「日本はChatGPT検索数が低い」は誤り。検索ボリュームわかるGoogleトレンドでは異なる結果
「日本国内における『ChatGPT』のキーワード検索数は低い」とのプレスリリースが発表され、それに基づいた記事を毎日新聞が書き、Yahoo!トピックスにも掲載されていますが、これは誤りです。
データはSEO分析ツール会社による独自のもの
まず注意したいのは、プレスリリースの元となった検索数などのデータは、『Ahrefs(エイチレフス)』というSEO(検索エンジン最適化)分析ツール会社が提供している独自のものだという点です。
つまり、検索エンジンを提供しているGoogle社のデータではなく、あくまでもAhrefs社が独自に分析したデータであり、必ずしも正しい結果を反映させたものであるとは言えません。
なぜ、Ahrefs社提供のデータが誤りだと言えるのか? SEOの専門家であり、この件についてTwitterで「完全に誤ったデータです」と指摘されていた株式会社so.laの辻正浩氏に話を伺いました。
「Ahrefs以外のデータだと(ChatGPTの)検索数は多い」
――Ahrefs社のデータがなぜ誤りだと言えるのでしょうか?
グーグル社提供の『Googleトレンド』では全く異なる結果
続いて検索エンジン『Google』のキーワード検索数を調査できる『Googleトレンド』で、過去1ヶ月の“ChatGPT”のキーワード検索量についても調べてみました。
調査記事「宅配ピザ並み」→Googleトレンド「宅配ピザを余裕で超える」
最初はプレスリリースのタイトルに書かれていた「【2023年4月調査】ChatGPTの国内検索ボリュームは22,000で「宅配ピザ」並み」について本当か調べてみます。
以下がその結果です。
“ChatGPT(青)”と“宅配ピザ(赤)”を比較したところ、比較にならないレベルでキーワード検索数は“ChatGPT”の方が圧倒していました。
「宅配ピザ並み」については明確に誤りと言えます。
調査記事「日本はかなり下位」→Googleトレンド「関心度はアメリカやドイツ並」
次は月間検索ボリュームの調査です。
プレスリリースでは月間検索ボリューム(回数)は「アメリカで160万回、インドで87万回、ドイツで38万回、日本は2万回でかなり下位」と書かれていました。
しかし、過去1ヶ月分の検索キーワードの地域別の関心度を調べてみたところ、日本はアメリカやドイツより少し低いくらいとのことでした。
以下がその結果です。
地域別のインタレストは正確な検索数ではなく、その国のなかで検索キーワードへの関心度がどれくらいかを示す数値です。中国の100に対してインドが8、アメリカが6、ドイツが6、日本が5となっています。
これは、日本のインターネットユーザーが『ChatGPT』に対してアメリカやドイツとほぼ変わらない関心度を持っていることを表しています(中国の関心度が100になっている理由ですが、中国ではGoogle検索が国家にブロックされており、グレートファイアウォールを回避して検索してくるユーザーの関心度だけが計上されているためと考えられます)。
この地域別のインタレストでは月間検索ボリュームの正確な数字はわかりません。しかし、ドイツの人口が8,320万人、日本の人口が1億2,570万人であることを考えると(データは2021年時点)、月間検索ボリュームはドイツと同じか超える程度になると考えられます。
ChatGPTの日本人ユーザーは世界トップ3(similarweb調べ)
最後に余談ですが、webサイト分析サービス『similarweb(シミラーウェブ)』の調査によると、『ChatGPT』にアクセスしているユーザーのうち日本人の割合は3.63%と世界トップ3のようです。
もちろんこのデータは『similarweb』独自のもののため、他の分析サービスの数字とも比較して正確性を高める必要があります。
ここで主張したいのは「日本のアクセス数は世界3位だぞ!」ではなく、「日本のChatGPT検索数は下位」というデータと、「日本のChatGPTアクセス数は世界3位」という相反する2つのデータがあるということです。
こうしたいくつもあるデータのうち、どれがより正しいと言えるのかを検証しなければ正確な報道にはなりません。
今回の事例で言えば「ChatGPTの国内検索ボリュームは22,000で「宅配ピザ」並み」は、Googleトレンドのデータを見れば明確に誤りであると判断できるものでした。鵜呑みにしないよう注意してください。