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大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用中止を求める国会請願署名

寺沢拓敬言語社会学者

京都工芸繊維大学・羽藤由美教授の呼びかけにより、大学入学共通テストにおける英語民間試験の利用中止を求める国会請願署名が始まった。

国会請願署名(6/7〜6/16)にご協力ください!

私たちは,2021年度(2020年度実施)の大学入学共通テストにおいて英語の民間試験を利用することに反対し,その中止と制度の見直しを国会に求めます。

国会請願は,国民が国政に対する要望を直接国会に述べることのできる,憲法で保証された権利です。日本に住んでいれば,外国人や未成年(たとえば,小・中・高生)も請願することができます。

今国会における請願の受付は 6 月 19 日(水)まで。そのために短期決戦の署名運動になりますが,国政選挙の直前でもあり,私たちの声を国会に届ける大きなチャンスです。

出典:https://nominkaninkyotsu.com/

 

この問題をごく簡潔に表現すると、2021年度入試より、センター入試・英語が、民間の外部試験(TOEICや英検など)に置き換わるというものである。

これだけなら何が問題なのかわかりにくいが、次のような問題点が多くの専門家・関係者から既に指摘されている。

  1. センター入試(に相当する試験)を廃止する根拠が不明である(スピーキング入試が必要なら大学入試センターに作成させればよい。センターは語学テスト会社に匹敵するかそれ以上のノウハウを持っている)
  2. 代案として用意されている民間外部試験の妥当性が驚くほど低い。しかも、運営上のトラブルが頻出しており、受験生が多大な不利益を被る恐れがある
  3. 以上のような多くの問題点が指摘されているにもかかわらず、導入が強引に決定された。手続き上にも深刻な瑕疵がある
  4. 特定の民間外部試験の導入ありきの議論で、利益誘導の恐れがある

 

この問題は、大学入試における英語の学力測定の制度改革に関するものである。したがって、本来は官のレベル(=文科省。正確には省内部局レベル)で適切に解決される問題であったはずだが、どうにもこうにも埒があかないため、政治のレベルへの訴えにつながった。

ちなみに、私も研究者としてこの請願に賛同している。一般メディアではあまり取り上げられない一見地味な問題だが、教育政策の根幹を揺るがしかねない深刻な問題を含んでいる。今後の展開を注視したいと思う。

参考

言語社会学者

関西学院大学社会学部准教授。博士(学術)。言語(とくに英語)に関する人々の行動・態度や教育制度について、統計や史料を駆使して研究している。著書に、『小学校英語のジレンマ』(岩波新書、2020年)、『「日本人」と英語の社会学』(研究社、2015年)、『「なんで英語やるの?」の戦後史』(研究社、2014年)などがある。

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