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トランプ氏の元顧問弁護士、真実のために寄付金集めを開始 トランプ氏を裏切った2つの理由とは?

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
トランプ氏の元顧問弁護士マイケル・コーエン氏はなぜ寝返ったのか?(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ氏の指示で、元ポルノ女優のストーミー・ダニエルズ氏らに「口止め料」を払ったことを認めたマイケル・コーエン氏が、真実を話すべく、「マイケル・コーエン・トゥルース・ファンド」というクラウド・ファンディング・ページを立ち上げて、寄付金集めを開始した。寄付金の目標額は50万ドルだが、すでに16万ドル近い募金が集まっている。それだけみな、“トランプ氏の真実“を知りたがっているということだろう。寄付金は裁判などの費用にあてられることになるという。

コーエン氏が行なっているクラウド・ファンディングのページ

変わり目はヘルシンキに

 それにしても、“腹心の部下”だったコーエン氏は、なぜトランプ氏を裏切ったのか? 

 “トランプ氏が罪を犯したことに議論の余地はない”と言い切るコーエン氏の弁護士ラニー・デイビス氏が、ケーブルテレビ局MSNBCに出演して、コーエン氏がトランプ氏を“裏切った理由”についてこう話していた。

「コーエン氏にとって、ヘルシンキの米露首脳会談が変わり目になりました。コーエン氏は、トランプ氏を大統領にするために大統領選に介入したプーチン氏がトランプ氏と同じ壇上に立っているのを見て、アメリカの将来を懸念するようになったのです」

 コーエン氏は、トランプ氏が任命した国家情報長官のダン・コーツ氏や国務長官のマイク・ポンペオ氏など彼の側近たちはみな、プーチン氏が大統領選に介入してトランプ氏の当選を助けたという全会一致したアセスメントをしているにもかかわらず、トランプ氏だけが介入を否定し続けていたことに、動揺していたという。

 確かに、トランプ氏は米露首脳会談後の記者会見で「ロシアが介入する理由は見当たらない」と介入を否定した。ところが、その翌日、発言は言い間違えで「ロシアが介入しない理由は見当たらないと言いたかった」と“苦しい釈明”をして前日の発言を撤回した。撤回したのは、ポンペオ氏などからそうするよう求められたからだと言われている。

嘘を気にしないトランプ政権

 

 米露首脳会談だけがコーエン氏に“裏切りの決意”をさせたのではない。もう一つ、別の理由もある。それは大統領に就任してからトランプ氏がとってきた、大統領にふさわしくない言動に対する懸念だ。トランプ氏が嘘をつき、嘘をつくことを気にせず、トランプ氏の支援者たちも彼が嘘をついているのを知っているのにそれを気にしていない状況が、コーエン氏の目には、危険なものに映っていたという。

 コーエン氏自身も当初は“嘘”をついていた。「口止め料」は自分のポケットマネーで、自分の一存で支払ったと説明し、トランプ氏をかばっていた。しかし、今回、“トランプ氏に指示された”と証言したのは、彼自身、“嘘で固めたトランプ政権”に加担して嘘をついている自分に嫌気が差してしまったからかもしれない。ようやく目が覚めたということか。

 デイビス氏はまた、ロシア疑惑について重要な発言をした。

「コーエン氏は、FBIが興味を持ちそうな情報を持っている。彼はアメリカ民主主義を滅ぼそうというロシアの陰謀を知っていたが、そのことをFBIに報告しかねていた」

 コーエン氏がムラー氏の捜査に全面的に協力し、多くのことが明るみに出てくるのはそう先のことではないかもしれない。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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