消えた梅雨前線は危険な紫外線の前兆
暖春
春は、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気が移り変わりやすいというのが一般的な天気ですが、今年は高気圧の次に低気圧がなかなかやってきません。
高気圧のあとには、気圧の谷と表現される低気圧のようなもので、くもりや雨になるのですが、すぐに次の高気圧がやってきて、日本の東海上で発達します。
令和になって、ほぼ1ヶ月が過ぎましたが、梅雨の主役であるオホーツク海高気圧は、オホーツク海にありません。
また、梅雨前線を押し上げ、ジメジメした暑い夏をもたらす太平洋高気圧も、沖縄の南海上にあって、発達していません。
日本列島は、梅雨前線の北側にある大陸育ちの高気圧(揚子江高気圧)に覆われ、梅雨前線も消え、晴れて気温が上昇している状態が続いています(図1)。
海洋上に長くいることで変質して多少湿ってきましたが、大きく見ると、乾燥した空気をおくりこんできますので、乾燥した日が続きます。
まだ5月ですが、東京など、各地で日最高気温が30度以上という真夏日が続出する予想がでています(図2)。
特に東京では、日最高気温32度の日を含めて、5日連続で真夏日の予想です。
ちなみに、東京の5月の最高気温は、第一位が平成27年(2015年)5月31日の32.2度、第2位が平成11年(1999年)5月25日の31.9度ですので、この週間天気予報は、5月の記録を令和早々に書き換える可能性があるという予報です。
東京の5月の真夏日
東京都心部には、明治8年(1875年)6月5日以降の気象観測が残されています。
これによると、5月に真夏日(日最高気温が30度以上の日)を観測したのが、明治9年(1876年)5月1日から令和元年(2019年)5月23日までの約144年間に27日あります。
5月の日数で割ると、0.6パーセントですので、最近増えきたといっても、5月の真夏日は珍しい現象といえます。
東京での最初の5月の真夏日は、昭和15年(1940年)5月22日です。
つまり、明治・大正・昭和初期には、5月の真夏日はありませんでした。
昭和15年(1940年)以降、ときおり5月の真夏日が観測されていましたが、発生しても月に1回でした。
月に2回以上、真夏日が発生するようになったのは、21世紀にはいってからです。
平成16年(2004年)に、5月11日、30日、31日の3回、平成27年(2015年)に5月26日、27日、31日の3回です(図3)。
危険な紫外線
太陽からの紫外線は、大気を通る距離が長いほど、大気による吸収や散乱で減衰しますので、一般的には、太陽が真上にあればあるほど、地表に降り注ぐ太陽からの紫外線は強くなります。
このため、紫外線が一番地表に降り注ぐのは、太陽高度が一番高い夏至のころ(6月21日頃)ということができます。
とはいえ、日本で夏至の頃は、梅雨期間で、曇りや雨によって紫外線が遮られることが多く、紫外線が多いのは、梅雨入り直前か、梅雨明け直後となります。
勿論、空梅雨であれば、紫外線が強いのは、夏至の頃です。
ただ、5月下旬でも、夏至の時よりは低いといっても、7月中旬程度の太陽高度です(図4)。
紫外線が多量に降り注ぐ季節に、すでに入っています。
ただ、5月下旬の気温は7月中旬の気温に比べれば低く、過ごしやすいことから、より長時間にわたって屋外で過ごしがちとなります(表)。
週末は、運動会など、屋外行事が多数計画されています。
記録的な暖春で真夏日になるという予報でも、真夏の暑さに比べれば気温がまだ低く、乾燥していますので、過ごしやすい暑さでの、雨に邪魔されることはない屋外行事になると思います。
しかし、梅雨期に消えた梅雨前線は危険な紫外線の前兆です。
同じ紫外線の量でも、長時間浴びがちです。
5月下旬の紫外線は、7月中旬の紫外線より危険という認識で、十分な紫外線対策が必要です。
図1の出典:気象庁ホームページ。
図2の出典:ウェザーマップ提供。
図3の出典:気象庁資料を元に著者作成。
図4の出典:東京天文台資料をもとに著者作成。
表の出典:東京天文台資料と気象庁資料をもとに著者作成。