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全世界に海外渡航の自粛勧告、それでもJALとANAが飛ぶ海外の都市はどこ?【1:アメリカ】

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者
フランスのオルリー空港。一般のフライトはすべて中止となった。(写真:ロイター/アフロ)

それでも飛ぶJALとANA

日本はいよいよ、本格的に封鎖をしようとしている。

外務省は「すべての外国へ不要不急の渡航は、止めてください」と呼びかけている。

そして、3月31日、49カ国・地域に対して、「渡航中止勧告」(レベル3)=渡航は止めてください、に引き上げた。これで、世界の3分の1を超す73カ国・地域がレベル3となった。

3月末の時点で、JALは国際線の77%を、ANAは85%を運休する。なんとも壊滅的な状況である・・・。両社とも、2020年のオリンピックを見込んで、新しい路線の就航や便数の増加を予定して、攻めの姿勢だったのに。

しかしこんな状況なのに、それでもJALとANAが飛ぶ海外の都市が存在する。

日本封鎖、それでも飛ばす。政府も国交省も合意しているのだろう。

一体それは、どの国のどの都市なのだろうか。4月の大まかな状況を見てみた(コードシェア便除く)。

なんといっても、日本の最優先国と言えば、アメリカ。

アメリカはどうなっているかを「1」としてお伝えしたい。

ただし、事態はものすごい勢いで変わっている。

このタイトルの原稿も、何日か前に一度、数時間公表したのだが、書いている間に発表になっていた変更が反映されていなかったこと、筆者の不備がみつかって、取り下げた経緯がある。

まず、昨日4月1日昼頃に書いていた原稿を以下に発表したい。事態に合わせて全面書き直しをしていたら、記事が全部お蔵入りである。それほど変わっているのだ。

その後、事態は大きく変わったことは、最後に書き足した。

まず、ニューヨーク

アメリカと言えば、ニューヨーク。

ANAは通常1日2本飛んでいる。でも今は1本のみで、成田発便のみ、週3便となっている。

今もって運航している線では、このようなパターンがほとんどである。1日1本のみ、毎日ではなく減便して飛ばすという形だ。

JALも2本が1本のみになり、6割くらいが運航する。

ニューヨーク州は、3月22日から「可能な限り最大限」の自宅待機を義務づけるとともに、「必須でない」事業活動を禁止している。

しかし、トランプ大統領は28日、「強制的な移動制限を検討している」と記者団に語った。だが同日中に一転し、制限は「必要ない」とツイッターで表明。法的根拠が曖昧なことと、同州のクオモ知事が強く反発したためであるが、混乱している。

今後の状況次第で、フライト予定も変わってくるに違いない。

どこよりもカリフォルニア

意外に多いのが、ロサンゼルスである。

ANAは今でも、羽田から1本、通常運航で毎日飛んでいるのだ。減便もなしである。

JALも、羽田から1本が6割近く運航している。それだけではなく、関空発も週3日で飛んでいるのだ。毎日運航から減便しているとはいえ、ちゃんと飛んでいる。

世界中の都市で、いま一番日本のエアーが飛んでいるのは、ロサンゼルスに違いない。

それもそのはず、アメリカ本土だけを見れば、JALもANAも、通常ロサンゼルス便が一番多いのだ。両社とも1日3本、つまり計6本である(新規就航含む)。これにコードシェア便も足せば、もっと多くなる。

サンフランシスコへも、今そこそこ飛んでいる。

予定では両社とも1日2本、つまり計4本だ(新規就航含む)。今はANAは成田発1本のみを週7から週3、JALは羽田発1本を半分近く運航している。

ロスもサンフランシスコも、カリフォルニア州にある。さらに、同州ではロスに次いで2番めに人口が多いサンディエゴへも、JALが成田から週3で飛んでいる。

このように、日本のエアーは、カリフォルニア州に最もたくさん飛んでいる。残念ながら、同州のサンノゼ(ANA)は運休となっているが、それでも最も多い。

日本と西海岸の深い縁を感じさせる事実である。

ただ、カリフォルニア州は3月19日、州内の全住民(約4000万人)に、自宅待機命令を出している。今後の推移によっては、ここも飛べなくなるかもしれない。

アメリカの他の都市は?

首都ワシントンD.C.はどうだろうか。

運休している。でも、もともと日本のエアーは、ANAが1本飛んでいるだけである。きっと、アメリカのエアーが飛んでいるのだろう。

でも、アメリカの首都でロビー活動をしに行くのに、日頃からアメリカのエアーを頼っているのだろうか・・・観光客やビジネス客は多くなさそうなので、こんなものだろうか。

同様に、ヒューストン(テキサス州)も通常はANAが1本飛んでいるが、運休である。

その他、減便になっているが飛んでいるのは、ボストンとシアトルだ。

ボストンは、アメリカ最古の街の一つ。ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)などの学問の街、そして金融センターとしても、有名だ。通常はJALが1本飛んでいるが、今は週3便のみ飛んでいる。

シアトルは、通常はANAもJALも1本ずつあるが、今はJALが週3便飛んでいるだけである。

アメリカの中では、最も通常運航に近いのは、シカゴである。

内陸交通の要衝であり、ミシガン湖沿いに古くから鉄道・航空・海運の拠点として栄えてきた。

ANAは通常は2本飛んでいて、1本(羽田)は運休だが、もう1本(成田)は通常運航している。JALも羽田からの1本が、通常運航している。

意外なところでは、ダラス(テキサス州)に、JALが通常運航で1本飛ばしている。

通常運航しているのは?

このように、通常運航している便は、ほんのわずかである。

◎ANA

・ロサンゼルス便1本

・シカゴ便1本

◎JAL

・シカゴ便1本

・ダラス便1本

上記すべて、成田か羽田である。

ちなみに、地方空港から飛んでいるのは、アメリカ本土では関空からJALのロサンゼルス行きだけである(週3)。

ただこれには、訳がある。

3月29日から、JALもANAも時刻表が変わる。JALは夏時間割、ANAは盛夏前の春の行楽シーズン時間割といったところだ。これは新型コロナウイルスと全く関係がない。

両社ともこの日から、新しい路線を就航したり、大幅に羽田の発着便を増加させたりする予定だったのだ。オリンピックに合わせて万全の態勢を整えていたのだ。

羽田の国際線の発着枠は拡大した。都心に住む者にとって、成田は遠い(千葉県にある)。都内にある羽田のほうが、ずっと近くて便利である。

それに、羽田なら、日本の地方に乗り継ぎするのも便利である。世界からやってくるオリンピック選手団は、早めにやってきて地方でトレーニングすることが多い。このような需要にもあっている――はずだったのに。

両社とも、なんとか新しい路線は運航させようと、努力をしたように見える(飛びたくなくても飛ばないと、契約上何かまずいことがあるのかもしれないが)。細かいことだけど、記念すべき第一便のために用意した、せっかくの嬉しい特別プレゼントも全部ムダになってしまう。

通常運航扱いしているJALのシカゴ便とダラス便は、3月29日から成田発が羽田発に変わる、新路線なのだ。

その他にも、JALのロサンゼルス便は、今まで飛んできた成田1本は運休したのに、3月29日新たに増えた羽田発は6割近くを飛ばす。

JALのニューヨーク便は、今までは成田1本、羽田1本だった。3月29日より羽田が2本となった。これも、今まで飛んでいた古いほうの便を運休して、新たに羽田発になったほうを、6割くらい飛ばす。

このように、新しい路線のほうを飛ばそうとしているのだ。

事情は、ANAも同じである。

ワシントンD.Cやヒューストンは、今までは成田だったが、3月29日から羽田に移管した。

でも、4月1日から両方とも運休となっている。それでも、どちらも3月29日から31日までは飛ばしたのだ。シアトルも似たケースとなっている。

上述のものは「それでも飛ばした」新路線である。予定通りの就航を断念せざるをえず、延期にした路線もある。

本来なら、3月29日は、華々しいお祝いの日だったに違いない。空港はお祝いムードの、明るい高揚した雰囲気になるはずだった。

JALのほうは、シカゴ線とダラス線の第一便で、赤坂祐二社長が乗客に記念品を手渡すなどをした。ANAのほうは特別なことはせず、地上スタッフが手を振るくらいにとどめたようだ。

シカゴ線は244席で乗客は69人、ダラス線は195席で66人、ヒューストン行きは32人の乗客がいたという。

寂しい限りである・・・。

筆者は、数日前に原稿を書いた時は、航空会社に対してというよりも、「日本のフライト」政策に、批判めいたことも書いた。でも、そんな気持ちはすっかりしぼんできている。

今は「きっと回復する。しばらくの辛抱だ。ANA、JAL、どちらも頑張れ!」という気持ちになっている。

真夜中の驚き。JALの新たな運休予定

上記の記事を4月1日に仕上げて発表したかったのだが、0時をまわって4月2日になってしまった。

とにかく、路線のチェックが大変なのだ。

真夜中に再度チェックしてみて驚いたのは、JALが変更していたことである。

JALのニューヨーク線は、6割くらい4月30日まで運航するはずだったのに、16日から30日まで運休になっている。

それだけではない。改めて見てみると、JALのほぼ全便が、4月16日以降運休になっている(関空からの便は10日から運休)。

これは、明らかに何かのサインだと、筆者の本能が叫んでいる。

以下、書こうかどうか迷ったが、特にアメリカにいる方々に向けて書くことにする。

いつもは欧州に住んでいる筆者は、欧州便に関して、病気になると思えるほどのストレスをこうむった(詳細は「3月25日、日本が封鎖する運命(?)の日:コロナウイルス疲労困憊の物語」をご覧ください)。

欧州は、アメリカよりも早く危機になった。そこでの観察によると、JALのほうが止まるのが早く、ANAのほうが動いている。

でも、「JALが止まっても、ANAが当分動いているから大丈夫」と思って油断したのは、大きな間違いだった。新たな発表により、ANAも結局は止まってしまった。その発表から運休開始日まで、その間の余裕は数日しかなかった。

確かに、欧州とアメリカの事情は違う。欧州の場合、「パンデミックの中心は欧州」と言われる状況だった。日本側は一刻も早く閉じたかったのだろうが、オリンピック中止の決定まで出来なかったのだと思う。アメリカはそういう状況ではない。

でも、筆者は「家に帰りたい、母国に帰りたい」という外国生活者の気持ちが痛いほどわかる。だから思い切って私見を言う。

もし私がアメリカに住んでいて、日本に帰りたいがタイミングを決めかねている状態であるのなら――アメリカに自分の意志で留まりたいとか、事情があって留まらざるをえない、というのではないのなら、私ならどの州に住んでいても、4月15日の前に日本に帰る。

私にとっては「JALが4月16日以降、ほぼすべての便で欠航の発表」は、決定的な情報である。一般に手の届かない上のほうは、私達の知らないことを知っている。航空会社は「サイン」を発しているのではないかとすら思う。

それでもどうしても迷うのなら、私ならいつでも帰れるような準備をしておく。毎日ニュースを注意深く見て、外務省が発する情報を丹念に見て、運航状況も毎日チェックして、いざという時はすぐにでも出発できる態勢を整えておく。

別に戦争ではないので、日米間にまったく飛行機が飛ばなくなるわけではないかもしれない。日本のエアーが日米間に1本もなくなることは、ないかもしれない。それに、アメリカのエアーが少しは日本に飛び続けるかもしれない(日本人のためではない。「それでも家に帰りたい、母国に帰りたい」と思うアメリカ人のためだ)。

アメリカは広大なので、地域や州によって大きな差があるだろう。でも、その広大さが逆に不安の種となる可能性はある。ものすごく遠くの都市から飛行機が日本に飛んでいても、そこまでどうやって行くのかが問題になる可能性は、否定できない。

今の状況では、JALは4月16日以降もロスとシカゴで数便残している。まるで避難するための運航予定のような残し方だ。日本と最も縁が深いロスと、アメリカの空路と陸路の要所であるシカゴ。理にかなっているように見える。

今までは気楽に地球を半周していたのに、飛行機が飛ばないとなるやいなや、両国の果てしもなく長くて遠い、たどりつけない距離を感じた。

大陸ならば、どんなに遠くても車で帰る、歩いてでも帰る、という決心ができないわけではない。それに、陸のはるか向こうにつながっている感覚がある。でも日本は海に囲まれている。出るのも入るのも、飛行機が必須である。日本は島国であることを、これほど痛感したことはなかった。

これはあくまで、欧州の体験を経た筆者の私見であることを、何重にも強調したい。心からのメッセージではあるものの、申し訳ないが、読者の決断に責任は取れない。誰も、他者の人生に責任はとれない。

短期ではなく外国に住むというのは、厳しい人生の選択であったことは、外国に住んだことがある人ならわかるはずだ。当たり前の平和に疑問符がついた今、自分の決定が一層厳しい重みをもつことになっているのだと思う。

最新、かつ詳細な状況は以下のリンクをご覧ください。

JAL:<3月29日以降搭乗分>新型コロナウイルス肺炎の影響に伴う一部運休・減便・時間変更について

ANA:新型コロナウイルス感染拡大に伴う国際線路線・便数計画の一部変更について

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省機関の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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