ドコモ・au・SIMフリー同時発表。メーカーはどう乗り切ったか
4月7日、サムスン電子ジャパンはGalaxyシリーズの発表会の中で、NTTドコモとKDDI、そして自社の新製品を発表しました。競合する製品を同時発表するにあたり、さまざまな工夫がみられました。
数年前まで、日本の携帯キャリアは大規模な発表会を開くのが恒例行事となっていました。すでにグローバルで発表したモデルも含まれるとはいえ、建て付けとしては納入先のキャリアによる新商品となるためです。
キャリアによる発表会では多数の製品を一度に発表するため、個々の製品にはなかなかスポットライトが当たりません。そこで端末メーカーは独自に発表会を開くことがありました。
その中でもサムスンは、独自の発表会の中でキャリアの新商品を発表するという試みを続けています。今回、発表会の開始にあわせてドコモとKDDI(au、UQ mobile)がプレスリリースを出していますが、これは1年前のGalaxy S21シリーズの発表会と同じです。
昨年との違いは、サムスンとしては国内初となるオープン市場向けモデル(SIMフリー)が加わったことです。キャリア向けとは異なる端末とはいえ、見方によってはキャリアビジネスと競合する存在です。そのせいか、今回の発表会は3つのパートに分かれていました。
(1)キャリアに依存しない製品紹介パート
(2)ドコモ、KDDIモデルの発売情報パート
(3)SIMフリーやタブレット製品の紹介パート
発表会を見ていると、パートの切り替えにはわずかな「間」がありました。筆者が確認した限りでは、サムスンは配信チャンネルを2つ用意していたようです。
・サムスンのチャンネルでは(1)(2)(3)を続けて配信
・ドコモ向けチャンネルでは(1)のみで終了
ドコモの公式Twitterアカウントがツイートしたのは、後者のチャンネルです。そのため、ドコモユーザーの中には(2)と(3)を見ていない人が一定数いるかもしれません。
1年前のGalaxy S21シリーズの発表会ではこうしたパート分けはなく、最初にKDDI、次にドコモの製品責任者がコメントをしています。ドコモの公式アカウントはこの動画へのリンクをそのままツイートしていました。
こうして見比べてみると、発表会のパートやチャンネルを分けることで、「キャリアの公式アカウントが他キャリアやSIMフリーの製品を紹介する」という気まずい事態を避けたかったのではないかと考えられます。
端末の外見にも違いがあり、ドコモ版は背面に大きくドコモのロゴが入っています。しかし発表会の(1)で使われていた端末にロゴはなく、KDDI版とみられます。SIMカードは設定されておらず、画面に通信キャリアの名前は出ていないなど、細かな配慮が感じられました。
SIMフリーで端末投入は続くか
これまでサムスンはキャリアビジネスを展開してきましたが、今回から自社で販売するSIMフリー製品が加わりました。発表会はうまく乗り切りましたが、問題はこれからどのように棲み分けていくのかという点です。
今回、キャリア向けにはハイエンドの「Galaxy S22」シリーズとミッドレンジのGalaxy Aシリーズ、SIMフリーはミッドレンジのGalaxy Mシリーズと、それぞれに投入するモデルを分けています。これは無用な摩擦を避ける1つのアイデアといえるでしょう。
これに続けて、ハイエンド機種のSIMフリー投入があるかは気になるところです。最近、モバイル業界で話題の周波数対応では、ドコモ版とau版のGalaxy S22が対応するプラチナバンドは分かれています。こうした「バンド縛り」を総務省は問題視しつつあります。
ソニーのXperiaシリーズように、サムスンのハイエンド機種についても各キャリアの主要な周波数を網羅したSIMフリーモデルを望む声が高まるかもしれません。