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太陽に突入した探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」太陽フレアにより生じるコロナ質量放出を直接観測

パーカー・ソーラー・プローブ©NASA / Wikipedia

5月8日から連続で発生している太陽フレアにより、世界各地で観測されたオーロラが話題となっています。本記事では、史上初めて太陽に突入したNASA探査機をご紹介します。

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■1000度超の温度に耐えられる探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」

パーカー・ソーラー・プローブ©NASA / Wikipedia
パーカー・ソーラー・プローブ©NASA / Wikipedia

2021年にNASAの太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」が人類史上初めて太陽の上層大気、いわゆるコロナに突入したことが発表されました。

パーカー・ソーラー・プローブは2018年、大型ロケット「デルタ4ヘビー」に搭載され打ち上げられました。探査機そのものは乗用車ほどの大きさなのですが、太陽に到達するためには、火星到達の55倍、冥王星到達の2倍の打ち上げ力が必要となります。

パーカー・ソーラー・プローブも、金星などの惑星スイングバイを利用し、徐々に太陽に近づいていきます。太陽周辺では1370度程の高温にまで達しますが、厚さ約11.4センチの炭素複合材でできた太陽熱シールドにより高熱から探査機を守ります。

更に、搭載されている「ソーラープローブカップ」と呼ばれるセンサーは、太陽熱シールドの外に張り出して太陽の大気のサンプルを採集することで、実質的に太陽に「接触」することができます。

■遂に太陽に突入したNASA探査機

パーカー・ソーラー・プローブの観測画像©NASA / Wikipedia
パーカー・ソーラー・プローブの観測画像©NASA / Wikipedia

そして、打ち上げから3年後の2021年、8回目の太陽フライバイにおいて、表面から約1000kmの距離まで接近し、コロナへの突入に史上初めて成功しました。コロナとは、ここ最近世間を賑わせたウイルスの方ではなく、太陽の大気層です。

コロナは約2000km上空まで存在しており、その温度は100万〜300万度という非常に高温なガスでできています。それでは、なぜ上空のコロナの方が太陽表面よりも温度が高いのでしょうか。仮説の1つは、磁力線に沿って伝わるアルベン波がコロナまでエネルギーを運んでいき、そのエネルギーがコロナで熱に変わって温める、というものです。日本のJAXAが運用している太陽観測衛星「ひので」が、2007年にアルベン波を観測することに初めて成功しました。

そして、コロナは太陽の重力と磁場によって保持されている訳なのですが、ある程度離れると宇宙空間に流出し始めます。これが太陽風で、コロナから流出する高温のプラズマ流だったんですね。ちなみに、そのスピードは時速400〜800km/sにも達します。そして、コロナと太陽風の境界は、アルヴェーン臨界面と呼ばれており、内側がコロナとなります。

■大規模な爆発現象「コロナ質量放出」に突入!?

太陽表面で発生したプロミネンス©Wikipedia
太陽表面で発生したプロミネンス©Wikipedia

太陽は周期的に巨大な爆発現象を起こすサイクルを繰り返しています。この爆発は「太陽フレア」と呼ばれており、強力な電磁波やガスを放出するのです。また、フレアに伴い大規模な超高温プラズマが放出される「コロナ質量放出」が発生します。

2022年9月、探査機はコロナ質量放出にも突入し、脱出するまでの間の動画を撮影することに成功しました。このプラズマは最大で秒速3000kmもの速さに到達するとのことです。今回の観測では、秒速1350kmまで加速されたプラズマ粒子を観測することに成功。コロナ質量放出のメカニズム解明への手がかりになることが期待されています。

将来的に、探査機はいずれ推力を使い果たし、ミッション終了となる訳ですが、20年以内には太陽周辺の軌道を浮遊する状態になり、太陽系が消滅するまでそこにとどまり続けることになるだろう、とのことです。

パーカー・ソーラー・プローブの成功により、コロナに関する謎が今後解明されるかもしれません。今後の研究成果が楽しみですね。

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