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乗用車の普及率の現状を詳しくさぐる(2023年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
日常生活には欠かせない人も多い乗用車だが、駐車場の確保も維持費も大変(写真:イメージマート)

若年層の乗用車離れが世間ではたびたび話題に上っているが、多くの人にとって乗用車が必要不可欠な移動ツールであることに変わりはない。その普及率の現状を複数の視点で、内閣府の消費動向調査(※)の結果から確認する。

まずは全般的な世帯普及率。単身世帯は52.9%、二人以上世帯は80.5%。単身世帯、つまり一人身世帯では2人に1人ぐらい、二人以上世帯では5世帯に4世帯ほどが乗用車持ちとの計算になる。

↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主男女別)(2023年)
↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主男女別)(2023年)

必要度合い、さらには初期購入費用だけでなく、運用コストの負担(ガソリン代、駐車場代、そして車検代)を考えると、単身世帯の普及率が低いのは当然。特に女性の単身世帯は47.2%でしかない。

続いて世帯主の年齢階層別保有率。男女別とクロスした大別年齢階層区分と、より細かい年齢階層区分のデータが確認できるので、それぞれを基に別途グラフを作成する。

↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主男女別・年齢階層別)(2023年)
↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主男女別・年齢階層別)(2023年)

↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主年齢階層別)(2023年)
↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主年齢階層別)(2023年)

どの年齢階層でも単身世帯よりも二人以上世帯の方が普及率は高い。また、概して中年層(30~50代)の普及率が高めとなる。金銭的余裕や行動力の高さ、そして二人以上世帯では必要性の増加(子供の送迎、仕事への出勤)など、多様な要因がこの年齢階層での普及率を押し上げていると考えられる。

若年層、そして高齢層の動向では男性が単身世帯でもそれなりの普及率だが、女性が低い値に落ち着いている。「自分自身のための(単身世帯だから)移動手段」としての自動車への考え方の違いが表れているのだろうか。

次に世帯年収別普及率。なおグラフの表記上、一部の属性では「以上」を省略している。例えば「300~400万円未満」は「300万円以上400万円未満」を意味する。

↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯年収別)(2023年)
↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯年収別)(2023年)

二人以上世帯では「550~750万円未満」までは世帯年収とともに増加し、それ以降はほぼ横ばい。9割近くで実質的に飽和状態なのだろう。

気になるのは単身世帯。「300万円未満」で普及率が5割を切り、46.6%にまで下がる。必要性が薄く、さらに金銭的に維持できないのが理由と考えて間違いないが、厳しい現実でもある。とはいえ、必要のないものをコストを抱えながら保有するのは、無駄には違いないのだが。また高齢単身世帯の構成比率の高さが値を押し下げている可能性も多分にある。

最後に世帯主=該当世帯の居住地域別の普及率。

↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主居住地都市規模別)(2023年)
↑ 乗用車普及率(世帯種類別・世帯主居住地都市規模別)(2023年)

グラフ中項目にある「別掲大都市」とは大規模な都市を意味する。具体的には「札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、東京23区、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市」。「県庁所在地市」や「県庁所在地市以外」では、「別掲大都市」に含まれる市は除かれている。

乗用車が敬遠されているとか、若年層は乗用車に乗らないとの話に対し、地方では乗用車が生活必需品の場所も多いのでそのような話は都市部のみだ、とする反論もよく見聞きする。このデータの限りでは、それがある程度裏付けられる結果が出ている。人口5万人未満の市町村では、人口5万人以上の市よりも乗用車普及率が高い。

また人口5万人以上の市に限ると、上記にリストアップした「別掲大都市」の低さが目にとまる。とりわけ単身世帯が低い。もちろんこれは「大都市圏ほど公共交通網(バス、電車など)が整備されている」「乗用車を必要としない距離内に多様な施設がある」などの理由により、乗用車を保有する必然性が低くなるのが原因。またそれと同時にそのような大都市圏では、駐車場の確保には相当なコストがかかり、ランニングコストが底上げされてしまう。これもまた普及率の下落の一因ともいえる。

少子化、地方の過疎化と都心部への生活機構の集中化、ライフスタイルそのものの変化など、乗用車所有意向に関与する要素は多々あり、予想がつきにくい状況なのは否定できない。数年の単位で大きな変化が生じることはないが、少しずつ、確実に社会の変化に対応する形で、各属性別の値が変わっていくことは間違いあるまい。

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※内閣府の消費動向調査

今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することで、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査時期は毎月1回で、調査時点は毎月15日。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。

毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の普及・保有状況」を今件精査では用いている。これは「回答者の世帯において対象品目を回答時点(直近分の場合は2023年3月末時点)で持っているか否か」「持っている場合は保有数量はどれほどか」を尋ねた結果。具体的な利用状況は尋ねていない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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