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Z世代のアイコンの古風なド根性。安斉星来、19歳の躍進に「悔し泣きしても、やるべきことは責任持って」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
ポニーキャニオン提供

一昨年の夏に恋愛リアリティ番組で芸能活動を始めるや人気を呼び、モデル、女優、バラエティと多岐に活躍を広げている安斉星来。19歳にして大人びた抜群のルックスと相まって、Z世代のアイコン的な存在となっている。6月に公開された青春映画『君は放課後インソムニア』では、森七菜と奥平大兼が演じた共に不眠症の高校生の同級生役で出演。Blu-ray&DVD化に当たり、この作品への取り組みと共に素顔を探った。

迷うことはあっても忙しいのは幸せです

――まだデビュー2年と思えないくらい、多方面で活躍されています。いいことですが、忙しさに目が回ったりもしませんか?

安斉 自分を見つめ直す時間や機会は減ってしまって、進む道に迷ったり「もっとできたのに」と思うときは多々あります。でも、忙しいのは幸せなことなので。お仕事をいただけるのはありがたくて、頑張っております。

――生活も2年前とは激変でしょうね。

安斉 もちろんです。デビューしたときはまだ純粋な高校生で、今も純粋ですけど(笑)、本当に何も知らないまま、この世界に飛び込みました。当時から比べたら、生活はもちろん、価値観もすごく変わって。仕事でもプライベートでも、自分でやるべきだと思うこと、責任を感じることが多くなりました。

――生活のことでは、Xに「早起きは慣れない」という投稿もありました。

安斉 慣れないですね(笑)。起きることはできるんです。アラームを5時半にかけていたら、1回でパッと起きます。でも、眠さはずっと取れません。

「やるなら甘ったれるな」と育てられました

――安斉さんは「Z世代のアイコン」的な呼ばれ方をよくされていますが、ご自分ではどう受け止めていますか?

安斉 Z世代って25歳くらいまでですか? 自分ではそこまで言っていただいて、おこがましいと思いながらも嬉しいです。2月で20歳になるので、今しか付かないワードという意味でもありがたいです。

――若い世代の憧れでありつつ、安斉さんの発言って「ブレることなく己を生きる」とか「最大の復讐は最大の成功」とか、昭和のド根性的なものも感じます(笑)。

安斉 たぶん、親にそういうふうに育てられたからですね。昭和を意識しているわけではないですけど、「自由にしていい。でも、責任は持て」という環境で生きてきたので。

――小さい頃から?

安斉 ずっとそうでした。小学校からバレーボールをやっていて「やるなら甘ったれず、とことんやりなさい」と教えられて、中学ではキャプテンを務めました。小学生の頃は友だちと遊びたくて帰りが遅くなって、怒られたこともあります。

――門限があったんですか?

安斉 ありました。早かったです。地域のチャイムが鳴るまでに帰ってくるように言われていて、遅れたらすごく怒られて。厳しかったと思います。

ひとつひとつを本気で悔いのないように

――安斉さんは強いイメージがありますが、挫けて泣くようなことはありませんか?

安斉 この仕事を始める前は、そんなに泣かなかったです。親に怒られても「何だよ!」と反抗していて、負けず嫌いだったので。バラエティに出させてもらうようになって、「もう少し言えることがあった」とか、反省することはもちろんあります。お芝居でも台詞が飛んでしまったりして「実力が全然ないな」とか、1人でお風呂で悔し泣きすることもあります。

――モデル、バラエティ、女優と仕事が多岐に渡っていますが、安斉さんの中での重みはどれも同じ?

安斉 そうですね。どの作品もどの番組も1コ1コ本気で、悔いのないようにやらせていただいているのは変わりません。

――モデルではクールビューティーで、『超無敵クラス』では泥だらけになってレア生物を探したり、イメージはだいぶ変わります。

安斉 意識的に変えているわけではないです。モデルは服を際立たせるためにカッコ良くなりがちですし、女優としては役柄に合った自分を表現していて。バラエティは素で出ることが多いですね。いろいろな安斉を好きになってほしい願望はあります。

――バラエティのために勉強していることもありますか?

安斉 番組をたくさん観るようにはなりました。でも、「こういう発言をしないと」と考えると、逆にうまくいかないのはわかっていて。無理に面白いことを言う立場でもないので、自分が見て感じたことを素直に伝えるのがいいかなと思っています。

有名なアクション映画はほぼ観ました

――女優としては、もともとアクション志向があったそうですね。

安斉 銃撃戦も殴る蹴るも、アクション系は幅広く観て育ったので、自分でもやりたいと興味がありました。

――どんな作品を観ていたんですか?

安斉 『バイオハザード』や『バットマン』は好きでしたし、父親と一緒に昔の有名な作品はほぼ観ていて、多すぎてパッと出ません(笑)。コメディも恋愛ものも韓国ドラマも幅広く好きですけど、アクションやホラーを観がちです。

――ホラーは怖がって観ているんですか?

安斉 あまりビックリはしません。かわいくないですね(笑)。最近は、言葉は良くないですけど、胸くそ悪くなるくらいのホラーが好きです。「うわっ、そこ来るか!」とメンタルがやられそうになるのが良くて、『アス』はすごく面白かったです。

本気で芸能界に入ろうとは思ってなくて

――デビューの数年前から事務所に入っていたそうですが、演技レッスンを受けたりはしていたんですか?

安斉 毎週ということではなく、たまに行くくらいでした。当時はバレーボールの選手になるのが夢で、事務所にスカウトされても、本気で芸能界に入ろうとは思ってなかったんです。

――初ドラマの『卒業式に、神谷詩子がいない』では苦労もしました?

安斉 ありました。場の雰囲気にも、カメラの台数やスタッフさんの多さにも慣れてなくて。ひとつのシーンが1回では終わらなくて何カットも撮るとか、当たり前のことも知らないまま現場に飛び込んで、今もですが勉強の日々でした。当時は全部のシーンが難しくて、ちゃんと演じられていたのか、いまだに不安です。

――場数を踏んで学んでいった感じですか?

安斉 場には慣れてきましたけど、今でも台詞は飛んでしまいますし、朝早い日が続くと集中力を保つのに必死です。皆さん、すごいなと勉強になることばかり。自分も徐々にできるようになってますけど、経験値を上げて、もっと実力を付けなければと実感しています。

自分と重なる役を素のまま演じました

――『君は放課後インソムニア』で演じた穴水かなみは男前な女子で、合ってましたね。

安斉 監督には「普段の安斉さんのままでいてください」と言われました。同級生役の永瀬(莉子)さんは役の仕草、言動、食べ方まで、すごく気を配って頑張っていたんです。その横で、素のままやっているのはモヤモヤしましたけど(笑)、穴水は自分と重なる部分が多い印象でした。

――どんなところが重なると?

安斉 見た目のイメージもですけど、負けず嫌いなところが一番ですかね。伊咲(森七菜)と丸太(奥平大兼)の仲立ちをするようなことも、私自身、多くて。誰かと誰かの間で「そうだよね」と話を聞くところは、似ていると思いました。

――では、役作り的なことは特に必要なかったと。

安斉 はい。いろいろな人との掛け合いは苦戦しましたけど、穴水自身のことでは、そんなに悩みませんでした。

――安斉さんは女性では声が低めですが、穴水役ではさらに少し低めにしていませんでした?

安斉 そうでもないですけど、少し早く、聞き取りやすく話すようにと監督から指示があって、そこは意識しました。素と違ったのは、それくらいですかね。

キャッチボールは上からでも投げられました

――ソフトボール部の穴水に丸太が星空観望会の手伝いを頼みに来て、キャッチボールをしていたシーンでは、安斉さんのフォームがきれいだなと思いました。

安斉 バレーボールも肩を使う運動だからか、奥平さんとちょっと練習して、全然投げられちゃいました(笑)。映画では上から投げてますけど、ソフトボール部だから下から投げる練習も実はしていて、画角的に難しいとなったんです。

――いわゆる女の子投げになってなくて。スポーツは何でもできるんですか?

安斉 苦手なものはないです。長い間やっていたバレーボールの他には、バスケも得意です。野球は打つのは難しいかもしれませんけど、スポーツはわりと全般好きで、人並みにはできます。

――石川県七尾市で撮影したのは昨年の夏だそうですが、今でもよく覚えている思い出はありますか?

安斉 自然が豊かで、みんなでカメラを撮り始めたり、撮影が早く終わったら、永瀬さんと毎晩のように、ごはんに行ってました。すべてが楽しくて素敵な夏でした。

――ごはんは何がおいしかったですか?

安斉 海鮮ですね。やっぱり石川は本当に新鮮なものばかりで、幸せでした。

友だちを巻き込むくらいの恋をしたかったです

――『君ソム』は清々しい青春映画ですが、安斉さんの実際の高校時代は、コロナ禍と重なっていたそうですね。

安斉 そうなんです。行事がほぼ中止だったので、そういった思い出はまったくありません。ああいう青春というか、ピュアな恋愛をしたかったと、ずっと思っていて。この映画の撮影では、卒業したあと、もう一度高校生に戻れたような気がしていました。

――もし本当に高校生に戻れたら、どんな青春を送りたいですか?

安斉 この映画みたいに、友だちを巻き込むくらいの素敵な恋をしたいです。高校生にしかできませんからね(笑)。

――伊咲と丸太の距離感は、ラブコメとは違うリアルさを感じました。

安斉 そのリアルさがいいですよね。近すぎず遠すぎず、会いたいけど会えないようなもどかしさは憧れます。

――あの2人の恋もさることながら、伊咲や穴水たちが放課後にイカ焼きを食べながら話している何気ないシーンにも、青春のノスタルジーがありました。安斉さんは放課後にそういうことはしていました?

安斉 高校1年のときはコロナ前で、友だちとカラオケに行ったりしてました。今思えば、放課後にいろいろできた高1のときが一番楽しかったです。

――安斉さんは中学時代は、ショートカットのバレーボール部のキャプテンだったんですよね。女子にもモテるタイプだったのでは?

安斉 どうなんでしょう。学生時代、女子にも男子にもモテていると思ったことはありません。気づいてなかっただけかもしれませんけど(笑)。今でも仲良い友だちと、ずっと一緒にいただけでした。

自分で考えることを忘れないように

――演技をするうえで、特に大事にしていることはありますか?

安斉 自分を忘れたらいけないなと。今のところ、私自身と似た役が多くて、この先、どんな役を演じさせていただく機会があるかわかりませんけど、まず自分なりに解釈して動いてみる。それが監督の描いているものと違ったら、柔軟に変えていきますけど、言われたことをやるだけでなく、ちゃんと自分で考えることからできたらいいなと思います。

――アクション作品の話が来たら、いつでも行けるようにしているんですか?

安斉 練習や体づくりはもちろん必要ですけど、大丈夫という気持ちでいます。

――今も日ごろから運動はしていて?

安斉 軽くです。筋肉が付きすぎても、モデルの仕事に支障が出てしまうので。私は筋肉質で、運動をするとすぐ付いて、3日で腹筋が割れたりするんです。お洋服が着れなくなったりするので、アクションのお話があったら、全力で役作りをしていくつもりです。

ストレスを溜めないことが一番と気づいて

――モデルとして、スタイルキープには気を遣っていますか?

安斉 食事の管理はしています。いろいろ試してきて、何も食べないような過度の減量をしたこともあります。食事の量を減らしたり、時間を決めたりしても、結局ストレスが溜まって食べてしまう。だからリバウンドして、プラスマイナスゼロみたいなことが多くて。ストレスを作らないことが一番大事だと気づきました。何時以降は食べない、この食べ物は控えるとか、いろいろ決めた範囲内で、好きなものを好きな時間に食べています。自分にはそれが一番合っているので。

――他にも、自分磨きでしていることはありますか?

安斉 スキンケアとかパックとか、小さいことを毎日積み重ねるのが大事だと思うんです。そういうことを欠かさずやるのが好きです。

頑張るための目標はたくさんあります

――安斉さんはストイックだと思いますが、息抜きは何かしていますか?

安斉 1ヵ月に1回、何でも食べていい日を作っています。いわゆるチートデイですね。韓国料理はカロリーが高いものが多いですけど、トッポギを好きなだけ食べたり。そういう日は生活もオフにします。お掃除も何もしないで、自分を甘やかします。

――逆に普段は、掃除もちゃんとしているんですか?

安斉 こだわりが強すぎて、掃除機をかけてからでないと食事をしないとか、朝起きたら布団はたたまないとダメとか、そういうことが本当に多いです。

――やっぱりしっかりされてますね。

安斉 どうなんでしょう。小さい頃からの教えなので。

――先々まで目標を立てたりもしていますか?

安斉 目標がないと頑張れないので、大きい夢はたくさんあります。アクション映画に出ることもそうですし、まだテレビCMに出たことがないんです。広告はあるんですけど。そのふたつは挑戦したいですね。

――海外進出を考えていたりも?

安斉 まず英語を覚えてからですね。しゃべれなくて、ニュアンスでどうにかしてきたので(笑)。あとは、海外でも通用するように、いろいろな価値観を知らないといけないと思いますし、もっと大人にならないと。もうすぐ20歳なので。

もっと大人になっているはずでした(笑)

――やっぱり20歳になることは意識しますよね。

安斉 大きいです。18歳で成人ですけど、どうしても20歳で大人というイメージなので。私ももっと大人になっているはずでした(笑)。

――今でも精神的には、かなり大人なのでは?

安斉 そんなことはないです。自分は全然弱いなと思っていて。お仕事でできないことも多いし、柔軟な考え方もできなくて、まだまだダメだなと思っています。

――安斉さんは苦手なことはなさそうですけど。

安斉 高いところがちょっと怖くなりました。一度バンジージャンプをやったら、脚がガッタガタ(笑)。隠すことはできても、内心は本当にビビっていました。でも、苦手はそれくらいですね。

地元でのんびりと親孝行もしたいです

――服の好みが大人っぽくなってきたりはしませんか?

安斉 好きなジャンルは変わってきました。少しずつ自分でお金をいただくようになってからは、欲しいお洋服を着たり、好きなものを買うために頑張っているところもあります(笑)。

――色は相変わらず黒が好きなんですか?

安斉 好きですね。でも最近、ネイビーが自分の中でブームです。黒とあまり変わりませんけど、学生時代だったら着てなかったと思います。

――仕事以外でも、人生で叶えたいことはありますか?

安斉 やりたい仕事を全部したあと、地元の海の近くの家で、のんびり住みたいです。父親と母親が年を取ったら、金銭面も含め、いろいろ親孝行をしたくて。

――素晴らしいですけど、19歳でそんな先まで見据えているんですね。

安斉 やっぱり考えることが昭和なんですかね(笑)。

プラチナムプロダクション提供
プラチナムプロダクション提供

Profile

安斉星来(あんざい・せいら)

2004年2月17日生まれ、神奈川県出身。

2021年に『虹とオオカミには騙されない』で芸能活動を開始。2022年にドラマ『卒業式に、神谷詩子がいない』で女優デビュー。主な出演作はドラマ『往生際の意味を知れ!』、『トリリオンゲーム』、映画『君は放課後インソムニア』など。『超無敵クラス』(日本テレビ)、NHK高校講座『公共』(NHK Eテレ)にレギュラー出演中。

『君は放課後インソムニア』

Blu-ray&DVD 11月22日発売

監督/池田千尋 脚本/髙橋泉、池田千尋 原作/オジロマコト 配給/ポニーキャニオン

公式HP

(C)オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会
(C)オジロマコト・小学館/映画「君ソム」製作委員会

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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