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ラクしておいしい料理を作りたい。ズボラOLぶりが愛らしい鞘師里保の自炊事情とライブの日にすること

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『めんつゆひとり飯2』に主演する鞘師里保 (C)BS松竹東急/松竹

めんどうくさがりのズボラOLがめんつゆを駆使して、ラクしておいしい料理を作る。4コマ漫画から昨年4月にドラマ化され、話題を呼んだ『めんつゆひとり飯』の続編がスタートした。主人公の面堂露(めんどう・つゆ)を演じるのは鞘師里保。モーニング娘。の絶対的エースから、卒業後はソロアーティストとして活躍しているが、今年は女優活動も相次ぐ。この主演ドラマへの取り組みと自身の自炊や食生活、ズボラ具合まで聞いた。

凝ろうとして力尽きることが多かったんです

――鞘師さん自身は自炊はしているんですか?

鞘師 ここ1年くらい、よく自分で作っています。20歳ごろからずっと自炊を習慣づけようと思いながら、なかなかできなかったんですけど、最近やっと定着してきました。

――今まで定着しなかったのは、忙しかったから?

鞘師 それもありつつ、ヘンに凝ろうとして大変な思いをして、力尽きてしまうことが多かったんです(笑)。煮込むのにすごく時間が掛かったり、聞いたことのないような香草を使おうとしたり。最近は料理家さんのレシピでも、簡単だけど凝った味の発信が増えていて。そういうものを見ながら時間の負担が減って、続くようになってきた感じです。

――どんな料理を作っているんですか?

鞘師 最近作ったのが、オクラとクリームチーズとレモンのカレーです。長谷川あかりさんのレシピで、お肉とオクラを炒めて、クリームチーズを入れて煮たあとに、カレー粉と塩で味付けをしました。シンプルだけどオシャレな味で、すごくおいしかったです。

――計量はちゃんとしますか? 面堂露みたいに適当に「どばどば~」という感じですか?

鞘師 最初の頃はちゃんと大さじ1、小さじ2とか計ってましたけど、最近は「だいたいこれくらいでしょう」という感じでやっています(笑)。

レシピを見ないで作るのは大変でした

――『めんつゆひとり飯』のための練習は要らなかったわけですね。

鞘師 そうですね。食材も切れますし、知らない調理法もなかったので。レシピを先生に教わって、見栄えも含めて指導を受けながら撮影していました。

――露はズボラなりに料理の手際は良いように見えます。

鞘師 ズボラな分、手間を省いて効率良く調理するための努力は、半端ないんだと思います。撮る前のテストのとき、たとえばニンジンを素早く切る練習とかはしています。

――今回の『2』でも、手こずったメニューはありませんでした?

鞘師 毎回ひとつの料理を全部通して撮るんです。普通はレシピを見ながら「次はこれ」って作る方が多いと思いますけど、丸ごと覚えてやらないといけなくて。それはちょっと大変だったかもしれません。手際はシーズン1を経て要領がよりわかってきたので、自分の家のようにできました。

めんつゆがいろいろな料理に使えて感動します

――劇中で食べている完成した料理は、プロの方が作ったものですか?

鞘師 先生が作ってくれたものが多いですけど、私が作ったものをそのまま食べることもあります。

――シリーズを通じて、特においしかったズボラ飯というと?

鞘師 パッと作れて栄養も摂れると思ったのは、ササミとキノコの和風パスタです。大根おろしも添えて。あと、切り餅を使ったおかきは、お菓子が家で作れるんだと思いました。

――めんつゆは実際に調味料として万能そうですか?

鞘師 麺をいただくときのつゆとしてしか考えたことがなかったんですけど、目から鱗でした。本当にこんなにいろいろな料理に使えるんだと、感動します。めんつゆがあれば、足りない味覚に他の調味料を1コ使うだけでバランスが取れますし、まろやかで奥深い味になるんです。

――プライベートの自炊でも使っていて?

鞘師 はい。和風パスタは家でも作りましたし、自炊の幅が広がりました。

素材の味や出汁の旨味を感じる料理が好き

――食べるほうでは、鞘師さんはどんなものが好きなんですか?

鞘師 この夏はミョウガを重宝しました。5月の誕生日に、高知のかつおのたたきを冷凍でいただいたんです。生姜をすって、ミョウガを切って、ネギも入れて、サッと付けて食べると最高でした。素材の味とか野菜やお肉の出汁の旨味を感じられる料理が好みです。長年好きなのが鶏レバーのパテ。女性は特に鉄分が必要なので、体にも良いと思います。

――そうした好みは年齢で変わってきました?

鞘師 昔からエスニックとか和食とか、アジア系の料理が好きでした。好き嫌いはないですけど、日常的によく食べるのはシンプルなもの。ソースやチーズより、野菜の葉の味を感じられるものが好きなのは変わりません。胃がそんなに強くなくて、最近は特に食材を味わうようになりました。デパ地下で松前漬けを見つけたり、スーパーで塩辛とかの物産展をやっていると、テンションが上がります。渋めの食べ物が好きかもしれません。

――地元・広島のお好み焼きなどはどうですか?

鞘師 大好きです。この前、広島でお仕事をして、2日目は3時ごろに終わって東京に帰るだけだったので、おすすめされたお店でお好み焼きを食べました。ビールもちょっと飲んで、新幹線で爆睡(笑)。私は12歳で上京したので、広島のお好み焼きはあまり味わった経験がなかったんです。両親も関西の人で、どちらかというとパンケーキ型を自分たちで焼いて食べていて。逆に、お仕事を始めてから広島に帰ったときに食べたら、衝撃的なおいしさでした。

ニューヨークでモロッコ料理にハマって

――人前に出る仕事だと、食事はおいしさだけでなく、気を配る部分もありますよね?

鞘師 バランス良く食べたり、スープから飲んで体を暖めたり、暑くても冷たいものばかり飲まないとか、そういうことは気をつけています。

――10代の頃から、チョコレートの誘惑とかに負けませんでした?

鞘師 今のほうが負けます(笑)。若い頃はそんなにお菓子を食べてなくて。実家にいたときも母親の影響で、カリカリ梅や都こんぶばかりでした。今は冷蔵庫にチョコがあって、よく食べちゃいます。スイーツではカヌレが一番好きです。

――ニューヨークにダンス留学していた頃は、どんな食生活でした?

鞘師 いろいろな国の料理が揃っていて、私はモロッコ料理にハマりました。タジン鍋の煮込みがすごくおいしいんです。ブルックリンに行きつけのお店があって、去年の初めにニューヨークに行ったときも、ほぼ毎日そこでランチをしていました。たぶん長く地元の人に愛されているお店なんだと思います。

――ハンバーガーをよく食べていたわけではなくて?

鞘師 1コも食べていません(笑)。アメリカらしいものだと、ベーグルはよく食べていました。今でこそ日本でも見るようになりましたけど、当時はパン屋さんに必ずあったわけでもなくて。私はたぶん、お肉の脂だと胃が持たないんです。焼肉も味は大好きでも量は行けなくて。だから脂っこいものは避けがちで、結果的にヘルシーになっていると思います。

ダラッとしたい気持ちは共感できます

――『めんつゆひとり飯』シリーズで鞘師さんが演じる露は、かわいらしいですね。

鞘師 愛されキャラだと思います。とてもユルッとしてますから。

――意識的にそう演じているわけですか?

鞘師 かわいく見られようとはしていません。ただ、露はめんどうくさがりとかネガティブなワードも付随していていますけど、観ていてイライラするキャラクターでなく、「わかるな」と共感してもらえる演じ方は意識しました。

――原作に合わせてツインテールもしつつ。

鞘師 20代半ばにして……と思いながら(笑)。でも、お芝居は自分が普段やらないことをできるのが楽しいので。「やるやる!」みたいな感じで、何でも楽しんでいます。

――試行錯誤はあまりなかったですか?

鞘師 会話のテンポとか詰めたい部分はありますけど、役作りということでは原作もありますし、ダラッとしたい気持ちはすごく共感できて。普段の私が友だちとしゃべっているのと、変わらないところがありました。もちろん準備はしていきますけど、難しいというより楽しさのほうが強いです。

カメラの前で自分を解放できる役です

――『めんつゆひとり飯2』の撮影でも、すぐ露のモードに戻れました?

鞘師 帰ってきた感じがしました。役を作るというより、たとえば電話をするときに声がちょっと高くなるように、自然と露ちゃんスイッチが入る感覚です。台詞を口にしながら、「あっ、露がしゃべっている」と自分で思っていました。

――やっぱりハマり役だったんですかね。

鞘師 お芝居をするとき、カメラの前で自分を解放できる役だと思います。良く見られようとはまったく考えず、とにかく楽しんでやれるのが貴重でした。『2』でさらに開けた気がします。

――1話からオフィスでお弁当を巡って、同期の十越いりこ(山口まゆ)らと取り調べのようなやり取りもあります。

鞘師 「野菜も食べますって」みたいな台詞がありましたね。登場人物も増えて、よりテンポアップしたかったので、空き時間にみんなで練習もしました。映像で観ると、普段の会話より速いほうがいいときもあるので、監督にアドバイスをもらいながらやっています。

――食べるときの露は実に幸せそうな顔をします。

鞘師 よりおいしそうに見えることを考えますけど、基本的には素でおいしいと思ったままを出しています。毎日撮影があって、台詞も多くて覚えることもたくさんある中で、料理を食べられるのが私のご褒美ですね(笑)。

大掃除をしないで済むように毎日きれいに

――鞘師さんはアーティストとしてストイックなイメージがありますが、露のように「ラクがしたい」ということもありますか?

鞘師 あります、あります。そういうことばかりです(笑)。家に帰って、お風呂に入るのはダルいなと思いながら、ゴロゴロしたり。だから、最近は荷物を置いたら、座らず脱衣所に直行しています。ソファに座ったら終わりなので(笑)。

――露と違う形でも、ラクするための工夫もしていますか?

鞘師 掃除は大掛かりにガッツリ時間を取らなくて済むように、日ごろからきれいにしておきます。断捨離をすることもありますけど、要らなそうなものを手放す作業は、たぶん人より頻繁にしています。

――日ごろからやっておくほうが難しくないですか? 忙しかったりすると、つい「今日はいいや」となって、結局毎日何もやらなかったり。

鞘師 私は毎日やるのがクセになってきています。20代になってから、部屋の状況が自分の精神状態を反映しているのを感じて。部屋を整えておいて、何があっても引っ張られないことは心掛けています。

部屋がきれいになる過程を見るのが好きです

――「いつかやる」のままになってしまうことはないですか?

鞘師 洗濯ものが積み上がっている時期もあります。でも、基本的に「寝る前に畳んでおこう」と、その日のうちにやるようにしています。洗いものも絶対に溜めませんし、生活の中で人に見せない部分は頑張っています。

――やっぱり鞘師さんはちゃんとしていますね。

鞘師 一部では(笑)。全然ちゃんとしてないところも多いですけど。

――露みたいにお掃除スリッパを履いていたりは?

鞘師 あれは持ってなくて、私は毎朝、掃除機をかけています。たぶん部屋がきれいになっていく様子だったり、何かの過程を見るのが好きなんです。お掃除ロボットに任せようという気持ちも、今はないですね。

――つまり、毎日掃除をするのが苦でないというか、むしろ楽しみなくらいですか?

鞘師 そうですね。昔からではないですけど、「1日でこんなに髪の毛が落ちるんだ」とか思いながら、掃除機で吸い込んでいます(笑)。

時間にゆとりがないと不安なので

――露が料理に取り掛かるときの「めんつゆの舞」は、『2』でも披露しています。

鞘師 今回も振付を含めて面白いと思います。毎回、気合いが入っています。

――ステージでの鞘師さんのように、キレキレで踊るのとも違っていて。

鞘師 自分が培ってきた身体能力を面白く使うことは、すごく考えました。ヘンにキレを出すときもありますし、「ここですごく脚が上がっていたら気持ち悪いな」とあえてやってみたり(笑)。

――あと、露はめんつゆを掴んで目を閉じます。鞘師さんはライブ前に、精神統一のためにすることはありますか?

鞘師 私にとっては、すごく早く会場入りすることが重要です。設営の人たちと一緒くらいに入るんです。夜6時開演でも朝8時とか。楽屋を整えていただくよりも前ですね。

――アーティストがそんな早く入っても、時間を持て余しませんか?

鞘師 時間にゆとりがないと不安なんです。焦って準備して「ハイ、出るよ」みたいになるのが本当にイヤで、持て余すくらい時間があったほうが安心します。本当なら8時に入らなくてもいいスタッフさんまで巻き込んでしまうのは、申し訳ないんですけど。

――普段の待ち合わせも早めに行くんですか?

鞘師 それはギリギリです(笑)。ドラマの入り時間も遅く設定してくれる現場もありますけど、私は準備してから、ちょっと時間があるほうが嬉しいです。「では撮影です」とスパン、スパンと行くのが苦手なだけで、特に何もしてはいません。でも、準備を終えてコーヒーを飲んで、台本をパラパラめくって「よし、今日も頑張るか」となる時間が、私には必要みたいです。

何か言いたげに見えるのを強みにできたら

――今年はこの『めんつゆひとり飯2』が2本目の主演ドラマ。舞台も出演されて映画も11月に公開と、女優活動を増やしているんですか?

鞘師 結果的にそうなりました。チャレンジの機会をたくさんいただけて。舞台は久しぶり、映画は初めて。ドラマの続編も初めてで、やれたらいいなと思っていたことが現実になっていて、ありがたいです。

――演技への意欲が高まっていたりも?

鞘師 右も左もわからなかった時期が正直あって、まだまだ修行中。積まなければいけない経験もありますけど、以前より楽しめるようになってきました。どこから手を付けたらいいのかわからなかったのが、私はこういうことが苦手なんだとか、具体的な改善点や成長したい部分が見えてきて。舞台も稽古から大変でしたけど、大変なことをやらせてもらえるのが嬉しいです。

――自分の役者としての強みも見えてきました?

鞘師 どうですかね。「真顔になっても何か言いたげに見える」とか「何か考えていそうな顔をしている」と言っていただくことはたまにあります。自分で強みとして表現できているのかはわからないので、強化していきたいです。

――そういう表情は自然に出たものだと?

鞘師 役を作り上げたから、という自負はあります。でも、普段から真顔でいると「何か考えているの?」と言われることがあって。何も考えてないんですけど(笑)、そういう顔の作りなのかもしれません。

音楽と芝居を行き来できるのは利点かなと

――一方でアルバムのリリースもあって、充実はしているかと思いますが、体的にはキツくもないですか?

鞘師 正直、キツいこともなくはないです。無理にドラマと繋げるわけではないですけど、食事は本当に大事だと思います。自炊して自分に必要なものを摂る。健康的なことも、好きなものを食べて自分を喜ばせることも大切。体だけは壊さないように気をつけています。

――今年のように暑い夏だと、なおさらでした?

鞘師 そうですね。ニンニクを入れてみたり、メカブやすっぱいものを食べたり。体調に合わせて栄養を摂って、サプリメントも飲んでいました。

――アーティスト活動と女優活動と、時期で分けていたりもするんですか?

鞘師 なるべくそうしてくれてはいますけど、そうもいかないことも多くて。でも、ずっとお芝居をしていて音楽の仕事が入ると、違う力が漲ってきたりもします。そういう行き来ができるのは、私の利点かなとも思います。

お魚を捌けたらカッコいいかなと

――『めんつゆひとり飯2』が放送される秋はどう過ごすんですか?

鞘師 やっと涼しくなりそうで嬉しいです。スケジュールの関係で遊びに行ったりはほぼしてなかったので、ちょっと温泉旅行ができたらいいなと思っています。魚介がおいしい旅館で、自然の景色を眺めながら露天風呂に浸かりたくて。

――アクティブ系な旅行ではないんですね。

鞘師 私はアクティブ派では全然ないです。やっぱりズボラ(笑)。機会があれば登山とか行きたくなくもないですけど、自分で選ぶのはリラックス系。秋はあと、サンマを食べたいのと、できればお魚を捌いてみたくて。

――自炊の過程で?

鞘師 そうです。カッコいいかなって(笑)。凝った料理は作らなくても、たまにはそういう気持ちは欲しいです。

Profile

鞘師里保(さやし・りほ)

1998年5月28日生まれ、広島県出身。2011年にモーニング娘。の9期メンバーオーディションに合格してデビュー。2012年よりセンターを務め、2015年に卒業。2021年にソロアーティストとして1stEP『DAYBREAK』をリリース。1stアルバム『Symbolized』が発売中。女優として、2022年に『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』で連続ドラマ初レギュラー。主な出演作はドラマ『ワタシってサバサバしてるから』、『めんつゆひとり飯』、『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々~』、舞台『らんぼうものめ』など。ドラマ『めんつゆひとり飯2』(BS松竹東急)が放送中。映画『十一人の賊軍』が11月1日より公開。

水曜ドラマ23『めんつゆひとり飯2』

BS松竹東急 水曜23:00~

公式HP

(C)BS松竹東急/松竹
(C)BS松竹東急/松竹
芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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