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【KHL】航空機事故でチーム全員37人が亡くなったヤロスラブリで生まれ育った20歳のGKがMVPに!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
地元ヤロスラブリ出身のGKイリヤ・コノバロフ(Courtesy@MHL_rus)

 ロシアをはじめ7か国の25チームが加盟する KHL(コンチネンタル ホッケーリーグ)のレギュラーシーズンは、9月1日に開幕してから全日程(775試合)の3割近くを戦い終え、中盤戦を迎えます。

▼KHLの連勝記録まで「あと2つ」

 ここへ来て注目が集まっているのが、アフトモビリスト エカテリンブルク

 昨季の得点王に輝いた ナイジェル・ダウズ(FW・33歳)が移籍加入した効果が表れ、総得点はリーグトップ(現地時間昨夜の試合終了時)

 攻撃の大黒柱ができたことで、開幕から「18戦全勝(延長戦での2勝も含む)」

 全25チーム中、最も多いポイント(勝点)をマークし、開幕ダッシュに成功しました。

 スカ サンクトペテルブルグが、昨季に樹立した「開幕13連勝」を更新したのに続いて、同じく昨季のサンクトペテルブルグが打ち立てた(開幕からに限らず)レギュラーシーズン20連勝というKHL記録にも、「あと2つ」まで迫っているだけに、「記録更新なるか!?」と現地のファンの注目が集まっているようです。

<追記>記事公開後現地16日夜の試合でエカテリンブルクは、バリス アスタナに 1-2 のスコアで敗れ、KHL記録更新はなりませんでした。

▼20歳のGKが最強チーム相手に完封勝利!

 一方、チームではなく、選手の中で大きな注目が集まっているのが、ロコモーティブ ヤロスラブリの イリヤ・コノバロフ(GK・20歳)です。

生まれ育ったヤロスラブリのチームでKHLデビューを飾ったイリヤ・コノバロフ(Courtesy:@rznved)
生まれ育ったヤロスラブリのチームでKHLデビューを飾ったイリヤ・コノバロフ(Courtesy:@rznved)

 9月8日に配信した当サイトの記事で紹介したように、コノバロフはヤロスラブリの出身。

 故郷のトップチームでプレーする姿を夢見て腕を磨き続けたコノバロフは、昨季のジュニアリーグ(MHL)で優勝の立役者となり、プレーオフMVPを受賞した働きを評価され、念願かなって(KHLの)ヤロスラブリの一員に!

 一足早く昨季のレギュラーシーズン中盤に、KHLへ(短期間)昇格した際も初先発に抜擢され、オーバータイムに及ぶ接戦を守り抜き初勝利を達成!

 その後も好セーブを続け、今季は開幕ロースター入りを果たし、誰もが認めるKHLプレーヤーの仲間入りを果たしました。

▼ベストGKに選出!

 開幕当初こそ、ソチ オリンピックでチェコ代表のGKを務めたアレクサンダー・サラク(31歳)が、チームの守護神を務めていましたが、シーズンが進むにつれて形勢逆転。

 コノバロフは、ヤロスラブリの守護神の座を託されるようになったのです。

 そんなコノバロフの大きなアピールとなったのが、10日(現地時間)に、ピョンチャン オリンピックの金メダリスト パベル・ダツック(40歳・FW)や、ゴールネットを突き破るほどの強烈なシュート(時速165.98キロ)が武器 パトリック・ハースリー(DF・32歳)ら、KHL屈指のタレントが揃う スカ サンクトペテルブルグ相手に完封勝利を達成!

 ホームアリーナのサンクトペテルブルグで、3季ぶりのシャットアウト負けを味わわせるなど、先週に出場した試合は3戦全勝! 

 3試合でわずか2得点しか許さなかった大活躍を評価され、ウィークリーMVP(=週間最優秀選手・GK部門)に選ばれました!!

 

▼地元の試合は全て勝ちたい!

 このように高い評価を受けたコノバロフですが、気を緩めることなく、地元メディアの前で、このようなコメントを口にしたそうです。

「地元(ヤロスラブリ)の試合は全て勝ちたい」

 ヤロスラブリの選手、コーチ、チームスタッフ37名が搭乗した飛行機が離陸に失敗し、乗員8名を含む45人全員が亡くなる大惨事となった航空機事故から、先月7日で7年が経ちました。

 自らが憧れていたヤロスラブリの選手たちが亡くなってしまったショックを乗り越え、チームの守護神として憧れられる側になったコノバロフは、いつもこのような言葉を口にしているそうです。

「地元の試合は全て勝ちたいと思っている。昔のボクみたいに、子供たちはいいプレーを見て、チームが勝つことを強く望んでいるはずだから」

 

 ヤロスラブリで生まれ、ヤロスラブリのジュニアチームで腕を磨いてきた20歳の守護神は、これからもヤロスラブリの人たちへ勝利をプレゼントしていくでしょう。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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