火災から丸4年。パリ・ノートルダム大聖堂の復興プロジェクト最新情報
2023年4月15日、パリは冷たい雨となりましたが、ノートルダム大聖堂火災から丸4年が経ちました。火災の直後や大規模な復興の様子はこれまで幾度か紹介してきましたが、大聖堂が現在どのような状況か、フランス国内の報道等をまとめてレポートします。
復興4年目の大統領視察
昨日、4月14日金曜日にはエマニュエル・マクロン大統領夫妻、文化大臣らが現場を訪れました。大統領が現場を訪れるのは今回で3回目だそうです。
大聖堂は800トンもの鉄の足場に覆われ、関係者以外は全く中に入れません。けれども、復興4年目の大統領訪問を機会に新聞「ル・フィガロ」やテレビ「フランス2」などの報道機関が現場に入り、内側の様子が紹介されました。
現在、現場では各分野の技術者たちが500人ほど働いており、今後さらに増える様子です。また、復興作業はこの現場だけでなく、フランスの約100社が関わる大プロジェクト。それぞれの会社で働く人の数も合わせれば、かなりの数になります。
ちなみに、復興のためのにこれまでに集まった寄付の合計は8億4600万ユーロ。日本円に換算すると1200億円以上になります。
壁やステンドグラスの修復、パイプオルガンの再建
大聖堂の内側にも天井まで届くほどの鉄骨の足場が組まれています。報道写真から受ける第一印象は、堂内が火災前よりも明るくなったというもの。すすで覆われた石の壁が綺麗に清掃されたためで、その表面積は実に44,000m²にもなるそうです。
ステンドグラスも汚れが取り払われ、より多くの光を取り込めるようになりました。これらの作業は、現場でも行われていますが、一部のステンドグラスは枠から外し、フランスの8つのアトリエで進められているのだとか。また、国内だけでなく、ドイツ・ケルン大聖堂のステンドグラスのアトリエも協力。これらの外されたステンドグラスは、今年の秋には元の場所に設置される予定です。
また、幸にして業火を免れた巨大なパイプオルガンは、8000本もあるパイプが一旦外され、清掃されたあと徐々に元の状態に戻されているとのこと。来年には調律が行われる予定だそうです。
尖塔の再建、オーク材と伝統技術の継承
尖塔が焼け落ちる画像は、何度見ても衝撃的です。それが以前と同じ形で再建されます。ノートルダムの屋根の構造が「森」と呼ばれるくらいの無数のオーク材から成っていたことは驚きでした。今回の復興では、中世の昔とは違う、火災にも強い素材使用の可能性も浮上していましたが、結局、創建時の伝統を21世紀によみがえらせるという方針がとられ、オーク材の選定、伐採、整形が着々と進められています。
フランス各地の森から集められる樹齢200年以上のオーク材の仕上げには、中世の昔と同じように手斧が使われるのだとか。ルマンの近くにあるアトリエ「Perrault」には今も、この伝統の技を持つ職人たちがいて、次世代への技の継承をはかりつつ、整形作業が行われているのだそうです。
つまりノートルダム再建という一大プロジェクトが伝統技術を受け継ぐ上でのとても貴重な機会になっていることがわかります。この話は、日本の伊勢神宮の式年遷宮の伝統を思わせるようで、歴史や伝統の技に重きをおくという点において、日本とフランスには共通するものがあると感じます。
尖塔復興の工程は、足場がどんどん迫り上がっていく形で進むので、今年の夏くらいからは、その様子が外からも観察できるようになりそうです。
2024年の再開を目指して
マクロン大統領は火災の直後に「5年で復興する」と明言しました。
(そんなことが本当にできるの?)と、みんなが訝ったものですが、どうやら彼の言葉は現実のものとなりそうで、2024年12月8日が再開の日と報道されています。
現場監督やプロジェクトの長のインタビューによれば、それは依然として決して簡単な目標ではないもの、実現可能な様子。2024年はパリオリンピック・パラリンピックイヤーであり、その開催から数ヶ月後、今度はノートルダムの再開が大きな話題になることでしょう。
もっとも、そのタイミングで100%完成というわけではなく、例えば、飛び梁部分などの修復は続くようです。とはいえ、順調にいけば、2024年12月8日にはノートルダムの鐘もオルガンの音色も高らかに鳴り響くはずです。
年金受給開始年齢引き上げに反対する大規模なデモや抗議行動が続くパリですが、このような明るい話題もあります。巨大なクレーンが稼働するノートルダムの空を眺めつつ、お披露目の日を楽しみに待つことにしましょう。