ロシア軍がアゾフスタリ製鉄所をクラスター焼夷ロケット弾で攻撃(白リン弾ではない)
2022年5月15日、ロシア軍がウクライナ東部のマリウポリで焼夷兵器を使用しました。包囲されたウクライナ軍が立て籠もる最後の拠点であるアゾフスタリ製鉄所を焼いたのです。グラド多連装ロケットから発射された9M22Sクラスター焼夷ロケット弾による攻撃です。
9M22Sクラスター焼夷ロケット弾の9N510焼夷子弾はマグネシウム-テルミット系であり、成分として白リンは一切使われておりません。白リン弾ではないので注意してください。
なお白リン弾の燃焼温度は摂氏800~1000度。マグネシウム-テルミット系の焼夷弾の燃焼温度は摂氏2000~3000度になります。
攻撃の様子がロシア軍の無人機によって撮影されています。多数の9M22Sクラスター焼夷ロケット弾が飛来し、空中で起爆して、大量の9N510焼夷子弾が散布されている様子が分かります。光の粒は細かく多く、9M22Sの9N510の典型的な特徴を示しています。
アゾフスタリ製鉄所はマリウポリ市街地の中にあります。戦時国際法(ジュネーブ条約など)では人口密集地域への無差別な攻撃は禁止されており、広範囲を攻撃するクラスター兵器の使用はこれに抵触するでしょう。
また特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の付属議定書「焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書III)」では、人口密集地域での空中投射される焼夷兵器の使用は全面禁止されています。
今回の攻撃はどちらにも抵触します。ロシアがクラスター弾制限条約(オスロ条約)に参加していなくとも、戦時国際法とCCWの焼夷兵器制限に参加している以上は条約違反を行ったことになります。
2022年2月24日から始まったロシアによるウクライナ侵攻では、「空中で起爆し拡散する多数の火の玉となって落ちて来る兵器」が度々目撃されてきました。その使用者はロシア軍であることが、ロシア自らの発表で確定しました。
【関連記事】「ロシア軍がウクライナで白リン弾を使用」は誤報、実際には9M22Sクラスターテルミット焼夷ロケット弾(2022年3月25日)
【参考記事】CCW付属「焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書III)」から第二条の1と2を抜粋