S-400購入問題でアメリカがトルコをF-35計画から排除する理由
6月7日、アメリカのシャナハン国防長官代行はトルコがロシア製地対空ミサイルシステム「S-400」の購入を進めている問題に対して、NATOの防衛体制に亀裂を生じさせかねないと警告し、F-35戦闘機計画からトルコを排除する方針を表明しました。
トルコには既にF-35戦闘機4機が引き渡されアメリカで訓練中で11月にトルコに移動する予定でしたが、これが無くなります。アメリカでトルコ空軍パイロットにF-35操縦訓練を行っているプログラムは7月末に中止されることが宣告され、トルコのF-35関係者はアメリカから出国させられることになります。このままトルコがロシアからS-400購入を中止せず続行すれば、アメリカはF-35をトルコに渡しません。
アメリカが強硬な態度を取った理由は、トルコがロシア製S-400防空システムの目の前でF-35戦闘機を飛ばしてレーダー反射のステルス性能データを取った上でロシアに情報が流されてしまう可能性です。6月7日に国防総省のキャスリン・ホイールバーガー国防副次官補は「ロシアが情報収集の機会を逃すはずが無い」とコメントし、トルコのS-400購入問題はアメリカ製ステルス戦闘機とロシア製防空システムが同じ者に渡った場合の機密保持問題であることを示唆しました。トルコがS-400によってF-35を間近で計測したデータを、ロシア技術者がS-400のメンテナンスの際に回収していかれては困るのです。
もしもトルコがロシアから買う兵器が戦車などだったら、こんな大きな問題には発展していなかったでしょう。しかしS-400のような長射程の防空システムの引き渡しは大変重大な意味を持ちます。トルコは果たしてNATOの一員であり続けることができるのか、そこまでが問われかねません。
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