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草むらに踏み込むとズボンがベチャベチャの虫の糞だらけ=第一容疑者はドロオイ虫

天野和利時事通信社・昆虫記者
トホシクビボソハムシと背中に糞を背負った幼虫。

 子どもたちが遊びに夢中になって草むらに踏み込むと、ズボンにベチャベチャの虫の糞がたくさん付いて、汚らしくなることがある。

 ズボンを汚した犯人は、たいていクビボソハムシの仲間の幼虫だ。この幼虫は、背中に自分の糞(ふん)を背負っているので、ドロオイ虫(泥負い虫)の通称で呼ばれることが多い。

 草むらで一番多く見かけるのは、クコに付くトホシクビボソハムシの幼虫(クコドロオイ虫)だろう。

 クコはどこにでも生えている雑草だが、植物としてのクコを知っている人は少ないかもしれない。しかし、その実はわりと有名だ。クコの実は、杏仁豆腐の上に一粒載っているあの赤い実である。

クコにたくさん付いている茶色の物体はトホシクビボソハムシの幼虫(通称クコドロオイ虫)。
クコにたくさん付いている茶色の物体はトホシクビボソハムシの幼虫(通称クコドロオイ虫)。

1枚のクコの葉裏に張り付いたクコドロオイ虫たち。とても虫とは思えない姿だ。
1枚のクコの葉裏に張り付いたクコドロオイ虫たち。とても虫とは思えない姿だ。

クコドロオイ虫から背中の糞を取り去ると、わりと普通の幼虫に。
クコドロオイ虫から背中の糞を取り去ると、わりと普通の幼虫に。

 クコドロオイ虫が背負っている糞は、水分たっぷりでベチャベチャしており、服にこびり付きやすい。白っぽいズボンでクコの茂みに入ると、糞だらけの悲惨な状況になりかねない。なぜ汚らしい糞を背負うのかと言えば、それはたぶん擬態のためだろう。

 たっぷりと糞を背負った幼虫の姿はとても虫とは思えず、天敵の目を欺く効果がありそうだ。

 トホシクビボソハムシの成虫は、最多で10個の黒い紋がある(全く紋のないタイプもある)可愛い虫だが、この虫を観察する際には、幼虫の糞で服が汚れないよう、注意が必要となる。

 秋に赤いクコの実が鈴なりに実ると非常にきれいなので、つい実を摘みたくなるが、その際にも同様の注意が必要だ。

鈴なりのクコの実。つい摘みたくなるが、クコドロオイ虫に要注意。
鈴なりのクコの実。つい摘みたくなるが、クコドロオイ虫に要注意。

クコの実と花。
クコの実と花。

 稲作農家や害虫対策専門家の間で悪名高いのは、イネを食害するイネクビボソハムシの幼虫(イネドロオイ虫)。イネドロオイ虫もベチャベチャの糞を背負っているが、最近は水田の防虫管理が行き届いているせいか、あまり姿を見なくなった。

イネクビボソハムシ。幼虫はやはりベチャベチャの糞を背負っている。
イネクビボソハムシ。幼虫はやはりベチャベチャの糞を背負っている。

(写真は特記しない限りすべて筆者=昆虫記者=撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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