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【KHL】チーム全員37人が亡くなった航空機事故から7年 悲しみに暮れた町に新たなヒーローが現れた!

加藤じろうフリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家
ホームアリーナで行われた追悼セレモニー(Courtesy:@DuaneAAA)

 今から7年前の2011年9月7日(現地時間/日本時間8日)

 創設4季目の開幕を迎えて間もない KHL(コンチネンタル ホッケーリーグ) のチームを、悲劇が襲いました。

 工業の街として繁栄を続けて来たロシア東部の都市をホームタウンとする ロコモーティブ ヤロスラブリの選手、コーチ、チームスタッフ37名が搭乗した飛行機が離陸に失敗。

 乗員8名を含む45人全員が亡くなる大惨事となりました。

▼「忘れてはならない日」は試合を行わない

 悲劇が起こった「2011年9月7日」を、KHLは「忘れてはならない日」だとして、翌年からヤロスラブリに限らず、全てのチームの試合を9月7日には開催せず、哀悼の意を捧げてきました。

 その一方で、今年もヤロスラブリでは追悼セレモニーが催され、現役選手やチームスタッフに加え、地元の多くのファンが参列。

 改めて「忘れてはならない日」を痛感する一日になったようです。

7年前の航空機事故で亡くなった選手らを悼むヤロスラブリでの追悼セレモニー(Courtesy:@hclokomotiv)
7年前の航空機事故で亡くなった選手らを悼むヤロスラブリでの追悼セレモニー(Courtesy:@hclokomotiv)

▼「忘れてはならない日」に試合を開催!

 ところが、今季はヤロスラブリの試合こそ開催しなかったものの、KHLは「次のステップへ向かう時期が来た」として、6試合を開催しました。

 とは言っても、チームも、選手も、そしてファンたちも、「忘れてはならない日」の意味を分かっているだけに、他チームのホームのアリーナにもヤロスラブリのロゴが掲げられ、哀悼の意が表されました。

▼ともに戦い続けるオベチキン!

 さらには、ロシア生まれで、自らも前身のスーパーリーグ(当時のロシアトップリーグ)や、KHL(デイナモ モスクワ=NHLのロックアウト期間中)でプレーしたキャリアを誇る アレックス・オベチキン(FW・32歳・ワシントン キャピタルズ)に至っては、ジャージ(=ユニフォーム)の中に着用する防具(下の写真)に、自らの背番号8とともに、ヤロスラブリのロゴマークを入れて、ずっと使い続けているとのこと。

ヤロスラブリのチームロゴを入れた防具を使い続けているアレックス・オベチキン(Courtesy:@russianmachine)
ヤロスラブリのチームロゴを入れた防具を使い続けているアレックス・オベチキン(Courtesy:@russianmachine)

 昨季のコンスマイス トロフィー(プレーオフMVP)を受賞し、あらゆるスポーツの中から最優秀アスリートに選ばれた男は、亡くなったヤロスラブリの選手たちとともに、ずっと戦い続けているのです。

▼新たなヒーローが現れた!

 このように数多くの人たちからエールが送られているヤロスラブリに、新たなヒーローが現れました!

イリヤ・コノバロフ(GK・20歳)です。

ヤロスラブリの新たなヒーロー!(Courtesy:@bublbbb)
ヤロスラブリの新たなヒーロー!(Courtesy:@bublbbb)

 昨季のレギュラーシーズン中盤にジュニアリーグのチームから昇格し、11月17日に初先発に抜擢されると、オーバータイムに及ぶ接戦を守り抜き、KHL初勝利を達成!

 その後も好セーブを続け、今季は開幕ロースター入りを果たしたGKです。

 ヤロスラブリには、ソチ オリンピックでチェコ代表のGKに選ばれたアレクサンダー・サラク(31歳) が在籍しているため、コノバロフの役割は、バックアップ(連戦が続いた際の先発や、メインGKの調子が良くない時の2番手)となりますが、地元ファンからの声援はチームの中でも三本の指に入るという人気者!

▼人気の理由は?

 もっともそれもそのはずで、コノバロフはヤロスラブリで生まれヤロスラブリのジュニアチームで腕を磨いてきた地元ファンの期待の星!

 大きな期待を受けて、「忘れてはならない日」の前夜に行われたホームゲームで、今季初先発を託されると、相手チームが放った27本のシュートを2点に抑えて勝利の立役者となりました!

▼昔のボクみたいに

 試合後にメディアの取材を受けたコノバロフは、開口一番「ヤロスラブリ(のホームゲーム)で勝てたのがうれしい」と笑顔を見せていたとのこと。

 さらにコノバロフは、こんな言葉を続けたそうです。

「地元の試合は全て勝ちたいと思っている。昔のボクみたいに、子供たちはいいプレーを見て、チームが勝つことを強く望んでいるはずだから」

 守護神と呼ばれるには、まだまだ腕を磨き続けなくてはならないとは言え、チーム全員37人が亡くなった航空機事故から7年。

 悲しみに暮れた町に、新たなヒーローが現れたようです。

フリーランススポーツアナウンサー、ライター、放送作家

アイスホッケーをメインに、野球、バスケットボールなど、国内外のスポーツ20競技以上の実況を、20年以上にわたって務めるフリーランスアナウンサー。なかでもアイスホッケーやパラアイスホッケー(アイススレッジホッケー)では、公式大会のオフィシャルアナウンサーも担当。また、NHL全チームのホームゲームに足を運んで、取材をした経歴を誇る。ライターとしても、1998年から日本リーグ、アジアリーグの公式プログラムに寄稿するなど、アイスホッケーの魅力を伝え続ける。人呼んで、氷上の格闘技の「語りべ」 

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