コロナに負けずに新しい文化を創る、Zoom演劇に学ぶリモート創作の可能性
今週は多くの方が、ステイホーム週間真っ只中だと思いますが、そんな中「Zoom演劇」という新しい演劇のスタイルが注目を集め始めているのをご存じでしょうか。
Zoom演劇とは、文字通りビデオ会議システムのZoomを利用した演劇のこと。
飲食店や小売店同様、演劇も新型コロナウイルス感染拡大により、公演が自粛に追い込まれています。
そんな中、一部の劇団員の方々が、自宅でもZoomを活用して演技ができることに注目。
ツイッター等で、その作品が話題になることにより、Zoom演劇に挑戦する人が徐々に増え始めているのです。
1ヶ月で大きな拡がりを見せているZoom演劇
Zoom演劇というキーワードが注目されるようになった最初のきっかけは、株式会社チョコレイトが実施した4月2日の公開ワークショップ型オーディションにさかのぼるようです。
時系列でZoom演劇関連の主な出来事を羅列してみます。
■4月2日 株式会社チョコレイトの公開ワークショップ型オーディションが開催。このワークショップで作られた「やばい奴」という動画がツイッターで話題に
■4月7日 株式会社チョコレイトがZoom演劇のための劇団として劇団テレワークの旗揚げ、そのお披露目の0回公演として「Zoom婚活パーティーを配信。
参考:“すべてテレワーク”で企画から稽古、公演まで行う「劇団テレワーク」が旗揚げ
■4月9日 劇団テレワークの旗揚げ公演に刺激を受けた、広屋佑規氏が中心となり、フルリモート劇団「劇団ノーミーツ」が旗揚げ
1作目のzoom飲み会中の怪奇現象で早速話題に
その後も劇団ノーミーツは、ツイッター上にZoom演劇を生み出し続ける
■4月17日〜19日 北川大輔氏が中心に「未開の議場」を無料カンパ方式で配信
■4月19日 劇団テレワークが、後払いチケット方式で、第1回公演を開催
参考:劇団テレワーク 第1回本公演「最高のテレワークマナー」
■4月26日 A・ロックマン氏が中心に生演劇「Zoom劇場 オンラインノミ」を公開。200人の観客を集め、連休中の追加公演が決定
■4月26日 劇団ノーミーツの「ダルい上司の打ち合わせ回避する方法考えた。」が大きな話題に。
(この記事執筆時点で再生回数は950万を突破)
参考:いま「Zoom演劇」が面白い 打ち合せから本番まで全部リモートで活動する「劇団ノーミーツ」に注目集まる
まだZoom演劇というキーワードが注目されて1ヶ月ほどですが、他にも、すでに様々なZoom演劇がツイッター上に上がりはじめているようです。
こうしたZoom活用の動きは演劇のみに限りません。
5月6日には、三谷幸喜氏のコメディ「12人の優しい日本人」をZoomでオンラインで読む生配信という企画も動いています。
また、Zoomの画面を活用して作品を作っているという意味では、5月1日に公開された「カメラを止めるな!リモート大作戦」も、ある意味Zoom演劇の1つということが言えるかもしれません。
Zoom演劇は新しい芸能文化を創るか
ここで個人的に注目したいのは、Zoom演劇の新しい芸能文化のカテゴリとしての可能性です。
カメラを止めるな!リモート大作戦は、映画「カメラを止めるな!」のメンバーからの、ミニシアターへの恩返しとして撮影されたものでした。
参考:カメ止め「リモート大作戦!」から考える、不要不急の産業が今できること
当然、今回のウイルス感染拡大で未曾有の危機に直面しているのは、ミニシアターだけではありません。
演劇という芸能文化や、劇団員という職業もまた、未曾有の危機に直面しています。
そんな現状の中での「Zoom演劇」は、これからのコロナ感染後の時代に向けての新しい芸能文化の息吹と考えるべきではないでしょうか。
新しい芸能文化と言うと、かなり大袈裟に聞こえてしまうかもしれませんが、実際には現在日本の伝統芸能と呼ばれている能や歌舞伎、狂言なども、様々な時代背景の中で生み出され、長い年月をかけて伝統芸能として定着したものです。
そもそも、今ウイルス感染拡大により撮影が中止に追い込まれているテレビドラマや、ひな壇などの収録形式を大幅に変えているバラエティ番組も、テレビという技術の枠組みに最適化されて創られた新しい芸能文化でした。
Zoom演劇も、コロナウイルスがもたらした、現在における1つの芸能文化の種と捉えて良いはずです。
そういう意味で、Zoom演劇で特に注目したい点は、Zoom演劇を模索する多くの劇団が、単純にオンライン上でバズる動画を模索するだけではなく、劇団員の方々の収益の確保を模索されている点です。
「オンラインノミ」は500円でチケットを販売していますし、「未開の議場」や劇団テレワークは、無料カンパや後払いチケット方式を採用。
劇団ノーミーツは、現在はツイッターに140秒のZoom演劇を無料であげる活動が中心なものの、YouTubeライブにもシフトし、将来の収益化を模索しているようです。
Zoom演劇を数多あるYouTube上やツイッター上の無料コンテンツの1つと捉えるのではなく、新しい芸能文化の息吹と捉えると、私たちは有料でチケットを購入したり、視聴後に後払いをすることで、新しい芸能文化の誕生に立ち会っているだけでなく、その過程に貢献できることになります。
新型コロナウイルスは、私たちから身体的な接触や交流の自由を奪ってしまいました。
でも、ウイルスは、デジタル上の私たちの創作の自由までは奪えません。
日本においても、緊急事態宣言の延長は確実視される昨今ですが、私たちにもきっとまだまだできることがあるはず。
Zoom演劇から、そんな勇気をもらうことができると思います。