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子どもの貧困・体験格差・教育格差、報道が劣化しないために #専門家のまとめ

末冨芳日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員
子どもの貧困、ひとり親の貧困、体験格差、教育格差、その報道は何のため?(提供:イメージマート)

年末年始にひとり親家庭が大変、被災地の子どもたちの体験格差や教育格差が拡大している、そんな報道が多い年の瀬です。

大変な状況の子どもたち、家族の報道が増えることは、社会の関心を高めるためにも大切なことです。

いっぽうで、その報道の質に懸念を抱くケースもあります。

ひとり親だけが貧困なのか?

体験格差や教育格差という言葉を曖昧に使っていないか?

論点を詰め込みすぎではないか?

複数のYahoo!エキスパートからも、違和感を表明するコメントが出てきています。

ココがポイント

ひとり親家庭の報道は何のために存在。スティグマ化を推進するようなレッテル貼りにはひとり親家庭出身者として反対(一部略)
出典:Yahoo!ニュースのコメント(常見陽平さん) 2024/12/31(火)

この記事での使い方はかっちりとした定義がなさそうですが、「体験格差」という言葉が過剰な習いごとに繋がるケースもあります。
出典:Yahoo!ニュースのコメント(矢萩邦彦さん) 2024/12/26(木)

体験格差や教育格差は安易に使われる用語。高校大学無償化や交通費受験料支援などの被災者支援は、体験格差とは別(一部略)
出典:Yahoo!ニュースのコメント(末冨 芳) 2024/12/26(木)

エキスパートの補足・見解

ひとり親家庭の報道は何のために存在するのか、常見洋平さんの指摘にはっとしました。

また、以下の常見さんのコメントも大切です。

「ひとり親家庭の支援が、『金』に関する話に終始しがちなのもまた問題である。たとえ、共稼ぎ世帯よりも稼いでいたとしても、『時間』や『心理的余裕』もまた問題である。もっともこれらは、『金』よりも可視化も計量化もしにくい問題である」

論点を明確にできない報道は、解決すべき課題を明確にできず、貧困のスティグマ化が進みます。

子どもの貧困をなんとかしたい。

被災地の子どもたちを応援したい。

熱い思いのジャーリストほど以下のことを大切にいただければと思います。

・論点を詰め込みすぎていないか?

・貧困・体験格差・教育格差というバズワードを安易に使わず、「どこの」「誰の」「どんな課題」を報道したいのか?

・貧困はかわいそう、というレッテル貼り(スティグマ化)をしていないか?

・貧困や格差問題は社会全体で解決すべき子どもの権利侵害問題との視点はあるか?

・論点整理に困ったら、研究者の助言を仰ぐ

こども家庭庁委員をつとめる私も、より良い報道、そして子どもの貧困や様々な格差の改善のための報道に協力します。

日本大学教授・こども家庭庁こども家庭審議会部会委員

末冨 芳(すえとみ かおり)、専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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