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NISSANはなぜ環境メッセージをVRショールームのツアーで実現するのか?

いしたにまさきブロガー/ライター/アドバイザー
VR空間で実現する「日産アリアとめぐる環境ツアー」(画像提供:NISSAN)

NISSANといえば、10年前に世界初の量産電気自動車を発売した自動車メーカーです。それは今のように全世界で車の電動化(EV化)が言われるよりもずっと前のことでした。

また、先日公開された長期ビジョン「NISSAN AMBITION2030」の中でも、より電動化をすすめるために全固体電池を2028年に量産するということがすでに発表されています。

NISSANはいちはやく電動化をすすめた会社ですから、バッテリーにおいて他社よりも一歩抜きんでていることは理解していましたが、バッテリーに対して、ここまでの開発・生産能力を持っているとは正直思っていなかっただけに、この全固体電池に関する発表はとても驚きました。

では、なぜそこまで電動化・バッテリーに対して会社として踏み込んでいるのか。それは環境問題、なかでもカーボンニュートラルに対して強い危機感を持っているからなのでしょう。

そして、そんな中制作され、一般公開も予定されているのが「日産アリアとめぐる環境ツアー」なのです。

「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)
「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)

この話を進める前に、まずはNISSANがVRで構築したショールームの話をしておきましょう。

自動車とVRの相性のよさ

すでに公開されているようにNISSANは11月のはじめにVR空間に「NISSAN CROSSING」を公開しています。これは銀座にある実際のNISSANのショールームをVR空間に再現したものです。

そもそも自動車とVRは補完性の高い関係です。その理由としては、車というものが一般的に購入するものの中では、ほぼいちばん大きいサイズであるということに起因します。その大きさがあるが故に、例えば店頭で新車を買うにしても「あの色とこの色でその内装のやつ見せて」とか言ったとしても現物を見ることはできません。実際の様子などを確認できるのは購入後の納車時です。

それではいくらなんでもあんまりだということで、内装や外装などをVRで体験するようなことは少し前から各社ですすめられています。VRなら運転手の目線で車の内装をどう見えるのか?などということを再現するのは、今の技術であれば十分実現可能だからです。つまり、自動車業界では他の業界よりもVR化をすすめる必然性がありました。

また、現実のものをVR空間に持ち込む際には3Dデータが必須となりますが、今時の自動車であれば、当然のように設計段階から3Dデータを持っています。つまり自動車というリアルな物体はVR導入のハードルが比較的低いわけです。

とはいえ、実際のショールームをそのままVRで再現して、そこで何をするのだろうか?と思ってもいました。

ただ、そのリリースにはこんな一節がありました。

日産自動車、バーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」を公開

日産は、VRコミュニティの一員として、その普及を応援するとともに、既存の枠組みを超えた新たな情報発信に今後も取り組んでゆく予定です。

そして、その新たな情報発信の一端を見ることができたのが、プレス向けに先行で案内された「日産アリアとめぐる環境ツアー」でした。これも引用します。

日産自動車、メタバース上で体験する「日産アリアとめぐる環境ツアー」を制作

今回の「日産アリアとめぐる環境ツアー」は、「NISSAN CROSSING」から電気自動車「日産アリア」で出発して地球をめぐっていく、VRChat上で実施するツアー形式のイベントです。参加者はツアー参加を通して、深刻化する地球温暖化の影響を体感し、カーボンニュートラルに向けたアクションを一緒に考えることができます。

ツアーの内容についてはたしかに今やることに意義のある内容ではありますが、なぜそれをVR空間でNISSAN CROSSINGから開始するのだろうか?と思いつつ、ツアーに参加したのでした。

VR空間の特性を最大限に活用した環境ツアー

環境ツアーの冒頭はNISSAN CROSSINGの中を巡るのかと思いきや、ほぼいきなり北極と南極にとばされます。ここで大事なのは北極に行ってから南極に行くのではなく、半分が北極で半分が南極というVR空間に放り込まれるのです。お前は何を言っているんだ?とつっこまれそうですが、ホントにそうなのです。そして、これこそがVR空間ならではの演出になっているわけです。

つまり、そこには現実ではとても実現できない光景がありました。なにしろ、ホッキョクグマとペンギンが同じ空間にいるのですから。

「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)
「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)

「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)
「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)

そして、そこで体験できるのは、環境問題に向き合ってカーボンニュートラルに取り組まないとこういう未来があり得るのだぞという世界なのです。さらに繰り返しますが、それを北極と南極同時に見せてくれるのです。

北極と南極という2つの地球の極は基本氷の世界という意味では同じで、地球温暖化の影響が顕著に出る場所と予測されています。でも、同じ極で同じような温暖化の進行があっても、結果は同じにはならない。それを直感的に理解するためにはVR空間こそ最適な場所であったということなのです。

その後、ツアーの舞台は宇宙にも向かいます。そして、急に宇宙人のUFOに乗ることになってしまったかのような気分を味わいながら、資料や動画などを見ていきます。

「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)
「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)

そんな体験をしていると、自然と環境問題は地球全体の問題なのだなということを認識することができるようにもなっているのです。

「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)
「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)

そして、ツアーは最後にNISSAN CROSSINGに戻ってくるという構成になっています。もちろん、ただ戻ってくるわけではないですし、最後に仕掛けもあるのですが、その仕掛けについてはここではネタバレになってしまうので割愛します。しかし、この仕掛けも現実の銀座のNISSAN CROSSINGを再現したVR空間であるからこそやって意味のある演出になっていました。

「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)
「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)

「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)
「日産アリアとめぐる環境ツアー」、実際のVR空間での様子(画像提供:NISSAN)

時代が電動車(EV)の方にシフトしているのはたしかなことと言っていい状況でしょう。しかし、その背景に環境問題からはじめようという姿勢があることで、より製品に込められたメッセージを受け取ることができると思うのです。

そして、ここまで話をしてきたようにVR空間だからこそできることにフォーカスして、ツアーを組み上げたことを素直に称賛したいと思わせてくれたプレス向けツアーでした。

最後に。

こちらのNISSAN CROSSINGでの「日産アリアとめぐる環境ツアー」は、現在一般参加を募集しています。

このVR空間でないと味わえない環境メッセージツアーにご興味のあるみなさんはぜひリンク先の情報をご確認ください。1時間程度のツアーになるはずですが、そこには体験するだけの価値があります。ぜひ、ご体験ください。

ブロガー/ライター/アドバイザー

Webサービス・ネット・ガジェットを紹介する考古学的レビューブログ『みたいもん!』管理人。2002年メディア芸術祭特別賞、2007年第5回Webクリエーションアウォード・Web人ユニット賞受賞。「ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である(技術評論社)」「あたらしい書斎(インプレス)」など著書多数。2011年9月より内閣広報室・IT広報アドバイザーに就任。ひらくPCバッグ・かわるビジネスリュックなど、ネット発のカバンプロデュースも好調。 #カゲサポ

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