給特法見直しが「競争」と「分断」の強化につながる懸念もある
「定額働かせ放題」になっている公立学校教員の給与や働き方について議論してきた文科省の有識者会議が4月13日、「論点整理」をまとめた。ただ、その方向性ついて「競争と分断の強化につながりかねない」という声もある。
|さらに働かされる可能性さえある
処遇改善のためには、長時間労働の要因にもなっている給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)の見直しを避けては通れない。有識者会議による論点整理は、当然、それも視野にいれている。
その論点は、まずは教職調整額の見直し。給特法では、基本給の4%を上乗せされるかわりに残業代は支給されないことになっている。その4%は、1971年の給特法制定前の1966年当時の平均残業時間が8時間だったことから算出されたものだ。
しかし文科省による2016年度の勤務実態調査では、平均残業時間は小学校で59時間、中学校で81時間となっている。4%では実態にあっていないため、論議しようというわけだ。
実態に合わせるとなると、単純計算だと4%から小学校で29%以上、中学校では40%以上にしなければならなくなる。そこまでの見直しが実施されるとは、とうてい考えられない。
もうひとつの給与での論点が、職務や勤務の実態を踏まえた「新たな手当」を創設するというものである。学級担任、研修主事、情報教育担当主任などの職務に対して手当をつける、というわけだ。
裏を返せば、職務に就かなければ給与は増えない。だから職務に就けるよう頑張れ、というわけだ。より高い手当をめぐって競争させようということなのだろうか。ある教員は、「競争を強いられて、競争のために教員のつながりが分断させられることになりかねない」と言った。管理する側にとっては好都合となる可能性がある。
論点整理は、少しばかり教職調整額を引き上げるだけで「残業代なし」は維持し、競争でもっと働かせ、しかも教員同士がまとまらない状態をつくる方向にむいている。これを受けての中央教育審議での議論が、論点整理の方向性のまますすめば、処遇改善は期待できそうもない。教員が自らの声を論議に反映させていく努力が必要なのではないだろうか。