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ミュージカル『魔女の宅急便』で主役の東宝シンデレラ。初の大役も「緊張したことはありません」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)ミュージカル『魔女の宅急便』

児童文学からスタジオジブリのアニメ映画の大ヒットで、世界的に有名な作品となった『魔女の宅急便』。ミュージカル、実写映画、イギリスでの舞台と広がり、2017年には新演出のミュージカル版が上演。その4度目の公演が開幕する。上白石萌歌、福本莉子らが演じた主人公のキキ役は、一昨年の「東宝シンデレラ」オーディションでミュージカル賞を受賞した山戸穂乃葉。初の大役に抜擢された16歳に、デビューまでの経緯と今作への想いを聞いた。

みんなと仲良くなりたい気持ちが強くて

――「東宝シンデレラ」オーディションを受けたときが中3。学校でも目立つタイプだったんですか?

山戸 誰かの後ろについていくより、前に立つのが好きでした。友だちには「穂乃葉と一緒のクラスになると、みんなが仲良くなる」と言われます。私自身がみんなと仲良くなりたい気持ちが強くて、学校では人見知りはしません。

――合宿審査のときもグループをまとめていたとか。

山戸 2組に分かれて私が一番年上だったので、リーダーをやらなければ……というのはありました。ダンスで「ここはどうするの?」と聞かれたら、教えたりしていました。

――先日、『プレミアの巣窟』に出演していたときも、年齢より大人っぽい感じがしました。

山戸 本当ですか? 大人っぽいとは言われますけど、しゃべるとそうでもなくて。漢字が苦手で、富山県を「ふじさん」と読んだりしました(笑)。でも、似てますよね?

東宝芸能提供
東宝芸能提供

ダンスは週5でレッスンを受けていました

――小5からダンススクールに通っていたそうですね。E-girlsに憧れていたとのことですが、自分もダンスグループでデビューしたいと思っていたんですか?

山戸 K-POPも好きでしたけど、ダンスを仕事にしようとは思わなかったです。ただ踊るのが好きだったので。「東宝シンデレラ」を受けるまでは、週5で7レッスンとか受けていました。

――そんなに? 生活の中心がダンスだったような?

山戸 そうですね。発表会とイベントが年に1回ありました。中学でもダンス部を作ろうとしたんですけど、顧問になってくれる先生がいなくて。

――K-POPでは、どの辺が好きだったんですか?

山戸 最初はTWICEです。今はいろいろなグループが出てきて、みんなきれいで、しかも細いですよね。ずっと見ていられます。

キュンキュンする恋愛ものが好きでした

――女優にも興味はあったんですか?

山戸 はい。ドラマや映画が好きでよく観ていて、「自分がこの中にいたら、どうなんだろうな」と考えたりしていました。

――どんな作品が好きだったんですか?

山戸 一番印象に残っているのは、『LDK(ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。)』という上白石萌音さんの映画です。すごくキュンキュンしました。妹も好きで何回も観ています。観るのは恋愛系が多いかもしれません。

――どんなシーンでキュンキュンします?

山戸 ドラマの『恋はつづくよどこまでも』の遊園地デートのシーンはキュンキュンでした。2人でアイスクリームを食べていたとき、上白石萌音さんが鼻に付けてしまって、いつもツンツンしているお医者さんの先生が取ってあげるのがヤバかったです(笑)。

――そういうシーンを自分でも演じてみたいと?

山戸 自分でやるのはたぶん無理ですけど(笑)、観ている分にはいいなと。

賞をもらったときのことはよく覚えていません

――上白石萌音さんが憧れなんですよね。それもあって「東宝シンデレラ」を受けたとか?

山戸 応募したのは、お母さんとか親戚とかいろいろな人に勧められたからです。ポスターに萌音さんが載っているのを見ました。

――ミュージカル賞を受賞して、プレゼンターとして萌音さんから楯を渡されたのは、感激でした?

山戸 そうなんですけど、あまり覚えてなくて(笑)。ボーッとしていたら「あれ? 自分の名前が呼ばれた?」という感じで、後から「こんな賞をもらったんだ……」みたいな。

――逆に、最初の面接から受賞までで、どんなことを覚えていますか?

山戸 2次審査の面接で「学校でどんな子と言われてますか?」と聞かれて、「バカと言われます」と答えてしまって(笑)。家に帰って、お母さんにその話をしたら「そんなんで受かるわけないやん」と言われて、やっちゃったかなと思いました。あと、「30秒で自己PRをしてください」と言われて、何をしたらいいのか戸惑いました。

――事前に考えておくものでもないですか?

山戸 初めてのオーディションで、そういうのがあると知らなくて。私は左から2番目に座っていて、一番左の人がやっている間に考えて、確かMOMOLANDの『BAAM』という曲を歌って踊りました。

――3次、合宿……と残っていくと、賞を獲ろうという気持ちに?

山戸 あまりならなかったです(笑)。とりあえず受けてみた感じだったので。でも、合宿審査のあと、学校の体育祭の打ち上げをしていたら、お母さんから電話が来て。ファイナルに残った連絡があったと聞いて、ゾワーッとして泣きそうになりました。

ミュージカルを観るのが楽しみになりました

――ミュージカル賞を受賞した時点では、自分がミュージカルを観たことはなかったとか。

山戸 そうなんです。役者さんたちが並んで歌っているイメージがありました。

――たぶんダンスや歌を評価されての受賞だったかと。

山戸 賞をいただいてから、ミュージカルを月に1本は観ています。歌だけでなくストーリーもあって、ダンスも多くて。こんなに面白いんだと、毎回観に行くのが楽しみになりました。

――自分でもやってみたいと?

山戸 そうですね。あんなに歌が上手くなれたらいいなと思いました。

――どんなミュージカルが心に残っていますか?

山戸 『ビートルジュース』です。コメディで面白くて、お客さんにも絡んで、演者さんたちも笑っていて楽しそう。観ていても楽しかったです。

考えるよりやってみるところは似てます

――『魔女の宅急便』はジブリ映画で観てたりはしました?

山戸 ジブリはおじいちゃんが好きで、私が小さい頃、誕生日には必ずジブリ映画のDVDをもらっていました。その中に『魔女の宅急便』もありました。

――小学生の頃に観たんですか?

山戸 たぶんそうでした。今回のお話をいただいて、改めて観ようと思ったんですけど、DVDのケースを開けたら、中身がなかったんです(笑)。どこかに消えてしまってました。でも、何回も観たので、ストーリーは覚えています。

――キキにはどんな印象がありました?

山戸 13歳で1人で旅立つ勇気はすごいなと思いました。いろいろなことで悩むけど、自分の力で立ち上がって。元気であまり先のことを考えず、とりあえず今できることをやってみるところは、私も似ている感じがします。

――キキの大きなリボンを着けて黒い衣装を着ると、どんな気分になりました?

山戸 自分でないみたいで笑っちゃいました(笑)。私は前髪を作ったこともないし、髪は肩下までしか切ったことがなくて、ショートのウィッグは違和感がありました。でも、ポスターで見ると、ちゃんとキキだし、変われるんだなと思いました。

――普段前髪を作らないのは、こだわりがあるから?

山戸 作りたいんですけど、小さい頃からこの髪型で、7・3分けでクセ付いてしまって。髪が横に流れてしまうから、作れないんです。

(C)ミュージカル『魔女の宅急便』
(C)ミュージカル『魔女の宅急便』

13歳らしく高い声でハキハキ歌おうと

――まず歌稽古から始まったそうですが、カラオケにはよく行ってました?

山戸 よく行きます。2週間に1回は絶対行く感じです。

――どんな曲を歌うんですか?

山戸 J-POPのバラードとか。清水翔太さんの『君が好き』は必ず歌います。あとは優里さんとかクリス・ハートさんとか、男性の曲が多いです。

――ミュージカルの歌い方はまた違いますよね。

山戸 そうなんです。キキは13歳だから幼く歌わないとダメで、できるだけ高い声でハキハキと、テンションも上げています。J-POPを歌っていると、シャクってしまうクセがあって、そこは気をつけています。

――高い音を地声で出したりもしませんか?

山戸 そうですね。もともと裏声を使って歌ったことがなくて、地声と変えるところが課題です。最初は何か声が引っ掛かって苦戦しましたけど、最初の頃よりは無理せず歌えるようになってきました。

パン屋さんで電話を待ってるシーンが楽しみ

――演技のレッスンは受けていたんですか?

山戸 事務所に入ってから、月イチでワークショップがありました。自分のやりやすい台本だと楽しいです。感情が激しい役のほうが、自分のオリジナルで作りやすいので好きですね。

――『魔女の宅急便』の台本はやりやすそうでした?

山戸 はい、やりやすいです。台詞を覚えられるか心配でしたけど、もともとの物語を知っているし、キキの話し方も自分に似ていて。

――演じるのが楽しみなシーンもありますか?

山戸 パン屋さんで電話を待っているシーンです。アニメでもありましたけど、そのセットが好きなんです。背景でパンがいっぱい並んでいる前に、自分がいるのが楽しみ(笑)。

――ほうきで空を飛ぶのも楽しみですか?

山戸 楽しみですね。『ピーターパン』のミュージカルも大好きで、舞台からお客さんの上まで飛んでいるのを見て、やってみたいと思っていて。そしたら初めてのミュージカルで飛べるということで、すごく嬉しいです。

関西弁のイントネーションは直さないと

――演技で本番までの課題になりそうなことはありますか?

山戸 嚙みそうな台詞があるのと、関西弁のイントネーションが出てしまうことがあって。自分ではわからなくて、教わっても言えてなかったりするので、そこは課題です。

――こうしてお話ししていると、関西弁は出ないようですけど。

山戸 東京では出ません。でも、お母さんとか関西の人の前で標準語を話すのは、何かしっくりこないんですよね(笑)。

――『魔女の宅急便』では地元の大阪での公演もあります。

山戸 友だちも「行くよ」と言ってくれますし、お母さんの繋がりで私とも仲良い方がたくさん来てくれるみたいです。自分のために集まってくれる人がそんなにいるのは、ビックリしました。

――いろいろな女優さんが演じてきたキキですが、自分らしさを出したいとも思いますか?

山戸 もともとキキは自分に近いので、元気さとか素も混ぜながら演じたいです。

オーディションを受けるのも楽しくて

――今は早く本番をやりたい感じですか? 不安やプレッシャーがありますか?

山戸 早くやりたいです! プレッシャーは本当になくて。いつも緊張はしません。

――小さい頃からダンスで場数を踏んでいたから?

山戸 楽屋とかでも緊張してなくて、舞台袖にいる間だけ「もう始まっちゃう」とドキドキします。でも、ステージに出たら楽しくなります。

――「東宝シンデレラ」のオーディションでも、緊張はしませんでした?

山戸 審査では緊張しなかったんですけど、ファイナルのステージで、マイクの前で話している間はすごく緊張しました。手が震えてしまって、握っていたのを開こうとしても開けなくて。

――でも、審査で緊張しないのはすごいですね。

山戸 審査員の方としゃべっていると、何か楽しくなります。今いろいろオーディションを受けてますけど、やっぱり楽しくて緊張はあまりしません。

打ち上げで皆さんとワイワイしたいです

――キキは13歳で1人で新しい町に来ましたが、山戸さんは大阪から仕事のときに東京に来ている形ですか?

山戸 そうです。でも、『魔女の宅急便』の稽古がある間は、ずっと東京にいます。友だちと会いたいときに会えなくて、そこはキキと似ているなと思います。

――せっかく東京にいるなら、お休みには原宿や渋谷に遊びに行ったりも?

山戸 行きたいんですけど、週に1日のオフはお母さんが来てくれて、一緒に出掛けています。お母さんは飲食店をやっていて、ごはん屋さんを回りたいということで、渋谷とかではないところに行ってます。

――東京でおいしいお店は見つけましたか?

山戸 マネージャーさんと行ったんですけど、ディズニーランドの隣りのイクスピアリにあるイタリアンで、ピザとパスタがめっちゃおいしくて。お母さんにそこに行きたいと話したら、ちょっと遠いので「面倒くさい」と言われました(笑)。

――『プレミアの巣窟』では、『魔女の宅急便』の打ち上げに出たいと話してました(笑)。

山戸 「お疲れさま」って皆さんとワイワイしたいんです(笑)。人がいっぱい集まるところで、いろいろな話をするのが好きなので。

映画も歌もモデルもできる人になりたいです

――東宝シンデレラの4人のチームで歌った『ダイナミック琉球』のMVも公開されました。沖縄で撮影したんですよね。

山戸 撮影の日は朝が早くて、とりあえず眠たくて。移動の車と自分の撮影以外はずっと寝ていました(笑)。

――でも、起きたらバリッと歌って。

山戸 自分が歌ってないところも、回ったり後ろを向いたりするように言われたのが、どうすればいいのか。手も何かしら動かしているのも難しかったけど、楽しかったです。『ダイナミック琉球』はちゃんと歌詞を考えると、すごく深くて。いろいろな意味を込めて歌いました。海の奥まで届けるつもりで、目線も真っすぐか上に、遠くを見ている感じを出しました。

――あまり苦戦したことはなかったですか?

山戸 草むらを歩くシーンが大変でした。草の中にはいっぱい虫がいますよね。想像したら気持ち悪いし、草が服に刺さるのも痛かったです。

――沖縄では撮影以外にも楽しいことはありました?

山戸 ステーキと沖縄そばを食べました。私はそばは好きでないんですけど、沖縄そばはうどんっぽくて、おいしかったです。でも、いつも好き嫌いが多くて困ると言われてます(笑)。

――『魔女の宅急便』が終わって4月になると、高校2年生ですね。

山戸 今まで高校で一番下だったので、2年生になるのは楽しみです。後輩が同い年くらい気軽に話せる先輩になれたらいいなと思います。

――キキ役がうまくいけば、仕事も広がりそうですね。

山戸 ひとつひとつ積み重ねて、将来は映画もモデルも歌もいろいろできる人になりたいです。

Profile

山戸穂乃葉(やまと・ほのは)

2008年1月21日生まれ、大阪府出身。2022年に第9回「東宝シンデレラ」オーディションでミュージカル賞。2023年10月より「Popteen」クリエイターモデル。3月8日より上演のミュージカル『魔女の宅急便』に主演。

ミュージカル『魔女の宅急便』

3月8~17日・日本青年館ホール 3月21~25日・新歌舞伎座

出演/山戸穂乃葉、深田竜生、生田智子、横山だいすけ、藤原一裕(ライセンス)、白羽ゆりほか

公式HP

(C)ミュージカル『魔女の宅急便』
(C)ミュージカル『魔女の宅急便』

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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