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トランプ氏がまた“暗殺未遂”にあったワケ 事件が起きたゴルフ場は警備されていたのか?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国時間9月15日午後1時半頃、FBI(連邦捜査局)がトランプ氏の命を狙ったもう一つの「暗殺未遂」と呼ぶところの事件が発生した。場所は、トランプ氏の別荘があるフロリダ州ウエストパームビーチ近くのゴルフ場。現場から逃走した犯人は確保され、容疑者は現在ハワイ在住となっているライアン・ウェズリー・ラウス(58)と特定されたことが報じられている。

 ラウス容疑者のソーシャルメディアによると、同容疑者は、ロシアによるウクライナ侵攻後にウクライナに渡り、アメリカの人々にもそうするよう呼びかけていたという。また、米議会にも、資金や兵器をウクライナに送るよう呼びかけていたようだ。

 トランプ氏は支持者へのメールの中で「私の近くで銃声が聞こえたが、噂が制御不能になる前に聞いてほしい。私は安全で元気だ。何があっても私を止めることはできない。私は決して屈しない!」と自身の無事を伝えている。

ナンバープレート番号が撮影されていた

 この日、トランプ氏はトランプ・インターナショナルが所有するゴルフクラブで、長年の友人で顧問のスティーブ・ウィトコフ氏とゴルフをしていた。

 トランプ氏より数ホール先で同氏を警護していたシークレット・サービスのエージェントが、ゴルフ場の敷地の端にあるフェンスから突き出ているライフルを発見し、ライフルを向けたラウス容疑者に発砲した。

 ラウス容疑者はトランプ氏から400〜500ヤード離れた茂みの中に隠れていたもようで、その場所からは、AK-47型ライフル、バックパック2つ、Go Proカメラが見つかっている。

 ラウス容疑者はSUVで逃走し、隣の郡で拘束された。FBIやシークレット・サービス、パームビーチ郡保安官事務所が、逃走したラウス容疑者の車のナンバープレート番号や同容疑者の特徴を記した警報を発令後、間もなく同容疑者が拘束されたという。ラウス容疑者の車(黒い日産車)のナンバープレート番号を撮った目撃者がいたことが、迅速な逮捕に繋がったようだ。ナンバープレート読み取り機がラウス容疑者の車を発見して、警察が取り押さえたが、ラウス容疑者は武器を持っておらず、拘束された際は無表情だったという。

現職の大統領ほどの警護は受けていなかった

 7月に起きた暗殺未遂事件以降、トランプ氏の警護は強化されていた。集会場ではトランプ氏は防弾ガラスの囲いの後ろから演説したり、ニューヨークのトランプタワーに滞在した時は建物の壁際にダンプカーを駐車させたりしていた。もっとも、ゴルフ場では、現職の大統領ほどの警護は受けていなかったようだ。

 パームビーチ郡保安官リック・ブラッドショー氏は「もし、彼(トランプ氏のこと)が大統領なら、ゴルフ場全体を包囲して警備していただろうが、そうではないので、警備はシークレット・サービスが可能とみなしたエリアに限定されている」と話している。つまり、トランプ氏は現大統領ではないため、ゴルフ場全体を包囲の上警備されていなかったわけである。

 ちなみに、この事件は、トランプ氏が自身が運営するSNS「トゥルース・ソーシャル」に「テイラー・スウィフトが嫌い」と投稿し、共和党副大統領候補のJ・D・ヴァンス上院議員が、オハイオ州スプリングフィールドで起きた複数の脅迫事件に繋がったのではないかと指摘されているハイチ移民に関する偽情報を広めたことについて「後悔していない」と認めたのと同日に起きたことも、一部のメディアでは指摘されている。

 FBIは動機の解明に乗り出したが、ラウス容疑者の口から、動機の鍵となる発言が出てくるのか注目される。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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