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X(旧Twitter)のクリエイター収益配分プログラムの変更でインプレゾンビの収益減少か

篠原修司ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門
アメリカ大統領選から何かと露出が多いXのイーロン・マスク会長(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 X(旧Twitter)の新しいクリエイター収益分配プログラムが11月8日から始まり、そのプログラムになってからの初めての支払いが11月23日に行われました。

 筆者がざっくりとXユーザーの感想を調べたところ、インプレゾンビが減るかもしれないと感じたため、記事にして紹介します(※データで調べているわけではなく、手動での抽出のため正確ではない可能性がある点にご注意ください)。

分配が広告費ではなくプレミアムユーザーの課金額の最大25%に変更

 これまでXのクリエイター収益分配プログラムは、Xが受け取っていた広告料からユーザーのインプレッション数(正確にはユーザーのポストを見て表示された広告の数)に応じて分配するというものでした。

 この分配を受けるためには、プレミアムユーザーになるだけではなく、3ヶ月間で500万インプレッションという条件の達成が必要です(変更前の収益化条件)。

 このため条件を達成するためにバズっているポストに返信してインプレッション数を稼ぎ、その後もインプレッション数を稼ぐために引用の形式でポストをぶら下げる迷惑なインプレゾンビが登場しました。

 しかし、この収益の分配方法が11月8日から変更になりました。

 今までは広告収益が分配の源になっていましたが、これからはプレミアムユーザーが課金した金額の最大25%がポストへのエンゲージメントに応じて振り分けられるようになりました。

 つまり、インプレッション数を稼ぐだけでは意味がなく、投稿したポストをプレミアムユーザーが閲覧したり、リポストしてくれたり、いいねしてくれたりすることによって収益が分配されるようになったのです。

インプレッション中心のアカウントの収益は減少傾向に

 この変更によりポストのインプレッション数が多いだけで、あまりほかのユーザーから反応がないユーザーへの収益は説明上は減ることになります。

 実際に、以下は筆者のクリエイター収益分配プログラムの変更前と変更後のクリエイター収益です。

筆者のクリエイター収益。Xより筆者キャプチャ
筆者のクリエイター収益。Xより筆者キャプチャ

 売上は約31ドルから約62ドルへと約2倍になりました。

 しかし対象期間のインプレッション数を見ると、変更前は900万インプレッションなのに対し、変更後は約5倍の4950万インプレッションもあるのです。

変更前の支払対象期間のインプレッション数。Xより筆者キャプチャ
変更前の支払対象期間のインプレッション数。Xより筆者キャプチャ

変更後の支払対象期間のインプレッション数。Xより筆者キャプチャ
変更後の支払対象期間のインプレッション数。Xより筆者キャプチャ

 つまりインプレッション数は5倍になっているのに、売り上げは2倍にしかなっていないのです。

 同じ数字ではありませんが、クリエイター収益分配プログラムの変更前に4000万インプレッションだったときの収益は約100ドルでした。それと比較すると、かなり減っていると言えます。

 このほか海外のユーザーが画像でアップしている収益を確認すると、減っている人が多いような印象でした(事例123)。

 一方で自分の写真や作品を公開してリポストやいいねを多くもらっているユーザーは、プログラムの変更後はさらに収益を獲得できているという報告もありました。

 ただ、クリエイター収益分配プログラムがどのような仕組みで振り分けられているのか詳細は不明なため、これをもって変わったと言い切れないのが難しいところです。

収益の少なさにインドのXユーザーが抗議中

 そうしたなか、インド人のXユーザーと見られる人たちが「#X_Payout_धोखा_है」というハッシュタグでイーロン・マスクに対して抗議している状況が確認できました。

 彼らの多くはXからの収益を公開していない人が多いため実際の受取金額は不明ですが(公開している例123)、ポストの内容を見る限りでは同じ金額でXプレミアムに課金しているのに、アメリカのユーザーに対しては多額の収益が分配される一方で、インドのユーザーに対してはほとんど分配されないといった抗議が行われていました。

 ここにこれまでの情報をつなげて考えると、インド(ヒンディー語圏)のプレミアムユーザーはいわゆるインプレッション数を稼ぐだけのインプレゾンビであったためエンゲージメントが低く、そのために新しいクリエイター収益分配プログラムでは収益が下がってしまったものだと思われます(筆者のポストに出現するインプレゾンビはほとんどヒンディー語かアラビア語のユーザーです)。

 そう考えると、今後、インプレゾンビは減っていく可能性があります。

 また、Xでは現在、新たなユーザーに対しては500人以上のプレミアムユーザーからフォローされているアカウントでないと収益化を認めないという新しい条件を適用しています。

 こうなると価値のないポストをしているインプレゾンビでは収益化の条件に到達できません。

 もちろんこれはインプレゾンビ同士でフォローし合えば解決できるハードルではありますが、これまでと比較してインプレゾンビの新規参入が減ることを期待してもおかしくはないでしょう。

 ちなみにXのタイムラインの表示にも変更があったようで、今月4950万インプレッションだった筆者のポストには以前と比較するとインプレゾンビが少なくなりました。

 もちろんそれなりに登場しているため非表示にする対応には追われましたが、今までと比べると格段に減った印象です。

 Xからインプレゾンビがいなくなる日は、じつはそう遠くないのかもしれません。

ITジャーナリスト/炎上解説やデマ訂正が専門

1983年生まれ。福岡県在住。2007年よりフリーランスのライターとして活動中。インターネット(SNS)で起きる炎上の解説、デマのファクトチェック、スマホやガジェットの話題、生成AIが専門。最近はYouTubeでも活動しています。執筆や取材の依頼は digimaganet@gmail.com まで

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