山形新幹線、今日から直通運転再開。東北新幹線は4月20日をめどに。
・不通区間は福島駅・仙台駅の間だけに
3月16日に東北地方で発生した地震の影響で、福島駅構内や新幹線の高架橋などで損傷が発生したため、東北新幹線の郡山駅から一関駅の間で運転見合わせが続いてきた。
東北新幹線の一部区間の復旧作業が終わり、安全確保ができたことで、JR東日本は今日(4月2日)から、東北新幹線の郡山駅と福島駅の運転再開と、東京駅から福島駅を経由して新庄駅・山形駅への山形新幹線の直通運転の再開を行う。次いで、4月4日からは仙台駅と一関駅の間も運転の再開を行う。これにより、仙台駅から新青森駅および新函館北斗駅間の運転が再開となり、仙台駅から秋田駅までの秋田新幹線の運行も再開となる。
残った福島駅と仙台駅の間の復旧は、4月20日頃と予定されている。
・在来線の臨時快速に乗車してみたが
筆者は3月29日に米沢駅から東京駅まで利用する必要があり、山形新幹線、臨時快速、東北新幹線と乗り継いだ。
例年にない豪雪だった山形県も、雪が消え、これから春の観光シーズンを向かえる時期だが、山形新幹線「つばさ」の東京駅との直通運転ができなくなり、さらに減便となっていた。米沢周辺の旅館業や自治体の関係者からは、「4月2日から直通運転が再開されると聞いて、ホッとしている」という声が聞かれた。
米沢駅から乗車した「つばさ」は、福島駅では通常とは異なる在来線ホームに到着した。通常運転時では、「つばさ」は新幹線ホームに入るため、珍しい光景を撮影しようとする鉄道ファンの姿があった。
不通区間をつなぐ臨時快速電車は、E653系特急電車が充当されていた。かつては「フレッシュひたち」として、現在は羽越本線の特急「いなほ」として運転されている車両で、そのうち一編成は旧国鉄の特急色に塗装変更されている。それだけの多くの鉄道ファンがホームや沿線でカメラを構える姿が目立った。
今回は、快速電車として運転されるため、特急料金や指定席料金は不要で、グリーン車も料金不要で開放された。しかし、仙台駅から福島駅に到着した段階で、ほぼ満席の状態で、着席できない乗客も多かった。
4月2日以降も福島駅と仙台駅の間には、この快速電車が運行されるが、新年度を迎え、多くの人が移動する時期となる。混雑することを前提に利用した方が良いだろう。
・乗り換え改札は混雑
臨時快速電車が郡山駅に到着すると、ほとんどの乗客は新幹線改札口に向かった。しかし、乗り換える新幹線の特急券を持っている乗客が少なく、新幹線乗り換え口の特急券販売窓口は長い列が出来た。乗り換え時間が10分間と短かったために、乗り切れなかった乗客も出ていた。
4月2日以降も、福島駅と仙台駅の間では在来線の臨時快速電車を利用する必要があり、福島駅での乗り換え時には、乗り換え口での混雑が起きることが予想される。福島駅での臨時快速電車から東北新幹線への乗り換え時間が短いため、できるだけ事前に福島駅からの新幹線特急券を用意しておく方が良いだろう。
福島駅から東京駅の間では、山形新幹線も利用できるが、本数が大幅に少なく、自由席がないため、福島駅に到着した段階で満席である可能性もある。
・情報発信に課題も
3月16日に東北地方で発生した地震は、福島駅周辺で大きな被害を出し、復旧までに時間がかかっている。安全確保のためには致し方ないことであるし、昼夜兼行の復旧工事や素早い臨時ダイヤの設定などがJR東日本によって実施され、高く評価する声を多く聞いた。
一方で、臨時ダイヤに関する情報を入手することが難しいという意見も多く耳にした。筆者も米沢駅を往復する必要があったのだが、臨時ダイヤを入手するのに手こずった。山形県内の宿泊施設経営者も、「お客様から山形新幹線の運転状況を尋ねる電話がかかってきたが、ネットで調べてもなかなか見つけられなかった」と言う。別の会社員は、「どうしても出張する必要があり、臨時ダイヤを調べたが、運行を休止する列車の一覧とかが先に出てくるし、必要な情報がどこにあるのか、高齢者やネット利用に慣れていない人たちには不親切だったのでは」と言う。
混乱する駅などで対応する職員の負担軽減のためにも、臨機応変で判りやすい情報提供は重要である。近年、ICTを活用して交通手段の情報を提供するというMaaS(Mobility as a Service)を鉄道各社が取り組んでいる。観光などでの利用にばかりに注目が集まっているが、今回のような非常時にこそ、情報の提供手段として活用できるはずだ。
・本格的な観光シーズンを前に
JR東日本は、福島駅から仙台間含めた全線での運転再開は4月20日前後だと発表している。東北地方に本格的な春が訪れる5月のゴールデンウィークには間に合いそうだと、観光関係者や自治体関係者は期待している。
山形新幹線の運転再開は、当面、通常の5割から7割程度の本数であり、通常ダイヤに戻る時期は未定とされている。しかし、JR東日本の被害からの復旧工事の素早さなどを評価する声が多い。「県内の観光産業はもちろん、それに関連する食品産業や農業など広範囲にコロナ禍の影響が出ている。コロナの感染状況が気になるが、山形新幹線の東京直通運転再開にはホッとした」と、山形県内の自治体職員は話す。
ただ、山形新幹線では3月のダイヤ改正で全席指定席となり、自由席が全廃された。さらに4月1日から、JR東日本は山形新幹線を含む特急列車の指定席料金についてゴールデンウィークや年末年始など、特に利用者の多い時期を新たに「最繁忙期」と設定した。そのため、山形新幹線も、4月1日から指定席料金が値上がりした。
加えて、値上げ時期の最終発表は行われていないものの、JR東日本はグリーン席料金の値上げを予定している。
2014年に山形新幹線にデビューした車内に足湯を設置したリゾート列車である「とれいゆつばさ」も2022年3月に廃止された。「話題性もあった列車だったし。いろいろタイミングが悪いですねえ」と旅館経営者の一人は言う。
こうした状況の中、宮城県、山形県、福島県と東日本旅客鉄道株式会社仙台支社では、2022年4月1日から6月30日にかけて、「巡るたび、出会う旅。東北 宮城・山形・福島」 春の観光キャンペーンを開催する。
山形県や東北地方の観光業界や行政関係者は、長期化するコロナ禍の影響が重くのしかかる中で、本格的な観光シーズンを前に、山形新幹線、東北新幹線の通常ダイヤへの早期復旧に期待している。
※臨時ダイヤ(JR東日本のホームページ)
≫4月2日以降の東北・山形新幹線(東京~福島間・東京~山形・新庄間直通) 時刻表(PDF)