題になっている。

また、16日、準々決勝で日本チームと対戦するイタリア代表のデビッド・フレッチャー選手も15日の会見で、福岡発で都内にも店舗があるラーメン店『一風堂』を訪れたと言及した。

日本のすばらしい食事

フレッチャー選手は米エンゼルスの同僚、大谷翔平選手にも「一風堂でラーメンを食べた。餃子も美味しかった。クラブハウスでの食事も美味しい。日本のすばらしい食に囲まれている」と連絡。通訳の水原一平氏に予約を取ってもらい、「寿司を食べに行く」ことも明らかにした。

13日には佐々木朗希投手が、死球を当てたチェコのエスカラ選手への謝罪としてロッテのお菓子を持参したことも話題となるなど、今回のWBCでは何かと「日本の食」への関心が高まっている。

チェコ選手だけじゃない 「日本のお菓子は世界一美味しい」と訪日外国人が賛美する理由

むろん、日本の食事がとても美味しいからであり、彼らがそれに素直に感動しているからだが、それにしてもなぜ、海外からやって来ると、日本のラーメンを食べたくなるのだろうか?

海外にも日系のラーメン店はあるが……

ダルビッシュ投手はラーメン店を訪れた理由について、「アメリカには、日本にあるような本格的なラーメン店がなかなかないので、日本に来たら食べたいな、というのがあった。次はいつ帰ってこられるかわからないので」と話している。

アメリカにも、もちろん日本のラーメン店は多数あるが、日本のように至るところに店舗があるというわけではない。それに、アメリカにも本格的なラーメンはあるとはいえ、日本とまったく同じ味を求めることは難しいかもしれない。

遠征など移動も多いダルビッシュ投手にとって、ラーメンはまさに日本でなければ食べられない故郷の味で、どうしても食べたかったのだろう。

フレッチャー選手が訪れた『一風堂』は積極的に海外展開しており、中でも米ニューヨークには最も早い2008年に進出しているが、同様の理由で、そう頻繁には食べられない。

そして、何より、海外から見ると、「ラーメンといえば日本が本場」という認識が広まっていることも、海外からやってきた選手が「せっかく日本に来たので、日本で美味しいラーメンを食べたい」という動機に繋がっているのではないだろうか。

日本で本場のラーメンを食べたい

これは選手に限らず、海外からやってきた訪日外国人観光客にとっても同様のことがいえる。

筆者がよく取材している中国人観光客の多くも、「日本に行ったら、ぜひ日本で“本場のラーメン”を食べてみたい」と話す。

他の国からやってきた人々同様、中国人にとっても、ラーメンの本場は「日本」なのだ。

かつては「寿司、刺身、天ぷら」が日本料理の定番だったが、2015年の「爆買い」ブーム以降、SNSの普及により日本の情報が増え、ラーメンの人気が急上昇した。

昨今は「焼き肉」も大人気な「日本料理」のひとつだが、値段が手ごろなのに、スープや具材にこだわった日本のラーメンは「日本で最も食べたい料理」の筆頭といえるほど人気が高まっている。

とくに人気なのは豚骨ラーメンだ。

ラーメンといえば豚骨味

中国に進出している日本のラーメン店は、前述の『一風堂』のほか、熊本の『味千ラーメン』など豚骨味が多く、馴染みがあるからだ。

しかし、現地で普段からそれらを食べている人々も、なぜか日本に来たら、「日本で本場の豚骨ラーメンを食べたい」という気持ちになる。

アメリカにも日本からほかに『一蘭』などのチェーン店や、単独で出店している店など多くの日系ラーメン店があるが、その多くもなぜか豚骨ラーメンだ。

先日、中国から来日した友人は、以前日本に数年間住んでいたことがあった。久しぶりに日本で何を食べたいか、と聞いてみたところ、間髪入れずに「ラーメン。そして、牛丼!」という答えが返ってきた。

現地には高級な懐石料理店、寿司店もたくさんできているのに、なぜか、日本で食べてみたいのはラーメンだ。そして、やってみたいのはラーメン店ののれんをくぐり、カウンターに座って、ずずーっとラーメンの汁を飲み干すこと、なのだという。

WBCの試合が日本で行われるのも、残りわずか。ぜひ多くの外国人選手に日本の味、ラーメンを堪能して、日本の美味しい食事を記憶にとどめてほしい。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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