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初デートはどういった飲食店が正解か? チェックしておきたい8つの考察

東龍グルメジャーナリスト
(写真:イメージマート)

初デート論争

2024年が幕を開けました。新しい年が始まったということで、みなさんも色々な目標をもっているかと思います。

中にはパートナーを見つけたいという人もいるでしょう。パートナー候補と初めて二人で会う時に、飲食店を利用する人は多いと思います。その際には、どういった店で何を食べるでしょうか。

初めてのデートの時に、ファミリーレストランはありかなしか、焼肉に行ってもよいかどうか、割り勘にするべきかどうか、駅からの距離はどれくらいまでならよいかなど、“初デート論争”は絶えません。

リクルートの調査

少し前になりますが、初デートに関して、ホットペッパーグルメ外食総研が開催する「トレンド座談会」レポートがリリースされました。

初デートでのお店選び“論争”に終止符!?初デートで「あり」「なし」なメニュー・お店ランキング発表/リクルート

初デートで「あり」のメニュー上位3つは「洋食」「フレンチ・イタリアン」「寿司・海鮮」であり、「なし」のメニュー上位3つは「牛丼」「ジビエ」「餃子」。

初デートで「あり」の店上位3つは「カフェ・喫茶店」「レストラン(ファミリーレストラン以外)」「和食料理店、寿司(回転寿司以外)」、「なし」の店上位3つは「コンビニのイートインスペース」「立ち食いそば・うどん」「スナック」となりました。

私はデート向きのレストランを紹介することもよくあります。この結果も含めて、初デートの飲食店について考察していきましょう。

最高の食体験

飲食店における“最高の食体験”は、どういったものでしょうか。

飲食店での食体験は、インターネットや電話、および、食後や店頭での予約に端を発し、当日に店へ訪れて食事やドリンクを体験した後に支払いを行い、退店に至ります。

そして、よい食体験とは、緊張に始まり、リラックスで終わるもの。なぜならば、入店時と退店時のギャップが大きければ大きいほど、飲食店での記憶や印象が濃厚となって満足感が深まり、その結果、食体験が高まるからです。

もしも最初から最後まで緊張していたのであれば、常に萎縮していたり、周りに気を使っていたりしたことになります。これでは、料理の至味やお酒とのペアリングの妙味、驚きのプレゼンテーションやフレキシブルなサービスを覚えておらず、楽しい時間であったとは感じられません。

反対に、最初から最後までリラックスしていたのであれば、何も期待感がなく、全く刺激がなかったということです。これでは、自宅でだらだらと過ごしているのと変わらないので、わざわざ外食してお金を支払う意味が見出せません。ましてや、大切な初デートであれば、物足りなく感じられてしまいます。

最初は未知の体験への期待感から緊張していながらも、料理に舌鼓を打ち、美酒に酔いしれ、つくり手のこだわりに感嘆し、気の利いたホスピタリティに癒やされ、同行者との会話で盛り上がり、最後は緊張が解けてリラックスするのが、最高の食体験です。

ここからは8つのポイントを説明していきましょう。

高級感と上質感

初めてのデートであれば、高級感と上質感が重要となります。打ち解ける雰囲気のカジュアルな店もよいですが、パートナー候補を大切にしているという態度を示すのであれば、高級感が漂っていたり、上質感があったりする飲食店の方が好ましいです。

したがって、「レストラン(ファミリーレストラン以外)」「和食料理店、寿司(回転寿司以外)」が「あり」の店となっており、「コンビニのイートインスペース」「立ち食いそば・うどん」が「なし」の店、「牛丼」「餃子」が「なし」のメニューとなっているのは理解できます。

リラックス

高級そうであったり、上質であったりする飲食店をセレクトすることは、パートナーに誠意を示すには重要です。ただ、前述したように、ある程度はリラックスできることも大切。

そういった観点からは、最高の食体験とはいえないながらも、「カフェ・喫茶店」が「あり」の店で1位になっているのは、まだ納得できます。また、最初から最後まで全く緊張感のない「コンビニのイートインスペース」「立ち食いそば・うどん」が「なし」のトップ2店となっているのも容易に理解できるところです。

テーブル間隔

飲食店は、食べるために訪れる場所ですが、同行者がいる場合には、良質な会話ができるかどうかも重要となります。特にパートナー候補との初デートであれば、会話を重視するのは当然のこと。会話を重要視するのであれば、他のテーブルとの間隔やキッチンとの距離感が気になるところです。

他の客との距離が近いようであれば、親密な会話が憚られるのは、想像に難くありません。ダイニングエリアにおいて1坪あたり、できれば1.5席以下、最低でも2席以下となっている、テーブル配置に余裕のある飲食店が望ましいです。

キッチンとの距離が近ければ、臨場感があって、よりおいしく食べられます。つくり手と会話ができるのもよいですが、同行者との会話が少なくなってしまうのが難しいところ。

こういったことを鑑みれば、「コンビニのイートインスペース」「立ち食いそば・うどん」が「なし」になっており、「レストラン(ファミリーレストラン以外)」が「あり」になっているのは当然のことです。

テーブルの配置

パートナー候補と至極の時間を過ごすためには、テーブル間隔だけを気にするのでは足りません。

テーブル席かカウンター席か、ダイニングエリアか個室であるか、テーブル席であれば向かい合うのか斜向いなのか、隣に座るのかによってだいぶ状況が異なります。

親密に会話をしたいのであれば、できるだけ距離の近い隣席に座るのがよいので、カウンター席が望ましいです。しかし、カウンター席は、前述したようにパートナー候補との会話が少なくなります。他から邪魔されずに、ゆっくりと会話を楽しみたいのであれば個室がベストです。次にボックス席やテーブル席、最後にカウンター席という順番となります。

テーブル間隔と共に、どのような配置になっているかも考慮した上で、より会話できる環境であるかどうかを吟味しなければなりません。

食事スタイル

会話は食事スタイルにも影響されます。

コース料理であれば最初から最後まで悩む必要がなく、プリフィクスコースであればいくつかチョイスするだけです。ただ、アラカルトになると、よくも悪くも最初から最後まで決めなければなりません。メニューを二人で選択したいかどうかに依りますが、アラカルトはメニューの理解やバランスのコントロールが必要となるので、レストランに慣れていないのであれば、コースよりもハードルが高いです。

ブッフェ(ビュッフェ、バイキング)では取りに行く必要があるので、テーブルで落ち着いて会話するには向いていません。ただ、ブッフェ形式であれば、ブッフェ台の様子を共有したり、何をどのように取るのか相手に訊いたり、一緒に取りに行ったりできるので、会話のタネは増えます。

客層と雰囲気

飲食店の雰囲気は、その場にいる客によって決められます。

港区女子が多ければギラギラとした雰囲気になったり、クラブの同伴や接待が多ければ硬質なムードになったり、若年層が多ければカジュアルな感じになったり、子連れが多ければ生活感が漂うことになったり、一人客が多ければ会話しづらくなったりします。

客層や雰囲気を考慮すれば、初デートはカップルが多いレストランをセレクトした方が無難かもしれません。「カフェ・喫茶店」が「あり」の店1位にあるのは意外ですが、カップルでも目立ち過ぎることはなく、レストランほどハードルが高くないという観点からは納得できます。

味の好み

味覚は人によって全く異なるもの。食の好き嫌いは、単に味覚の好みだけではなく、宗教や信条による忌避、小さい頃に食べ慣れたものかどうか、アレルギーやその時の体調に依存します。

日本であれば、宗教や信条による忌避は少ないですが、北は北海道から南は沖縄まで南北に長いので、食文化の差が大きいです。名古屋あたりを境とした東西の差異も小さくありません。したがって、日本国内においても、バックグラウンドや個人差による味の好みは留意するべきです。

したがって、嫌いな人が少ない「洋食」「フレンチ・イタリアン」「寿司・海鮮」が「あり」のメニュー上位にあったり、「なし」のメニュー上位に、喫食体験に差がある「ジビエ」があったりするのは納得できます。

「餃子」を嫌いな人は少ないと思いますが、匂いが強いので「なし」のメニュー3位になっているのでしょう。

お酒が飲めるか飲めないか、好きか嫌いか(ソバーキュリアスも含めて)も重要な要素。お酒を嗜むのであれば、好きなお酒が醸造酒か蒸留酒やリキュールか、醸造酒であればワインなのか日本酒やビールなのか、蒸留酒であればウイスキーなのか焼酎なのかなど、選ぶ店がまた異なってきます。ただ、お酒が好きであれば、一次会は料理中心で店をチョイスし、二次会は好みのお酒がある店に訪れるという選択肢もあるでしょう。

非日常感

パートナー候補との初めてのデートであれば、非日常感も演出したいところです。

値段が高いファインダイニングであったり、高価な食材を用いていたり、有名シェフが腕をふるっていたり、話題の店であったり、予約困難の人気店であったりすれば、非日常感が高まります。

こういったところで初めての食体験を共有できれば、とても印象的なデートになるのではないでしょうか。

初デートに適した飲食店

食は人間にとって欠かせないものです。人生を歩む上で、パートナーは絶対に必要ではありませんが、パートナーがいればより生活が充実することは間違いありません。孤食の弊害が叫ばれている時代において、好きな相手と食事できるのは幸せなことです。

初デートの際には、緊張感がありながらもリラックスしていくことができ、苦手なものが提供されない飲食店がよいと考えています。これに加えて、非日常的な要素が加わればベストです。

未婚率が高くなり、少子高齢化が進んでいる日本において、まずは初デートが成功することを心から祈っています。

グルメジャーナリスト

1976年台湾生まれ。テレビ東京「TVチャンピオン」で2002年と2007年に優勝。ファインダイニングやホテルグルメを中心に、料理とスイーツ、お酒をこよなく愛する。炎上事件から美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口で分かりやすい記事を執筆。審査員や講演、プロデュースやコンサルタントも多数。

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