ブラジル中銀、きょうから年末まで約6兆円規模でレアル防衛の市場介入へ
ブラジル政府と中央銀行の急激なドル高・レアル安の阻止に向けた熾烈な戦いが始まった。先陣を切って、中銀は22日、最近の急激なドル高・レアル安の進行を阻止するため、今年末までの毎営業日(土・日・祝日除く)、先物市場での通貨スワップの入札を通じて、総額で600億ドル(約5.9兆円)の大規模なドル売り・レアル買いの介入を実施すると発表した。
為替介入は23日から実施され、毎週月曜から木曜までの4日間は先物市場で各5億ドル(約495億円)規模の通貨スワップ入札を実施し、週末の金曜にはスポット市場で10億ドル(約990億円)規模の買い戻し条件付きドル信用枠入札を実施するというものだ。また、中銀はこの為替介入プログラムの有効性が確認され場合には、さらに追加入札を実施するとしている。
この日、ジルマ・ルセフ大統領は、レアル防衛策を検討するため、大統領府にギド・マンテガ財務相とフェルナンド・ピメンテル開発商工相、アレシャンドレ・トンビニ中銀総裁のほか、国営石油大手ペトロブラスのグラッサ・フォスター総裁も呼び、国家金融審議会(CMN)を開催している。
会議では、ドル高・レアル安への対応策について意見交換したが、FRB(米連邦準備制度理事会)が第3弾量的金融緩和(QE3)策の段階的解除が9月のFOMC(連邦公開市場委員会)会合で決定すれば、ドル資金がブラジル国内から米国に還流し、ドル高の動きが加速するため、根本的なドル高・レアル安の阻止策を打ち出すことができず、結局、ペトロブラスが海外から輸入しているガソリンとディーゼルの末端販売価格の年内の値上げを了承するのにとどまっている。
ペトロブラスは国内で原油を生産しているものの、ガソリンやディーゼルなどの石油製品は海外から大量に輸入し、しかも国内のガソリンスタンド網を通じて、輸入価格を下回る低価格で小売り販売している。しかし、最近の急激なドル高・レアル安でガソリンとディーゼルの輸入コストが急上昇し、採算が悪化し、レアル安は輸出企業にとってはプラスだが、ペトロブラスにとっては死活問題となっている。このため、ペトロブラスは政府に対し石油製品の値上げを要請していた。
政府内部でもこのレアル安をめぐっては意見が割れている。ピメンテル商工開発相は20日、現在のドル/レアル相場を維持することが重要との認識を示している。同相は、「今のドル高・レアル安の相場水準はブラジル製造業の国際競争力を取り戻す上で必要だ。レアル安でも(輸入物価の上昇、そして)インフレ上昇への影響ない」としている。
レアル相場は今週初めの19日に1ドル=2.4レアルの大台を突破し、前日比0.83%のドル高・レアル安の1ドル=2.4159レアルと、2009年3月3日の2.441レアル以来の4年5カ月ぶりの安値となった。このため、中銀は20日の朝から断続的に通貨スワップ入札を実施し、計60億ドル(約5900億円)という大規模なドル売り・レアル買いの介入を行っている。この結果、レアルは一時、前日比1.24%のドル安・レアル高の1ドル=2.3840レアルに値を戻し、結局、0.83%のドル安・レアル高の2.3940レアルで大方の取引を終えている。しかし、21日も1ドル=2.436レアルと、ドル高・レアル安に歯止めがかからない状況となっている。(了)