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名古屋の老舗より「初夏の上生菓子」を。爽やかな季節に相応しい佇まいがそろい踏み

柳谷ナオ和菓子ソムリエ・ライター

愛知県名古屋市にお店を構える和菓子屋「川口屋」さんは、私が贔屓にさせていただいている東海地方の和菓子屋さんのうちのひとつ。

三重丸に七の字が目印
三重丸に七の字が目印

名古屋市錦という歓楽街の中心という立地ながらも、お昼過ぎにはほぼ売り切れてしまう程多方面からの人気と信頼の厚い老舗です。また、川口屋さんの特徴といたしまして、SNSにてその日の和菓子を発信なさり、当日でも電話予約が可能というところ。

遠方からいらっしゃる方は、到着時間等と合わせてご予約なさるのもおすすめです。私も東京からお伺いする際は、いつも取り置きをお願いしております。

さて、東北育ちで東京の江戸らしいやや濃いめの甘味が特徴的な和菓子に慣れ親しんだ自分としては、こんな美味しさもあるのねと毎回勉強させていただいているお店でもあります。

5月の上生菓子
5月の上生菓子

今回は、立夏を迎えて梅雨前の爽やかな季節に相応しい和菓子をいただきました。その中からいくつかピックアップしてご紹介

岩根のつつじ
岩根のつつじ

「岩根のつつじ」は一本一本はしっかりと太さを保っているものの、舌先に触れた瞬間とろりと溶けていく薯蕷練り切り、立ち上る芋の素朴な香りの中にもひとさじの高級感を覚えます。芯の道明寺がまた楽しい食感。桜餅のようなもちもちとした弾力、ではなく、粒のままさらさらと解けていく感覚はなかなかレアだと思います。

水辺の花
水辺の花

「水辺の花」は味の切り替わりが素晴らしい。歯を立てると、ぷりん、と可愛らしい抵抗感と共に弾ける葛の皮。その中には美しい彩になるよう丁寧に幾重にも包まれたこし餡が。どの色味が欠けても、この自然な色合いにならないのでしょうね。

美しい断面
美しい断面

こし餡の甘味が引き始めるころ、じわりと頭角を現す葛のほんのり野趣漂う旨味。そしてまたこし餡が恋しくなる、エンドレスです。

菖蒲薯蕷
菖蒲薯蕷

私が川口屋さんで絶対に欠かさないのが薯蕷饅頭。季節の花々や焼き印でおめかしされた薯蕷饅頭は、非常に濃厚な芋の味わい、香り、更には粘り気をも感じられます。今の季節は「菖蒲薯蕷」。

割った瞬間の瑞々しさ、と申しますか、閉じ込められた豊かな潤いが現れるとき、その断面と質感は「本当にたっぷりの芋を使用しているんだ」と実感させてくれます。

こし餡の甘味とはまたベクトルの異なる風味、甘味のコンビネーションが逸脱。

初がつを
初がつを

わらび餅(奥:こし餡、手前:粒餡)
わらび餅(奥:こし餡、手前:粒餡)

他にも、ぷるんとした弾力が独特な葛粉も使用した外郎菓子・初がつをやわらび餅(こし&粒両方あり)、5月の上生菓子の定番・唐衣といった涼しげな風情のお菓子も沢山。素材・製法・餡の種類がそれぞれ重複していない川口屋さんのお菓子は、つい「全種類ください」と言いたくなるものばかり。

唐衣
唐衣

落とし文
落とし文

2,3個購入して、すぐ近くの久屋大通公園で青空の下和菓子をいただくのもいいですね!子供と一緒の時は、私も久屋大通公園のベンチで食べています。

季節の移ろいと共に、季節の和菓子を。

シックでかっこいい掛け紙
シックでかっこいい掛け紙

<川口屋>
愛知県名古屋市中区錦3-13-12
052-971-3389
月~土 9時30分~17時30分
定休日 日・祝・第三月曜日 
市営地下鉄東山線・名城線「栄」駅1番口より徒歩3分

和菓子ソムリエ・ライター

■年間400種を優に超える和菓子を頂く和菓子ソムリエ&ライター。美味しさだけではなく、職人さんやお店、その土地の魅力をいかに伝えるかに重きを置いて執筆中! ■製菓衛生士免許所持・製造・販売・百貨店勤務経験有 ■和菓子・お取り寄せ・お土産・アンテナショップ・都内物産展&催事・和菓子とお酒&珈琲&ノンアルコールとのペアリングなどの執筆や取材、監修を得意としています。

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