草むらに踏み込むとズボンがベチャベチャの虫の糞だらけ=第一容疑者はドロオイ虫
子どもたちが遊びに夢中になって草むらに踏み込むと、ズボンにベチャベチャの虫の糞がたくさん付いて、汚らしくなることがある。
ズボンを汚した犯人は、たいていクビボソハムシの仲間の幼虫だ。この幼虫は、背中に自分の糞(ふん)を背負っているので、ドロオイ虫(泥負い虫)の通称で呼ばれることが多い。
草むらで一番多く見かけるのは、クコに付くトホシクビボソハムシの幼虫(クコドロオイ虫)だろう。
クコはどこにでも生えている雑草だが、植物としてのクコを知っている人は少ないかもしれない。しかし、その実はわりと有名だ。クコの実は、杏仁豆腐の上に一粒載っているあの赤い実である。
クコドロオイ虫が背負っている糞は、水分たっぷりでベチャベチャしており、服にこびり付きやすい。白っぽいズボンでクコの茂みに入ると、糞だらけの悲惨な状況になりかねない。なぜ汚らしい糞を背負うのかと言えば、それはたぶん擬態のためだろう。
たっぷりと糞を背負った幼虫の姿はとても虫とは思えず、天敵の目を欺く効果がありそうだ。
トホシクビボソハムシの成虫は、最多で10個の黒い紋がある(全く紋のないタイプもある)可愛い虫だが、この虫を観察する際には、幼虫の糞で服が汚れないよう、注意が必要となる。
秋に赤いクコの実が鈴なりに実ると非常にきれいなので、つい実を摘みたくなるが、その際にも同様の注意が必要だ。
稲作農家や害虫対策専門家の間で悪名高いのは、イネを食害するイネクビボソハムシの幼虫(イネドロオイ虫)。イネドロオイ虫もベチャベチャの糞を背負っているが、最近は水田の防虫管理が行き届いているせいか、あまり姿を見なくなった。
(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)