モンゴルで家畜が大量死 その原因「ゾド」とは
モンゴルで家畜の大量死
「世界一寒い首都」ウランバートルを持つモンゴル。緯度の高さはフランス・パリとそう変わらないにもかかわらず、シベリア大陸で冷やされた空気に包まれる冬は、マイナス数十度の厳寒な世界に閉ざされます。
このただでさえ寒さが厳しいこの国に、今冬は例年以上の寒波が襲っています。
【2月16日AFP】
「国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は15日、モンゴルが2年連続で「ゾド(dzud)」と呼ばれる厳しい気象に見舞われ、多数の遊牧民が家畜を失う破滅的な事態に直面していると発表し、国際的な緊急支援の要請に乗り出した。
当局の統計によると、「ゾド」が原因で死んだ家畜は2月上旬時点で少なくとも4万2546頭に上っている。またモンゴル国内の21県のうち、17県に暮らす15万7000人以上の人々が「危険」にさらされているという。」
「ゾド」の正体
ゾドとは、夏の乾燥した天候の後の、冬の厳しい寒さと大雪のことをさします。
ゾドが起きると、家畜は夏に十分な牧草を食べることができず、脂肪が蓄えられなくなるので、寒さに耐えられず多くが死に至ります。
それだけではありません。
国民の約40%が遊牧民であるモンゴルにおいては、家畜を失うことは財産をなくすのと同じなので、多くの人々の命や生活をも脅かすことになります。例えば2009年から2010年の冬に発生したゾドでは被害が77万人に及び、970万頭もの家畜が死んだと伝えられています。
2016−2017の天候
上のグラフは、ウランバートルの今冬の気温と、昨夏の気温および降水量を表しています。
今冬(2016年12月~2017年2月17日)は、連日平均以下の低温が続いています。先月には平均気温を15℃以上も下回るマイナス40℃を記録したほどです。
一方で夏場(2016年6~8月)は、例年よりも高い気温が続き、8月には平均を15℃以上上回る37℃を観測しています。降水量は少な目で、特に6月は平年の月間降水量よりも3割も少ない状況でした。
ゾドは増加している
近年ゾドは増加の一途をたどっているようです。モンゴル赤十字社事務総長によると、一昔前は12年に1度くらいのペースで発生していたものが、ここ30年間においては3.8年に1度の頻度で起きているといいます。
ゾドのもたらす社会問題
ゾドは首都ウランバートルにも、深刻な社会問題も引き越しています。
ゾドによって家畜を失った人々の多くは、遊牧生活をやめて町に出てくるといいます。しかし職が見つからず、生活はさらに困窮し、アルコール中毒や犯罪に手を染める人が出ているようなのです。