トルコS-400問題でトランプ大統領がオバマ前大統領を非難、しかし・・・
トルコの長距離地対空ミサイル選定はアメリカがパトリオット、ヨーロッパがSAMP/T(アスター系)、ロシアがS-400、中国がHQ-9を提案して争っていました。そして2013年に中国製HQ-9が一旦勝利しますが、アメリカとヨーロッパの激しい圧力により2015年に撤回されています。その後2017年にトルコはロシア製S400を選び、再びアメリカとヨーロッパから激しい圧力を受けましたが、今度はトルコは撤回する様子がありません。
そして2019年にトランプ大統領の口から、今まで聞いたことが無い話が飛び出て来ました。
・・・初耳です。そんな話は聞いたことがありません。筆者はトルコの長距離地対空ミサイル選定を10年間も注意を払って観測してきましたが、一度も聞いたことが無い情報です。
2009年9月9日に国防安全保障協力庁(DSCA)がパトリオット(PAC-3含む)をトルコ政府に売却する可能性を議会に通知しています。そしてこの内容は議会に拒否されたという記録がありません。オバマ政権が輸出を禁じたという記録もありません。改めて調べ直しましたがやはり見付かりません。オバマ政権(2009年1月20日- 2017年1月20日)は政権発足当初からトルコにパトリオットを売り込んでいた筈なのです。
2019年6月29日にG20大阪でアメリカのトランプ大統領とトルコのエルドアン大統領が交わしていた会話内容は、何かの勘違いによるものではないでしょうか? オバマ前大統領は濡れ衣を着せられているのでは・・・
×トルコはオバマ前政権下でパトリオットの購入を禁じられ
〇トルコはオバマ前政権下でパトリオットの技術移転を断られ
オバマ前政権は決してトルコにパトリオット購入を禁じていません。むしろ売り込んでいました。ただしトルコが求めていた技術移転には同意していませんでした。トランプ大統領はこれを混同して勘違いしてしまったという可能性が高そうです。
トルコは将来の国産開発に備えて技術移転に拘っていたため、自らの意志でパトリオットを選ばなかったのです。そしてこのアメリカの技術移転の可否は政権の意向というよりは国防総省の意向であり、トランプ政権下でも同じような判断になっている筈なので、オバマ前政権のせいで交渉が決裂したとは言えないでしょう。