石川ミリオンスターズ・端保聡社長が宣言! 岡崎太一監督(阪神)のもとで優勝とNPB輩出の二兎を追う
■新リーグ発足の年に惨敗
石川ミリオンスターズの社長、端保聡氏は今、来季に向けて希望に胸を膨らませている。実はシーズン終了直後は、気持ちもかなり沈んでいたという。
今年、BCリーグの“初期メン”であり、“旧友”でもある富山GRNサンダーバーズとともに新たな独立リーグである「日本海リーグ」を結成し、たった2チームの「世界一小さなミニマムリーグ」と謳って1年目のシーズンを送った。
シーズン公式戦40試合を3つのタームに分け、それぞれのタームで勝ち越したほうがポイントを奪取するというルールで、ターム1は富山が、ターム2は石川がポイントをゲットした。どちらが日本海リーグ初代チャンピオンになるのかと注目が集まる中、ターム3で思わぬことが起きた。なんと、石川が10試合全敗してしまったのだ。
ターム2のラスト2試合から負け続け、結局12連敗という不名誉な記録を打ち立てて、石川球団の2023年シーズンは幕を閉じた。
■勝たないとダメだと痛感
「堪えましたよ…」。
端保氏はガックリと肩を落とす。これまで球団の目標の優先順位は「NPBへの選手輩出」が先にきていた。もちろん、今もその思いはある。だが、やはり勝負事には勝ち負けがあり、負けて喜ぶ人間などいない。
「あんなに勝てないなんてね。やっぱり勝たないとダメだなっていうのを痛切に思い知らされた年。淋しいですよ、シーズン終わってからも」。
シーズン中、ほぼ全試合をYouTubeで配信し、端保氏も解説者としてマイクの前に座り続けた。だが、黒星が重なっていくとともにその声にも力がなくなっていくのが、ありありと伝わってきていた。
シーズン終了後、後援会への報告会でも代表から厳しい言葉をかけられたという。
「土地柄、石川県のみなさんは優しいんですよ。どれだけ大失点しようが、温かく迎えてくれる。だから敢えて『どんどんきついことを言ってください』とお願いをしてるんです。本当に厳しく叱咤激励をいただきました」。
開幕のまだ冷え込むときでも夏真っ盛りの酷暑の中でも、球場に足を運び声をからして応援してくれたファンにも、申し訳ない思いでいる。やはり勝つことが応援に報いることだと、あらためて痛感した。
■新監督は阪神タイガースの岡崎太一氏
来季に向けてのチームづくりは万全だ。前監督の後藤光尊氏にはまだまだチームを指導してほしかったが、責任感の強い後藤氏は慰留に対して首を縦には振らなかった。
そこで新たな指揮官を迎えた。阪神タイガースの岡崎太一氏だ。智弁学園高校から松下電器(現パナソニック)に進み、2004年ドラフトの自由獲得枠でタテジマに袖を通した岡崎氏は、捕手として16年間活躍した。2020年かぎりで現役を引退したあとはプロスカウトとしてトレードをまとめるなど、タイガースの編成部門で尽力してきた人物だ。
来季はタイガースに籍を置きつつ、「派遣」という形で初めて指導者としての第一歩を踏み出す。「いずれは指導者に」と望んでいた岡崎氏も、4年ぶりのユニフォームに胸を弾ませている。
(岡崎太一監督就任の記事⇒阪神のプロスカウト・岡崎太一氏が石川ミリオンスターズの監督に就任!“日本一のエッセンス”を注入するぞ)
■阪神タイガースとの友好関係
石川球団は過去にも北海道日本ハムファイターズに所属する武田勝氏が監督を務めたことがあった。またタイガースも以前、引退直後の藤井彰人氏(現広島東洋カープ・ヘッドコーチ)を福井ミラクルエレファンツ(現在は解散)にコーチ派遣した実績がある。
NPB球団側は指導者育成のための現場を提供してもらえ、独立球団側は高レベルの野球を享受し、なおかつ人件費の負担がなくなるという、双方にメリットのある施策だ。
今後さらにNPBとIPBL(日本独立リーグ野球機構)との間でこの方向性が活性化すると予想される。
ただ、今回はそういった組織間の話ではなく、端保氏とタイガースの本部長・嶌村聡氏との球団同士の信頼関係の中でまとまったのだという。
「石川さんは、元々4チームからスタートしたBCリーグの“オリジナル4”と呼ばれている伝統球団。その由緒正しき球団に端保社長がいらっしゃるということで、いい関係をずっと築いてきた。端保社長の人柄もあり、安心して預けられます」。
藤井氏以降も継続の意思はあったものの、コロナ禍で中断していたと嶌村氏は話す。タイガースとしても独立リーグとの連携を強めたいという希望を持ち、NPB全体の流れの中の一環に乗じてもいると明かした。
■岡崎太一監督を歓迎
これを受けて端保氏も「BCリーグ時代から17年、もっと価値が上がればという思いでやってきた。NPBや阪神タイガースさんのお力も借りながら交流を深め、球団の価値や独立リーグの価値を上げていき、また、これをきっかけに野球界全体も盛り上がればと思っています」と、感謝していると頭を下げる。
岡崎監督の印象について「純粋に野球が好きでトレーニングが好き」と答える。
「前監督の後藤くんもそうだったけど、自分で動いて見せられるということ、これは独立リーグでは大事なこと。ゲームにまで出なくていいけど(笑)、一緒に動いてくれる、動きをやって見せてくれるのは大事。岡崎監督も、後藤監督と同じく『なんでも吸収したい』と言って、すごく意欲的なのもいい」。
指導者経験がないことについて、不安がまったくないと言ったら嘘になる。しかし、その人柄に関しては間違いないと見込んでいるという。
「自由獲得枠っていったらドラフト1位指名と同じようなもの。でも、偉そうなところはいっさいないし、言葉が一つ一つ丁寧。まずはいち社会人として、一挙手一投足見せてくれればいい。社会人とはこうなんだよ、プロとはこうなんだよ、と背中で見せていける人間じゃないかなと、僕は感じています」。
企業のトップとしての己の眼力には自信がある。
たしかに「岡崎太一」という人間は、自分のことはさておき常に周りを気遣う人だ。キャッチャーとしても、かつての指導者であった矢野燿大氏から、ピッチャーへの気配りやジェスチャーなどでの伝達能力など、よく賞賛されていた。練習熱心で、ひとり黙々と汗を流すシーンもよく見られた。
タイガースからも「岡崎くんには野球への情熱がある」と太鼓判を押して送り出された。
■キーマンとなる宮澤和希と森本耕志郎
先月はトライアウトやドラフト会議も行い、入団する選手も確定した。現在、契約が順次進んでいるところだ。今季からの残留選手も多く、中でもチーム最年長の宮澤和希選手の言葉が力強いと、端保氏は頬をゆるめる。
「『ミリオンスターズを優勝させる』って。『ここまで世話になったんで、もう優勝させるまでは辞められません』って言ってるんです(笑)」。
今年31歳と独立リーグ界では大ベテランとなったが、その長打力はいまだ衰え知らずだ。今季もリーグの初代本塁打王(富山の髙野光海選手と同数)に輝いた大砲が、優勝への原動力となってくれる。
そしてもちろん優勝だけでなく、NPBへの輩出にも力を入れる。来季が高卒2年目となる捕手、森本耕志郎選手にも大きな期待をかけている。
「今年、バッティングはちょっと光るところがあった。本当はキャッチャーとしても、高い資質があるはず」。
駿台甲府高校時代から見込んでいただけに、今季、本来の能力が発揮できずに終わっていたと首をかしげる。ただ、シーズン終了後にはNPBのフェニックス・リーグにも参戦し、多くのものを吸収して帰ってきた。
捕手出身の岡崎氏が監督に就任したことで、来季は一気にその才が開花するのではないだろうか。
■二兎を追って、どちらもモノにする
「今年は『目指せ日本一』を口にしていなかった。自信がなかったから。でも来年に関しては、あらためて目指しますよ。2016年から優勝もしてませんから。まずは優勝、そして独立リーグ日本一を目指す。ウチのリーグは2チームしかない。つまり(独立リーグ日本一を決める)グランドチャンピオンシップにも、最も近いわけですよ」。
並々ならぬ意欲を見せる端保氏。さらに「NPBにも複数人を輩出するという目標も持って、来季はやっていきたいと思っています」と、“複数人”とハードルを高く設定した。石川球団は2017年、3選手を支配下で輩出した実績もある。
そして、ただドラフト指名されればいいというのではなく、しっかりとNPBで活躍できる選手に育て上げて送り出したいのだと、力を込める。
今年は実現できなかった優勝とNPB輩出の“二兎”を、端保氏と岡崎監督がタッグを組む石川ミリオンスターズはどちらも追いかけ、モノにする。
(表記のない写真の撮影は筆者)
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